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作家・橋本治氏の【ビデオの話】

映画たちよ!』(1990年/河出書房新社)収録。1987年『週刊宝石』初出。

《ビデオっていうのは、もうほとんど“本”なんだと思う。なんだか知らないけどそんな気がする。~~ともかく今は“今”という時間があんまり意味をなさなくなって、時間というものが氾濫しちゃってる時代だからしようがないんだろうな。~~ビデオ雑誌っていうのもあるんだろうけど、なんか見る気がしない。結局、日本だとビジュアルのものには“系統”っていうものが立ってないから、もう各自がテンデンバラバラの好き勝手という、そういうことになるんでしょうね。こうもまァ商品が氾濫してるにもかかわらず、信頼出来るガイドっていうものがない文化ジャンルっていうのは珍しいなァ。~~ビデオガイドだと、大体百人ぐらいの人間がなんだかんだ出て来て「これがオススメ」ってことをやってるんだけど、分かるのは「ああ、結局この人はこういう人なのか」っていう、それだけね。 []なんか「オモシロイ」っていうものが、ほとんどファッション雑誌の“定番”みたいになっちゃってるのはどういうんだろ?今時の若い子にこんなもんばっかり“必見”ですすめたって、今更年寄りのマニアになるだけだけどなァ、とか思うのが臆面もなくあったりして。そうかと思うと、こういうラインナップですすめてるんだったら、やっぱりこれは古典として入れとくべきなんじゃないのって思うようなのが突然“流行遅れ”っていう扱いで欠けてたりね。やっぱりビデオっていうのはファッションなのかなァ? 俺は“本”なんだと思うんだけどなァ。ビデオ絶対に新しいジャンルの文庫ですよ。だから解説っていうのをキチンと書いてほしいなっていう気がする。~~映画見た後で友達と話したいっていう時にさ、ホントにバカな友達しかつかまんないっていうのは、もう映画好きの人間にとっては地獄の苦しみのようなもんだと思うんだ。やっぱり、生き字引みたいな人の流暢な解説っていうのは、今みたいな時代にホントいいもんなんだと思うんだけどな。》

※引用文の中の「~」は省略の意味です


https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/e1008815184
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