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モバイルウォレット(Pay)は壮大な代理戦争
旧ヤフージャパン、Z Holdingsの決算が出て、気になったのがFintechの将来売上成長があんまないこと。これを見て、改めてPayPayはヤフーのEC戦略のための礎、という解釈をした。
Zの決算、長期的な売上収益構成イメージ見ると、Fintechが全然伸びていない絵になってる。やっぱり主軸はECで、PayPay→EC→EC広告、っていう方針なんじゃないかな。楽天から奪うビジネスモデル。https://t.co/GVCsUjW79Y pic.twitter.com/OBZqBtxMWe
— 8maki (@8maki) November 4, 2019
そう考えると、今のモバイルウォレット(Pay、QRコード決済)は色々な◯◯のための礎、という戦略が非常に多い。おそらく皆決済単体で事業化できるとは思っておらず、将来の◯◯で稼ぐ、という戦略を取っている。その◯◯が各社違っていて、というか本業が違うプレーヤーが同時にモバイルウォレットに参入してきているため、だいぶ多様な◯◯になっている。ただ、日本で兆単位で稼げる市場は限られており、その◯◯もいくつかに絞られている。その本命がEC、データのマーケ活用なわけだが、まずモバイルウォレットに参入しているプレーヤーが、どこで戦っていて、どこで勝とうとしているか?を分析したい。
これを見ると、ECや通信キャリアを中心にバトっているのが分かると思う。最後に、データのマネタイズにも軽く触れる。※本当は金融(銀行・証券・保険)領域も触れようと思ったんだけど、今のところ規模の大きなところは出てきていないので今回は省いた。ちなみに国内市場だけだよ。
EC
モバイルウォレットの裏の主戦場、というか実は表の主戦場、はECだと思っている。なぜならアリペイはECを制してモバイルウォレットを制したからだ。現状、国内ECトップは楽天、次いでAmazonとなっており、ヤフーは本気でここの1位を狙っている。ZOZOも買ったし。
» 日経電子版:ZOZO買収 ヤフー、反攻へ重圧「1位しか許されない」
また、10/7にPayPayフリマを始めたとおり、フリマアプリも含めた全方位で勝ちに来ている。モバイルウォレットは、ECへの送客にも相性がよく、冒頭でも書いたように、個人的にはEC覇権のためのPayPay、という位置づけだと解釈している。
気になるのは、鳴り物入りで参入したAmazon Payが、全然広がっていない点。Amazon Primeという強いメディアを持っているから、あんまここらへんで勝負しようと思っていないのか、単純に日本市場にそこまで興味ないのか、はたまたAmazon Go的なものを優先しているのか。
通信キャリア
これは既に、SB+Yモバイル、docomo、auの三つ巴の状況に対して、楽天が格安SIMのフリーテル、DMMモバイルを買収して、本格的に参入している。
» 格安スマホ再編進むか…楽天「DMMモバイル」買収で見えたある数字
モバイルウォレットとの相性で見ると、いまいま直接的には関係ないものの、加盟店開拓の際に加盟店に同時に決済端末を売れる、といったことが考えられる。また、5G時代になれば、決済の様相も様変わりしてるはずで(全ての飲食店の机に通信モジュールが付いてテーブル会計、とか)、将来的に通信キャリアとの相性は非常に良いと感じる。OMO(Online Merges with Offline)コンテキストでも5Gは抑えておきたい。
ポイントカード/電子マネー
モバイルウォレットは、実は大手リテール(小売)とのバッティングもしつつある。実際、EC比率を上げることは実店舗比率を下げることに他ならず、決済やポイントカードという媒体を通じて戦いがはじまっているように思う。既に、nanaco、waonはそれぞれ2兆円を超える流通金額で、QRコード決済は合計しても今年はまだ1兆円に至っていないと思われ、まだまだ規模に差がある。かつ、共通ポイント勢も、それぞれ5,000万人を超える会員規模を持っている。ここには載せていないが、ファミペイも始まり、悪くない滑り出しのようだ。
ほぼ店頭チャージしかできないのに皆ファミペイ使ってるのか。店頭チャージのハードルは思ったより低いのかも。
— 8maki (@8maki) October 9, 2019
"【1位】ファミペイ(33%)【2位】PayPay(30%)【3位】d払い(14%)"
ファミペイは自店舗で「PayPay超え、シェア1位」の好調。ファミマ上期決算は減収増益 https://t.co/vL9bQ8wgJl
カード(クレジット・プリペイド)
実は、国際ブランドのクレジットカード、プリペイドカードも各社リリースしている。この中で突出しているのは、楽天カード(マン)で、年間の取扱高は10兆円に迫っている(足元8兆円)。いち決済商品としては、日本一のはずだ。会員数も1,700万人(2019年3月)を突破している。
セゾンの資料によると、既に国内第4位のカード会社となっている。
他社の規模感はこんな感じ。YJカード633万人(2019年5月時点)。dカード、dカード mini、dカード GOLDの会員数は約2,018万。うち、dカード GOLDの会員数は約562万(2019年7月時点)。au walletクレカ500万枚(2019年10月時点)、プリカだと2100万枚以上(2019年3末時点)。
LINE Payは、年末にVisa LINE Payカードを発行予定。
モバイルウォレットのメイン機能は決済であり、クレカとも相性が良い。そもそもモバイルウォレットはプリペイドなので、チャージ元のカードとして指定すると発行会社としては嬉しく(チャージ手数料かからないから)、ポイントも付けやすい。
中国Pay
要はアリペイ vs. WeChat Payの構図が日本でもある。アリペイはPayPayと提携、WeChat PayはLINE Payと提携している。相互の加盟店を使えるようにしていて、インバウンド顧客がほしい加盟店向けの営業として非常に有用な提携だと感じる。日本のキャッシュレス入れてもうまみがようわからんけど、インバウンドはほしい、という中小加盟店は多いはずだ。
加えて、PayPayは裏の仕組みとして、インドPay代表格のPaytmを採用している。アジア圏のPay競争も無視できない。
データという戦場
加えて、データのマネタイズ、という観点でも各社の戦略の違いが見えてくる。ヤフーは検索ログがユニークだ。検索ログは既にマネタイズができており、次のショッピング広告のために実店舗含めた決済データを貯めている。楽天は逆にショッピング広告でマネタイズしており、統合的なデータ戦略を考えている気がする。docomoは、ユーザーの位置情報データでマネタイズしている。どの地域にどの時間ユーザーがいたか?を数千万人単位でデータを持っているからできることだ。KDDIは子会社のsupershipでアドテクが好調と聞く。LINE・メルカリはこれからだが、それぞれチャットデータやメルカリのレビューデータがユニークで、これらをスコアリングなり与信モデルなりに使って、金融事業でマネタイズしようとしている。
まとめ
この領域の未来を予測するにあたり色々まとめてみたら、思った以上に変数が多かった。QRコード決済部分の優劣だけ見ててもだめで、上記市場の行方いかんによってはひっくり返る可能性もある。引き続き、ここで挙げた全領域をウォッチしていきたい。
本当は、ヤフー×SBが次に買うのは?も予測しようと思ったんだけど、全然思いつかなかったので、メモだけ書いておく。
先月は、LINE(9,891億円:11/1)を買おうとしているという噂も流れた。まずECの覇権を握りにいこうとするのならば、普通にメルカリ(3,870億円:11/1)も買いたいはずだ。LINEとメルカリを買ったら、もうQRコード決済の行く末はほぼ決まると思う。加えて、実店舗も交えたOMO戦略を取るとしたら、POSベンダも欲しくなるのではないか?中小はPayPayでとって次大手というときに、POSベンダを持っているとデータ連携、店頭でのマーケがやりやすい。特にアパレルのPOSを握れたら、ZOZO含めてかなり強い。オービック(1.35兆円:11/1)とか。こういうの→ファッション業向け統合システム。とは言え、ほしいのは小売りのPOSで、SI機能はいらないから、買わないと思うけど。
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とにかく世界で同時多発的に動きがあるので、もうスピード上げてインプットして分析していくしかない。その中でカンム(筆者経営の会社:バンドルカードというVisaプリペイドカードアプリを発行。150万インストール突破)はどう戦っていくのか、不安でもあるが、大変おもしろくもある。このウォレット競争に巻き込まれても疲弊するし、そこを目指しても発明がないと「使ってる人は使ってるよね」を突破できないとも思っているので、ある領域にフォーカスして発明を行い、発明をつなげて結果的に強いプラットフォームを構築するつもりだ。
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