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女性アスリートと顔の怪我〜必要なのは《リスペクト》と《サポート》だ〜

(この投稿は、ラグビートップリーグ2021開幕前に投稿した『ラグビーとジェンダー』シリーズを加筆訂正したものです。)

1.競技風景と顔のあざ

これは偶然だったのか

Twitterを流し読みしていたら、おそらく女子ラグビー選手の方が、競技中の風景と、顔の傷を負った時の写真を同時に投稿されていた。

私達は一生懸命このスポーツに打ち込んでいる。

という趣旨のコメントと共に、その気持ちがなぜ社会に理解されないか、というお気持ちも添えられていたように思う。

後で読み返そうと思ったが、なぜかたどりつけなかった。

2.女は顔、の呪縛

女性とはいえ、スポーツにある程度打ち込めば、レベル関係なく何らかの怪我をする。

それが身体接触を伴うスポーツなら尚更だ。

柔道、空手、レスリング等の格闘技系、ラグビー、ホッケー、ラクロス、バスケットボール等の集団球技系という違いはあるが。

怪我する箇所はいくらでもある。ひざや足首、鎖骨や腕。しかし、女性にとって一番難しい怪我、それは

顔面の怪我

だ。鼻が折れる、眼窩骨折、歯を折る、頬骨が陥没する、どれも見た目を大きく変える。

女は顔、男は金

学生時代も、社会人時代も、こういって憚らない人はいくらでもいた。彼女が美人か、という事は今も昔も男性の一大関心事だろう。

女性はある時期、それも人生のかなり早い時期から

自分は美人か否か

を気にするようになる。それ故に、過剰なダイエットや整形手術も、専ら女性の問題とされることが多い。

親御さんも周囲の大人も、娘が生まれると

大事な娘の顔に傷をつけたくない

という気持ちを持つのが自然だ。

こういう背景があると、顔に傷をつけやすいスポーツはどうしても敬遠されがちになる。最初は歓迎しても、目の下の青あざを見た瞬間

もうやめなさい!

という親御さんも多いだろう。

3.傷が勲章に変わる時


オリンピックの時、それはいつのオリンピックだったか、伊調馨選手の目は若干腫れていた。しかし、それは激闘の末の勲章であって、それを指摘する人はいなかった。

レスリングをするならアスリートの顔に当然そういうこともあるだろう

位の認識だ。

私達は伊調選手を、女性であると同時に、

アスリート

として認識している。だから気にならない。それ程女子レスリングは、現在スポーツとして認知されている証拠なのだと思う。

冒頭に触れた女子ラグビーの選手の悲痛な訴えは、

女子ラグビーをスポーツとして、選手を女性である前にアスリートとして、社会に認めて欲しい

という叫びではないのか。

開会まで1ヶ月を切った東京オリンピック、それに続くパラリンピックにも、女性競技は多数存在する。これを機に、

私達は、マイナースポーツに真摯に打ち込む女性アスリートにも理解と尊敬の念を深めたい。

競技の枠を超えて、互いのスポーツの存在を社会に知ってもらう活動も必要だろう。

吉田沙保里さんや柔道の谷亮子さん辺りが、女子ラグビー観戦記等を書いてくれないだろうか。テレビのスポーツ番組で座談会をしてもいい。

女子柔道もレスリングも昔はマイナー競技だった。選手達の努力の蓄積で今日がある。しかし、女子競技が飛躍的に増えた現在、やはり、競技を超えての広報活動が共存共栄につながるのではないか。

4.怪我をしても心配ないよ、というために

もう一点、大事なことがある。

治療のサポートだ。

顔面の怪我が、女性にとっていまだ差別の対象になる以上、その傷の治療、その後のケアについて、選手をサポートしてあげる仕組みが欲しい。

整形外科、美容外科、美容皮膚科、口腔外科、等のお医者さん

傷跡を目立たなくする化粧品を販売するメーカー、化粧方法をアドバイスするメイクアップアーチストの方

こういう職種の方々のサポートがあれば、安心して競技に打ち込めるだろう。

あのTwitter記事を掲載された方、名前もよくチェックせずに申し訳ありません。

貴方の競技に打ち込んでいるお写真、そのお顔はとても美しかった、そう思っています。


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