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ニッポン最高ー!

「日本に生まれてよかった〜!」
お決まりの文句だ。

みなさんは日本に生まれてよかったと思うのはどんな時ですか。
お茶漬けを食べたとき。
路上で酔いつぶれて寝てたのに何事もなく目を覚ましたとき。
水道水をガブガブ飲んだとき。
海外に行ってはじめてそう思った人もいるかもしれない。
まあ、様々な「日本に生まれてよかった」の瞬間があると思う。

僕は毎年、この季節になると、一年でもっとも強く「日本に生まれてよかった」を実感する。
M-1グランプリの決勝が行われるこの季節に。

漫才というのは日本独自の文化だと聞いたことがある。
マイク一本、板の上で世界を作っていくこの文化が大好きだ。

祖父が生きていたころ、僕をよく落語へ連れて行ってくれた。
座布団、羽織、手ぬぐい、扇子、マイク。これで世界を作っていくその姿に僕はとても感動したし、たくさん笑わせてもらった。
世界の作り方は通ずるところがあると思うけれど、4分で世界を作って笑いをつくることができるのは、漫才ならではという気がする。
4分間の日本語の掛け合い。その無限の可能性を感じられるとき、僕は日本に生まれてよかったと思うし、生きていてよかったと毎年思う。

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というところまでを、今年のM-1を見るまでに書いた。

そしたら何ということだ。
まさかのマヂカルラブリー優勝。
最終決戦のネタなんて、野田クリスタルはほとんど喋っていない。
こんなん日本語についての記憶を一切失ったとしても笑うと思う。
言葉とか関係ねー。
最高。
腹爆発して小腸吹き出るかと思った。

5081組が狙った頂上まで、残り3人になったあの舞台で。
優勝すれば1,000万円のあの舞台で。
15年以上の歴史が続くあの舞台で。
優勝すればお笑いの歴史に名が刻まれるあの舞台で。
視聴率20%近いあの舞台で。
漫才の殿堂であるあの舞台で。
死にたいくらいに憧れたあの大舞台で。

一体どれだけの根性が座っていれば、床を這いずり回り、顔に小便をかけることができるだろうか。
端的に、狂っている。
自分の信じる「面白い漫才」に狂っている。
その狂った様は、何よりも格好良いと思う。

とはいえ、まあ僕もマヂラブが優勝するとは思っていなかった。
決勝のメンツが発表された時、
「マヂラブが優勝したら腹抱えて笑うけど、まあないだろうなー」
くらいに思っていた。
実際、3連単予想の9位だ。そりゃそうだ。
そりゃそうだったからこそ、めちゃくちゃに格好良い。

あと今になって気づいたのだけれど、王者マヂカルラブリーの野田クリスタルは、ただの一度も客に対して「お願いします」を言っていない。
尖り散らかしている。それもめちゃくちゃ格好良い。

野田クリスタルが着実に『お笑い王』に近づきつつあるのも格好良い。来年のキングオブコントで、お笑いの歴史が動くかもしれない。
いや、マヂカルラブリーのM-1優勝を境に、もう動き始めているのかもしれない。

「王者にふさわしくない」「あれは漫才ではない」みたいな意見もあるけれど、お笑い王が漫才だと言っているのだから漫才だ。
というかそもそも、M-1グランプリの審査基準は “とにかくおもしろい漫才” だ。
1回戦(は出てないけど、シード権をあげるということは通過の資格があると判断されたということだろう)、2回戦、準々決勝、準決勝、決勝1st Round、最終決戦。
6回もその審査基準をクリアしているのだから、あれはもう完全に“とにかくおもしろい漫才”だ。
ひとつのものごとを6回も審査したこともないし、当然、6回も審査を通って勝ち進んだこともない人生だったけれど、それくらいはわかる。
とんでもないことだ。
間違いなく「漫才王」だと思う。

思えば今年は、激動する時代の波に飲まれ続けていたような一年だった。
その激動の波に抗って立ち続けた男が、荒れ狂った世界の中で立ち続けようとするネタで優勝したのは、偶然ではないような気がする。
来年のマヂカルラブリーに大きな期待を寄せたいと思う。
お笑い王の誕生が楽しみだ。
(とはいえYoutubeのコメント欄にあった「平場がクソヒョロガリ」という意見はめちゃくちゃ笑ったので、お笑い王にもなってほしいけど、このまま歴代チャンピオンで一番変な人たちでいてほしい気持ちもある)

個人的にはM-1優勝からの『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0』が始まってくれるのが一番楽しみだ。
別に日本に生まれてなくても漫才は楽しいことがわかってしまったので、前言を撤回して、「日本に生まれてよかった~!」と思うのは、「深夜ラジオを聞いてるとき」にしたいと思う。

日本に生まれて不健全に育ってよかった~。

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