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【読書記録】2024年1月14日〜1月20日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 1月17日(水)、第170回芥川賞と直木賞の発表がありました!
 …ありましたが、なぜか今回は乗り遅れてしまい、候補作すら知らなかったという。
 これはやっぱり、自分の「推し」作家さんが一人も上がっていなかったからかなぁ。
 なんて思いつつ、今週出会った本たちをご紹介します。

【2024年1月14日〜1月20日に出会った本たち】

⚪️ミツハの一族
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 未練を残して死んだ者は鬼となり、村の井戸の水を赤く濁す、そう言い伝えられている北海道・白石村小安辺。このままでは水源は涸れ、村は滅んでしまう。未練の原因を解消し、鬼を常世に送れるのは、“ミツハ”と呼ばれる八尾一族の「烏目役」と「水守」の二人のみ――。大正12年、烏のように黒々とした瞳を持つ、H帝国大学医学部に通う八尾清次郎に報せが届く。烏目役の従兄が死んだと。墓参りの際に、初めて水守の屋敷を訪ねた清次郎は、そこで美しい少女と出会う。新たな烏目役となった清次郎と水守、二人の姿を鮮烈に描いた連作ミステリ。

出版書誌データベースより

【感想】
 舞台は大正12年の北海道。
 主人公はH大学医学部の学生・八尾清次郎。
 彼が住む地方では、人が死んで成仏できなかった時、その魂は鬼となり水を濁らせるという信仰が根ざしており、清次郎の家は代々地元の水源を守る烏目役という役目を担っていました。
 簡単に言えば、魂が成仏できない原因を突き止め水源を守るという話なのですが、これがそう単純な話でもなくて…。
 主人公の清次郎は夜にはほとんど目が見えなくなるという、いわゆる「夜盲症」のようなハンデキャップを背負っており、またその対となる存在の「水守」という役割を担う人物は、清次郎とは逆に陽の光の中では眩しくて目を開けていられないというように能力が正反対だったり、なんとなく、いや多分完全にBLっぽい展開があったりと、全体的に牧歌的な雰囲気を漂わせながら、終始気が抜けない物語でした。

⚪️奇縁七景
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 アルバイトスタッフリーダーの田中を正社員にしたい。過去二回の打診を、田中は丁重に断ってきた。彼の仕事ぶりは申し分なく、アルバイトのままだと、よそに引き抜かれてしまうかもしれない。何度も断るのは、何か事情があるのか。他のスタッフの意見も聞いてみようか。まずは誰に聞いてみるかな…。(「夜の鶴」)。七つの“ことば”から生まれた奇妙な物語。

出版書誌データベースより

【収録作品】
虫が好かない
目に入れても
報いの一矢
夜の鶴
只よりも高いもの
黒い瞳の内
岡目八目

【感想】
 この短編集を読みながら、乾ルカさんという作家さんは本当に多才だなぁと、つくづく思いました。
 前半の3編〝虫が好かない〟〝目に入れても〟〝報いの一矢〟は何というか、初期の「世にも奇妙な物語」的な感じでしょうか。
 第3話までだとホラー系短編集の色合いが強いですが、4話目の〝夜の鶴〟と6話目の〝黒い瞳の内〟はグッとくるいい話。
 5話目の〝只より高いもの〟は、ちょっとその方面には明るくないのでなかなか理解できず二度読みしてしまいました。
 …で最終話の〝岡目八目〟でそれまで登場したエピソードや人物がちらほら。結局あの骨は誰のものなんだろうか?
 もしかしたら気がつかなかったのは私だけ?

⚪️蜜姫村
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 珍種のアリを求めて瀧埜上村仮巣地区を訪れた昆虫学者の山上一郎と妻・和子。医師免許を持つ和子は、医者のいない仮巣地区の人々を健康診断したいと申し出るのだが、必要ないと冷たくあしらわれてしまい、その異様な雰囲気に戸惑っていた。そんなある晩、一郎は住民から絶対に踏み入れてはいけないと言われていた社に向かった。そして、そのまま行方不明に。村に秘められたしきたりが露見するとき、新たな禁断の恋が始まる…。和製ホラー×禁断のラブストーリー。

裏表紙より

【感想】
 この本の前に読んだ〝奇縁七景〟の感想で「乾ルカさんは実に多才な作家さんだ」と書きました。でもあれはそれぞれ別々の話を集めた短編集。まさかそれを長編でやってのけるとは!
 …なんて書いたものの、調べてみたら〝奇縁七景〟の方が刊行年が新しいという(汗)。
 何はともあれホラー、ファンタジー、ミステリー、サスペンス、そして純愛などいくつもの要素がギュッと濃縮された物語であることは間違いありません。
 一見悪役っぽいあの人が、実は誓った約束は必ず守る信念の人(?)だったりするし、エンディングに至ってはもうこれしかないでしょって感じ。

⚪️プロメテウスの涙
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 神様、私を助けてくださいー原因不明の異常なトランス状態に襲われる少女・あや香。精神科医の涼子は、アメリカで医師として活躍する親友・祐美を頼りに、あや香の治療に挑み始める。一方の祐美は、医療刑務所で不死身の死刑囚と向き合ううち、あや香と死刑囚とを結ぶ驚くべきつながりに辿り着くが…。

裏表紙より

【感想】
 乾ルカさんのデビュー2作目にして初の長編小説。
 簡単にいうとアメリカのある牢獄に収監されている死なない死刑囚と、日本に住み奇妙な行動を発作的に繰り返す少女の接点を、2人の女医(この表現は問題?)が探っていくという物語。
 まずは囚人の容姿などの表現がもう、ホラーテイスト満載。やっぱり「虫」はちょっと勘弁です。
 物語は大槻ケンヂ氏が解説で書いていた「合理と超常の狭間に潜む謎」という表現がストンと腑に落ちます。そしてまたこの解説の面白いこと。要は「物語には時々『え?そーなの?!』という展開があるけれど、実はそれが作家さんの思惑だったりするかもしれないので、それも含めて楽しんじゃおう」と。

⚪️ゆるす力
 著者 植西聰

【内容紹介】
 「この仕打ちは一生忘れられない」「納得がいかない」「腹が立って仕方ない」-など、誰の人生にも「ゆるせないこと」が起こる。その奥底にある憎しみや怒りの感情は、手放さないと、どんどん増幅してあなたをむしばんでいく。ゆるすことは確かに難しい。それでも、「怒っても自分が苦しくなるだけ」「ゆるせない事実そのものは忘れなくてよい」「すべては神様がくれた気づきのチャンス」などと考えることで、気持ちを前向きに転換できる。マイナスの感情から自分を解放し、幸せになる第一歩を踏み出すための書。

裏表紙より

【感想】
 「◯◯はこうあるべき」とか「◯◯はこうでなくてはならない」という思いが強い私は、そこから少しでも外れた言動を目の当たりにするとついイラッとしてしまいます。いや、イラッとするだけならまだマシ、仕事で溜まったイライラをついつい家族に向かってドカンと…。
 今考えると本当に酷い奴だと自分でも反省しています。
 …そんな気持ちを手放したくて幾度となくこの手の本を手に取っていますが、結局のところどの本も「他人は変えられないのだから自分を変えるべし」という結論。
 この本はその発想の転換の方法がてんこ盛り。
 面白いのは「どうしても怒りが収まらない時は」という項目があること。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 今週も先週に引き続き乾ルカさんウィークでした。
 本文中の感想にも書きましたが、乾ルカさんは、ヒューマンドラマからSF、ファンタジー、ミステリー、ホラーと実に多彩なジャンルを描く作家さんで、読者としても次はどんな手で来るのか楽しみではあるのですが、誰か他の人におすすめする場合にはどんな作家さんと言えばいいのか説明しにくい(乾ルカさんごめんなさい)と思っていましたしかし〝プロメテウスの涙〟の解説で大槻ケンヂさんが書いていた「合理と超常の狭間に潜む謎」という言葉がしっくりきて、これから乾ルカさんを誰かにオススメする時はこれでいこうかと。

 …ということで、今週はこの辺で。

最後に
 読書っていいよね。


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