振動数の異なる逆向きの進行波の重ねあわせの考察

2019年度入試・同志社大・全学部日程理系・物理の問題[II]の(オ)の解答が,各予備校の解答速報で割れているという話題をSNS上で見かけたのをきっかけに,逆向きに進む振動数がわずかに異なる音波の進行波の重ねあわせについて考察してみました.

動画へのリンクはこちらから.紫が各地点の振幅(音の大きさに対応)を表し,橙が合成波の変位そのものを表します.
※ '19.07.16にファイルを更新しました.

さて,同志社大の入試問題は逆向きに伝わる振動数fと1.02fの音波の重ねあわせにおいて以下のように書いています.

このとき,ある時刻におけるうなりの音の大きさ(合成波の振幅)はx軸上で周期的に変化し,うなりの音の大きさが極大となる点が間隔(オ)ごとに現れる.

この(オ)に入るのは,もちろん「振幅最大の位置どうしの最小間隔」であり,「合成波の変位が最大の位置どうしの最小間隔」と読むことは出来ません.ところが,2019.07.14時点では,駿台が前者の正しい解答を速報ページに掲載しており,河合塾と代ゼミが後者を求めた誤った解答を掲載しているようです.

なお,2019年第1回全国模試第2問(6)においても,同様の問題が出題されており,同様の設定下で,

マイクMで大きな音が観測されている瞬間に,x軸上の別の位置でも音が同じく大きくなっている.その位置とマイクMの距離の最小値を求めよ.

という設問の解答に,「合成波の変位が最大の位置どうしの最小間隔」を採用しています.これは誤りですので,関係者は訂正を出すこと,受験生は自分の誤りを修正しておくことを勧めておきます(解答速報の作成者からの疑義は提出されなかったのでしょうか?).

「音の大きさ」とは「合成波の振幅」ではなく「合成波の変位」のことだ,という(的外れな)反論も予想されますが,啓林館の教科書『物理』には,

音の大きさの違いは,振動数が同じならば,主に音波の振幅の違いによる.振幅が大きい音は圧力変化(密度変化)も大きく,大きな音に聞こえる.

とあり,数研出版の教科書『物理基礎』には,

同じ振動数の音が聞こえているとき,振幅が大きくなるほど音は大きくなる.

とありますことを付け加えておきます.

最後に,以上の考察は,先輩物理講師・吉田弘幸先生のTwitter上での発言に触発されて行ったものです.謝意を表明させていただきます.恥ずかしながら,自分もここまで「振幅最大の位置どうしの最小間隔」と「合成波の変位が最大の位置どうしの最小間隔」を正しく峻別できていなかったことを告白し,むすびとします.お読みくださってありがとうございました.

記事に賛同してくださる方,なんらかの学びが得られたと感じてくださった方は,経済的に余裕のある範囲で投げ銭をいただければ幸いです.