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【読書記録】2023年8月27日〜9月2日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生の B面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 まだまだ暑い日が続きますが、気がつけば9月。
 空はいよいよ秋らしく、しかし日差しはまだまだ夏っぽく。
 みなさんはどんな時に秋を感じますか?
 私は…
 ・ビールやそれに類する飲み物で「秋」と名のついた商品が店頭に並ぶ。
 ・マックの「月見バーガー」がメニューに並ぶ。
 ・自販機に「HOT」のドリンクが並び始める。
 ・冷やし中華が店頭から姿を消しはじめる。
 …といったところでしょうか(飲み食いばっかじゃん)。

さぁ、気を取り直して今週出会った、再会した本たちをご紹介していきます。 

【2023年8月27日〜9月2日に出会った、再会した本たち】

⚪️ラスプーチンの庭

著者 中山七里

【内容紹介】
 警視庁捜査一課の犬養隼人は、娘の入院仲間だった少年の告別式に参列することに。自宅療養に切り替えた彼の遺体は奇妙な痣だらけだったが、両親は心当たりがないという。さらに翌月、同じような痣のある自殺死体が発見される。検視の結果いずれも事件性なしと判断されたが、納得できない犬養が独自に捜査を進めると、謎の医療団体に行き当たり……。これはカルトか、民間医療か。大人気社会派警察医療ミステリ第6弾!

裏表紙より

【感想】
 犬飼隼人シリーズ第6弾。
 もし根治が難しい難病にかかったら、標準的医療で治療を継続するか、高額の高度最先端医療を試すか、それとも現代医療に見切りをつけて民間療法に頼るか…。
 コレは実に難しい問題です。もし自分だったら、妻や子供だったら、自分の親だったら…。その場になってみないと何とも言えませんが、病気治療と新興宗教が結びつくのだけは許せません。
 とても考えさせられるテーマを内包した物語ですが、冒頭の姉妹のエピソードが物語のどこと繋がってくるのかが気になって、読む手が止まりませんでした。
 犬飼さんのバディとしてメキメキ成長してきた高千穂さんが素敵。

⚪️彼らは世界にはなればなれに立っている

著者 太田愛

【内容紹介】
 「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!

裏表紙より

【感想】
 とても難しい。というか想像力が試される物語でした。なぜならこれまで太田さんが描いてきた〝相棒〟や〝犯罪者〟シリーズのように現代日本が舞台ではなくて、架空のどこかの国の話だから。
 読み始めて一瞬「・・・??」ってなる人も多いかもしれません。
 でもコレは多分過去の、現代の、そして未来の日本。テーマとしては〝天上の葦〟に近いかもしれません。人種差別、マイノリティに対する迫害、性差別、これらはどんなに文化文明が進化、変化しても、多分なくならないでしょう。残念なことに。
 だからといってこのままで言い訳がない。
 だけど自分は何ができるのか、何をしたらいいのかがわからない…。

⚪️ガラパゴス 上・下

著者 相場英雄

【内容紹介】(上巻)
 警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、メモ魔の窓際刑事。同期の木幡祐治に依頼され、身元不明相談室に所蔵されている死者のリストに目を通すうち、自殺とされたナンバー903の男が他殺だったことを看破する。二年前に死体が発見された都内竹の塚団地を訪れた田川と木幡は、室内の浴槽と受け皿のわずかな隙間から『新城も』『780816』と書かれたメモを発見。903の男は、沖縄県宮古島出身の派遣労働者・仲野定文と判明した。仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた…。大ヒット作『震える牛』続編!

裏表紙より

【感想】
 メモ魔再び!
 〝震える牛〟に続く、警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一シリーズの第2弾。
 上下巻を読み終えてため息が一つ。
 エコカー減税の闇と弊害。ハイブリッド車の弱点。日本の労働者のうち3分の1近くが派遣や請け負いといった非正規労働者だという現実。政府は「景気は回復傾向」と言っているけれど、給料は上がらず物価だけが上がっていく昨今、どうしても消費者は「安いモノ」に飛びついてしまい、なぜそんなに安いのかは考えもしません。もちろん私もその一人。
 結局のところ派遣制度もエコカーの奨励も、庶民や地球環境を守るための改革ではなく、企業側を守る改革だったということ。驚くことに、懐かしい「家電エコポイント」も、実はそういう趣旨の政策だったという事実に驚愕!
 相場さんの作品を読んでいていつも思うことだけれど、やっぱり絶大な権力が絡むと、2時間ドラマにあるような勧善懲悪とはいかない。
 父親の「会社は守ってくれんでね」がずっと心にあって悪事に手を染めた鳥居警部補も、銀座のホステスから成り上がった高見沢も、結局のところは捨て駒。
 事件は一応の決着を見ますが、やはりなんだかしっくりこない。
 物語の中で「ギスギスとした人間関係を作り出し、コスト管理ばかりに邁進する今の日本社会」とあるけれど、いったいこんな日本にしたのはだれ?
 やっぱり我々有権者?!

⚪️アンダークラス

著者 相場英雄

【内容紹介】
 秋田県能代市で、老人施設入居者八五歳の死体が近隣の水路から発見された。雪荒ぶ現場、容疑者として事情聴取を受けることになったのは施設で働くベトナム人アインである。外国人技能実習生として来日した彼女は、神戸の縫製工場で働いていたが、劣悪な労働に耐えかね失踪。東北に流れ着いた。アインは重篤なガンを患っていた入居者に請われて、自殺を幇助したとの自供を始める。捜査官らは安堵したが、ひょんなことから捜査に加わった警視庁継続捜査班の田川信一は、死体の「手」に疑いを抱いた。執念の再捜査で浮かび上がったのは、流通業界の覇者として君臨する多国籍IT企業だった。

裏表紙より

【感想】
 今や生活になくてはならないくらい浸透、いや侵食しているネット通販。先日午前中に本を注文したら「本日中にお届けします」の表示が。その後に来た通知の配送時間を見てびっくり!なんと「本日20:00〜0:00にお届け」って。いやいやそんなに急いでないから。
 ここまでくると過剰サービスではないかと。なんだかかえって注文したこっちが申し訳ない気分になってしまいました。
 物語はベトナムから来た外国人技能実習生だった女性が、高齢者施設で余命を宣告された老女の自殺を幇助した罪に問われるところから始まります。この事件に絡んでくるのが熱帯雨林を想像させる大手通販メーカー。
 たぶん世の中便利になりすぎたんだよ。

⚪️ほたるいしマジカルランド

著者 寺地はるな

【内容紹介】
 大阪北部の蛍石市にある「ほたるいしマジカルランド」は、願い事を叶えてくれるという噂のあるメリーゴーラウンドが人気の老舗遊園地だ。ここで働くのはどこか不器用で悩みを抱えた人ばかり。アトラクションやインフォメーションの担当者、清掃スタッフに花や植物の管理。お客様の笑顔のために奮闘する従業員たちの日常が、ふとしたきっかけで動き出し――。毎日がんばるあなたの心をふっと軽くする温かな物語。

裏表紙より

【感想】
 大阪にある規模は小さいけど地域に根差し人気がある遊園地「ほたるいしマジカルランド」が舞台の物語。
 ポイントは「小さい遊園地」というところかな。これが例えば外国資本の超有名大規模テーマパークだったら、サービスは抜群かもしれないけれど、こんなアットホームな感じにはならないだろうと思う。
 やはりお互いの顔が見える程度の距離感が大事なのかなと。
 再読して一番心に沁みたのはやはり國村市子社長が語る遊園地の存在意義。


意味も、価値も、なくたってかまわない。わたしたちは自分の人生に意味や価値を持たせるために生まれてきたわけではないはずだ。
 なんのためにもならないものが、ごくあたりまえに存在する。存在することをゆるされる。だから素敵なんじゃないか。この世界は。

本文より

 今までずっと物事を効率よく進めることばかり考えてきた自分には、いわゆる「余裕」というか「余白」みたいなものが欠落していたのかと。

⚪️その気持ち、なんて言う?
  プロに学ぶ感情の伝え方

NHK「言葉にできない、そんな夜。」制作班

【内容紹介】
 言葉にならない気持ちを言葉にする
 インターネットのさまざまな情報にさらされ、メール、SNS、メッセンジャーアプリでコミュニケーションをはかる私たちは、史上類を見ない言葉の洪水の中にいます。
本書は、Eテレで放送された教養バラエティ番組「言葉にできない、そんな夜。」を書籍化したものです。
 「恋が芽生えた瞬間の気持ち」「懐かしい音楽を聞いた時の気持ち」「同窓会に向かう時の気持ち」など、日常の言葉にできない瞬間を切り取って、小説家、ミュージシャン、俳優、お笑い芸人などの超豪華クリエイターが生み出した絶妙な表現をおさめました。
 表現集として楽しめるほか、言葉のプロの発想法、着眼点を参考に、自分ならどう表現するかを考えながら読むのもおすすめです。
 朝井リョウさん、金原ひとみさん、最果タヒさん、吉澤嘉代子さん、飯間浩明さんにそれぞれの立場から、言葉の楽しみ方、言葉にする技術を紹介して頂いた特別インタビューも必読!

版元ドットコム 書誌情報より

【感想】
 SNSでこの本に出会うまで、NHK・Eテレで「言葉にできない、そんな夜。」なんて素敵な番組があることを知りませんでした!
 慌ててEテレのHPを見たら8月アタマで放送が終了していたという…残念。
 それはさておき、読み終えてまず感じたことは「日本語の豊かさ」。文字だけでも平仮名、カタカナ、漢字やアルファベットなどたくさんの表現方法があって、どれを使うかによって全く印象が変わるということ。
 そして改めて自分はボキャブラリーが貧困なんだと思い知らされました。
 第10章のインタビュー「言葉にする技術」がとても参考になりました。
 そうそう、難しい言葉や漢字はいくら知っていても、使った時に相手に伝わらなければ意味がない。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか。
 先週から引き続き相場英雄さんの作品3冊に加え、中山七里さん、太田愛さん、寺地はるなさんの文庫新刊にも手を伸ばしてみました。
 特に印象に残っているのは太田愛さんの〝彼らは世界にはなればなれに立っている〟。これは童話というかメタファーというか、読んでいてミヒャエル・エンデの〝モモ〟を思い出したり、なんだかいつもと違う部分の脳みそを使った感じがします。
 そしてもう1冊、〝その気持ち、なんていう?〟。この本の元になったNHKの番組「言葉にできない、そんな夜。」。さすがはEテレ。こういう番組を作ってくれるなら、受信料払ってもいいかな。いや、ちゃんと払ってますけど。これ再放送しないかなぁ。

最後に、
 読書っていいよね。


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