彼は、 果てしない欲望と、 身に覚えのない憎しみで 満たされていた。 彼にとって、 欲望や憎しみと一緒に生きることは 苦しかった。 では、 痛みと引き換えに、 彼は何を手に入れたのか。 彼は、 苦痛と引き換えに、 この惑星に生きることを許されたのだ。
ゴットリープは怨念と欲望の塊である。 滅んだバイオニクル達の憎しみと、 バイオニクル本来のもつ戦争への欲望が、 彼を生み出した。 しかし、憎むべき敵や、戦争する相手すら、 原始の惑星には十分に存在しなかった。 彼は強い孤独を感じ、 この世に絶望し、 そして自分の存在を不思議に思った。 彼も、自分自身の存在理由を知らなかったのだ。
原始の森は、一見すると穏やかだ。 しかし、稀に巨大な影を目にすることができる。 それこそがヒロノムスである。 彼は深い森をゆっくりと動く。 その注意深い動作は、 まるで何かから森を守っているようだ。 彼もまた、バイオニクルという種の潜在的な欲求に突き動かされているのだろうか。 いや、彼にあるのは｢森を守りたい｣という願いだろう。
オストロムは空を飛び、何かを探していた。 何を探しているのか、彼自身も知らなかった。 彼は、途方もない時間の中で再誕したバイオニクルの一種である。 彼には強靭な牙や爪もなく、飛び回ることしかしない。そんな彼が、一体何を求めるのだろうか。 彼をつき動かすのは、恐らく、バイオニクルという種族が潜在的に持つ欲求だろう。
