🅿️16。🅿︎17〜🅿︎34・🅿︎47参照。
裏プロフィールを主軸に、公式プロフィールを補助として創作してます。

早坂相を招いた白木徹は「第三代センター決定の御祝儀」と聞いて呆れてしまいます。

「君は相変わらずマイペースだね。御祝儀とは言っても、半年程前に依頼した物がやっと今届いたと思うのだが、私の記憶違いだろうか」

皮肉タップリに問い掛けますが、早坂は顔色一つ変える事なく続けます。

「クレームでしたら、お宅の総帥（ダルマ氏）に言ってください。Ｖドルの為にアルバムを纏めるだけでなく、遥か『亜米利加』まで飛ばされては、納品どころじゃないでしょう」

“ダルマ氏”の気まぐれには歯痒い思いを抱いている白木ですから、一定の理解はしますが、

「君の事だから『アチラ』の音楽シーンを満喫して来たのかと思ったよ」
と不満をこぼします。

それに対し、
「彼の国で学ぶ事など無いですよ。或る曲がヒットすると、似たり寄ったりの調べが氾濫して退屈です。今ではJ-POPやJ-ROCKの方が個性的で刺激が有りますね…。そういう I-１clubはどうなんですか？最近では他のアイドル・ユニットとの個性の違いが分かり難いですよね」
負けず劣らず応酬します。

「ほう、痛い所を突いて来るね。それなら話しが早い」
驚きの表情を見せた白木ですが、
「実はその恒常化した状態に一石を投じようと、この８月にライブ・イベントを計画しているが、そのステージに必要な一曲をお願いしたいのだがね」

身体を崩して椅子に座っていた早坂は、何事かと姿勢を正します。
「イベントねぇ。新曲を次々に投入しても、グループ・アイドルのイメージを払拭出来るとは思えませんが・・・。いったい何を考えているのですか？」

白木徹の口からイベントの内容を詳しく聴いた早坂相は、驚きと共にクリエーター（創作者）としての興味が刺激され、快く承諾します。

「それにしても白木さん。随分と彼女を挑発するのですね…。性格をよく心得ているとは言え、意地悪も度を越すと『噛み付かれ』ますよ」
冗談とも本気とも言える言葉を投げ掛けますが、

「何度も抗議を受けているよ。なぁに、このイメージの世界（アイドル界）では、刺激と話題性が何より重要だと理解をしている彼女だから、嫌でも応じてくれるさ」

歪んだ信頼も有ったものだと呆れた早坂は、それ以上触れる事をやめ、新曲の納品期日を確認すると、その場を後にします。

…さて、どのような歌に仕上げようか…

と、鼻歌混じりのメロディを口ずさみながらタクシー乗り場まで辿り着くと、一本の受信履歴に気付きました。
差出人は丹下順子です。

…おやおやＷＵＧも新曲の催促か・・・。I-１とのバランスをどうするかだが、二組同時とは厄介だな…

念のためメールを確認すると、そこには彼の創造性を更に刺激する文章が書かれていました。

［ご無沙汰しております。突然ですが、当事務所所属のタレント、林田藍里と久海菜々美の二名が作曲に挑戦中です。つきましては早坂様のご教示を受けたいとの希望なので、宜しくご指導をお願い致します］

…なんだって？・・・！面白い。“お芋ちゃん”が、どんな料理を提供してくれるのか『楽しみ半分』ってとこかな。

上機嫌でタクシーに乗り込もうとすると、自分の名を呼ぶ女性の声がします。
確認すると、息を切らせながらトレーナー姿の鈴木萌歌が駆けて来るのが確認できました。
聞けば、自分が来訪している事を職員が噂していたため、立ち寄り先（白木徹の執務室）の前で待とうと向かったが、ちょうど吉川愛と近藤麻依の二人が部屋に入るところだったので、既に去ったと確信し、ここまで全力で走って来たとの事でした。

…どうしてもお話しがしたいです！…

との迫力のある声だったのでclubに戻り、職員に事情を話すと、担当マネージャーの案内で部屋を用意してもらいました。

飲み物が用意された机を挟み、両手を膝に置いたまま緊張して話を切り出せない彼女に、腕組みをした早坂が先に声を掛けます。

「最近の君達とは疎遠だったが、正式なセンター就任おめでとう」

彼女が就任を辞退した事を知った上での、挑発的な言葉です。

…悔しいです…
「私・・・何もかもが悔しいです！」
訴えた勢いで緊張が解けたのか、その後は一気に言葉を放ちます。

「白木さんには『運が無い』との理由でセンター候補から外されて希望を無くしてたら、今度は“しほっち”、あっ、岩崎志保さんの脱退で『チャンスを与える』なんて…しょうがないからやってみろ…的な扱いを受けて悔しくて、でも本気で頑張ったんですよ…。なのにセンター決定の瞬間が『Ｖドル・マキナＸ』の、お披露目会場（プレゼンター）になると聞かされて『噛ませ犬かよ』と惨めな気持ちでいると、今度は島田真夢、あっ、ＷＵＧの登場で、ファンにはアイドル・フェスとのコラボと誤魔化せて何とか心が折れずに保てたけれど、でも救われたのは確かで…。私の存在って何なんですか？そんなに私って見劣りしてるんですか？『マキナＸ』の方が魅力が有るのですか？早坂さんはアイドルの私をどう見ているのか教えてください！」

涙目で訴えて来る彼女を前に、
…あー『ダルマ親父』の要請に加担したのは私だが、慰めるのは筋違いだよな…。どうする？何処から話しを進めれば目を覚ます・・・にしても、私は部外者なのだが…
暫く駆け引きをするかのように見つめ合いましたが、脚を組んだ姿勢をとると、

「鈴木萌歌…。君は今回センター就任を辞退したそうだね」

「ハイその通りです。ですが、敗北感を背負ってまでセンターに就くのは屈辱です。次こそ実力で勝ち取りたいのです」

「・・・・・鈴木萌歌・・次は無い」

「えっ？」
何を言われたのか理解出来ず、確認のため早坂の目を直視します。

「就任辞退と言う申し出は、世間体としては美談で話題性も有る…。しかし他の芸能界やタレントならいざ知らず、アイドル界としての立場なら失格だよね」

失格という言葉が胸に突き刺さり、全身が痙攣したかのように震え出した鈴木萌歌です。

page 26へ続く。