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【読書記録】2023年12月24日〜12月30日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 クリスマスもいつも通りやり過ごし、いよいよ年の瀬。
 みなさんは、年末年始はどのように過ごされるでしょうか?
 昔に比べると「家族揃って紅白を観ながら年越しそば」という人は本当に僅かで、今や絶滅危惧種なのではないでしょうか?
 それでも年明けの「箱根駅伝は観る!」という人は結構多いのかな?
 何せ来年の大会は「100回」の記念大会らしいので。

…ということで、今年1月1日に投稿した
「箱根駅伝」がテーマの小説を集めた記事はこちら
(そういえばあのころはこんな駄文も買いてたなぁ)。

↓↓

 軽く宣伝も終わったところで、早速2023年最終週に出会った本たちをご紹介します。

【2023年12月17日〜12月23日に出会った本たち】

⚪️ばくりや

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 あなたの「能力」を、あなたにはない誰かの「能力」と交換いたします――。北の街の路地裏に「ばくりや」という店がひっそりあった。女に異常に好かれる三波は、その力を交換すべく店を訪ねたが……。その他、就職先が必ず潰れる、ささいなことでも泣けるなど、能力を交換した人々の悲喜劇を描く異色の連作短篇集!

裏表紙より

【感想】
 超能力小説は数あれど、この着眼点は面白い!
 他の人にはない特殊能力を他人の能力と交換してくれる店「ばくりや」に訪れる、不思議な能力を持て余した客たちの物語。
 店を訪ねる人たちが持て余している能力とは、手から炎が出るとか、スプーンを曲げられるとかいった類のメジャーな能力ではなく、女性にモテまくる能力、行った先の天気が荒れる能力、就職先が悉く倒産してしまう能力(自治体含む)、豪速球を投げられる能力、ちょっとしたことでも泣いてしまう能力、いつもタイミングを外してしまう能力、そしてキリのいい数字に遭遇してしまう能力。…この能力を見ただけでなんだかワクワクしてしまいます。
 前半はなんとなく「世にも奇妙な物語」的な展開。
 それぞれの人たちが自分の能力と引き換えに手に入れた能力は?
 能力を交換した人たちの結末は?この辺りが読みどころ。
 見方によっては欠点も…ね。

⚪️メグル

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 「あなたは行くべきよ。断らないでね」無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、突然に声をかけられた学生たち。店舗商品の入れ替え作業や庭の手入れなど、簡単に思える仕事を、彼女が名指しで紹介してくるのはなぜだろうー。アルバイト先に足を運んだ学生たちに何がもたらされるのか、厄介事なのか、それとも奇蹟なのか?美しい余韻を残す連作集。

裏表紙より

【感想】
 H大学学生部の女性職員・ユウキさんが学生に紹介するアルバイトは、紹介された学生の人生を大きく変えます、たぶん。
 オカルト、ホラー、ファンタジーなと様々な香りを纏った物語たちは、実に不思議な読後感を与えてくれます。
 遺体と一晩過ごすアルバイトの話「ヒカレル」は主人公だけでなく不思議な存在感の謎の女性・ユウキさんの過去も明かされる結末に驚き。
 一番心に残ったのは、ある男性が作る料理を食べるアルバイトの話「タベル」。主人公が人前でゼリー飲料しか食べなくなった理由と、食事を振る舞う男性の秘密、そこからのラストは、思わずウルッときてしまいました。
読了後「鯛も一人はうまからず」という諺が、ふと浮かびました。

⚪️わたしの忘れ物

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 まだ雪の残る3月、H大に通う中辻恵麻が学生部の女性職員から無理矢理に紹介された、商業施設の忘れ物センターでのアルバイト。夏休みに行ったインターンシップでの失敗を引きずる、遠慮がちで自己肯定できない恵麻に、なぜ?忘れ物の持ち主やセンターのスタッフとの交流の中で、恵麻が見いだしたものとはー。六つの忘れ物を巡って描かれる、心にじんわりと染みる連作集。

裏表紙より

【感想】
 H大学学生部の女性職員・ユウキさんが、3年生の中辻恵麻に無理矢理に紹介したのは、ショッピングモールの忘れ物センターでのアルバイト。そうこれは〝メグル〟の続編的な連作短編集です。
 忘れ物、他人にとってはガラクタ同然の物でも、本人にとっては思い入れの深いとても大切な宝物だったりします。
 とにかく自己肯定感が低く自称「ミス・セロハン」というくらいに卑屈な恵麻。彼女は同僚の水樹や橋野に支えられながら、たくさんの忘れ物とそれらに込められた思いや、謎に触れることで、一歩ずつ成長していくのですが…。
 まさかの最終章!あんな結末が用意されているとは!!

⚪️てふてふ荘へようこそ

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 ある街の高台に佇む木造アパート「てふてふ荘」。敷金・礼金なし、2Kの間取りで家賃はわずか13,000円、しかも最初の1ヶ月は支払う必要なし…破格の条件に不審を抱きつつ1号室に入居したフリーターの高橋真一。翌朝目を覚ますと、見たことのない若い女の子が笑顔で座っていた。「これからよろしくね」。特異な事情を抱えた住人たちが出逢った、謎の“同居人”の秘密。切なくもほっこり心が温かくなる、おんぼろアパート物語。

裏表紙より

【感想】
 昭和の香り漂う木造モルタル二階建てのアパート「てふてふ荘」には気さくな大家さんと6室ある部屋の一つ一つに地縛霊がついています。
 そんな曰く付きのアパートに引っ越してくる住人たちもそれぞれ問題を抱えていて….。
 住人と地縛霊の交流を通して、住人たちが少しずつ前向きになっていく姿と、地縛霊たちが成仏していく姿を描く心温まる物語でした。
 どのエピソードもグッときますが、キーアイテムとなるビリヤードと管理人さんのエピソードは、ミステリー要素もあってグイグイ引き込まれました。一つ残念なのは先に読んだ〝ばくりや〟同様、物語と書影のイメージがなんとなく合わないような気がしないでもありません。

⚪️六月の輝き

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 戻りたい。きらめく光で満ちていた、あの季節へとー。気が強くて元気な美奈子と、病弱で優しい美耶。同じ誕生日、隣同士の家に生まれた二人は、互いに傍にいることが当たり前の「特別」な存在だった。だが、11歳の夏、美耶の持つ「ある力」がきっかけで二人の関係は壊れてしまう。すれちがったまま残酷に過ぎていく月日が、やがて優しい奇跡を呼び…。少女たちを繋ぐ、不思議な“絆”の物語。

裏表紙より

【感想】
 幼馴染の美奈子と美耶の友情は、ある出来事がきっかけで11歳の夏を境に壊れてしまいます。
 全7章からなる連作短編形式で主人公・美奈子の心の成長が描かれますが、第1章と最終章が美奈子である以外は、全て第三者の視点で語られます。
 どの話も甲乙つけ難いですが、特に心に残るのは2人の同級生である渡辺史恵と、難病の青年・平田隆哉のエピソード。この2人には特に親近感を感じました。それは多分、自分が「心が不自由」なまま生きてきたからかも。せめてもう少しだけ心に余裕があったら。
 この物語を読んで「自由」の本当の意味に気付かされました。

⚪️あの日にかえりたい

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 地震に遭った翌日、少年は、海の匂いのする、見たこともない町に立っていた。通りかかったオバサンの家で親の迎えを待つ間に体験したのは、少年がこれまでしてみたかったことばかりで…(「翔る少年」)。介護施設で出会った、嘘のような人生を語る車いすの老人との交流と意外な結末を描く表題作ほか、時空を超えた小さな奇跡と希望を描く六篇。第143回直木賞候補作。

裏表紙より

【収録作品】
真夜中の動物園
翔る少年
あの日にかえりたい
へび玉
did not finish
夜、あるく

【感想】
 全6編の短編集はどれも、主人公たちが過去と向き合うことをテーマに据えた物語。
 結局のところ過去と向き合ったからといって、現在が、未来が大きく変わるわけではありません。しかしそれでも、もしかしたら一歩、いやほんの数センチだけ足が、心が前に進めるかもしれません。
 どの物語も甲乙つけ難い良作ですが、1993年に起きた北海道南西沖地震の話と思われる〝翔る少年〟は、読んでいて東日本大震災を思い出してしまいました。
 最終話の〝夜、あるく〟はもう最後にジワッと。
 今年最後に読む本が、この本で良かった。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 2023年最終週は「乾ルカさん週間」でした。
 そう、ちょうど一年前に読んだ「螺旋プロジェクト」の昭和前期編〝コイコワレ〟と今年の夏の文庫フェアで読んだ〝明日の僕に風が吹く〟がきっかけでずっと気になっていてコツコツ買い集め、ここに来てやっと手に取ることができました。
 このブームは年を跨いで今しばらく続きそうです。

 ここで年末のご挨拶と行きたいところですが、まだ今年の読書まとめ記事を書いていないので、ご挨拶はそちらの方で。

最後に、
読書っていいよね。


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