安倍元首相銃撃事件への各国メディアの報道

安倍晋三元首相の銃撃事件から一夜明け、各国メディアも同件について詳しく報じている。この記事では、各国記事をざっくりと見ての印象をまとめた。

なお、私は翻訳のプロではないため、厳密な訳ができているとは限らないことをご了承願いたい。また、チェック範囲も各国1紙のみのため、傾向については話半分くらいで見てもらえると程よいかと思う。

また、これらの内容については「各国政府の見解」ではなく「各紙の報道傾向」である点に注意してほしい。国営メディアであれば重なる可能性もあるが必ずしもそうとは限らない。

各国メディアの報道

米:The Wall Street Journal

「安倍晋三元首相、暗殺される」

WSJでは同記事がMOST POPULAR NEWSの1位に入った。事件の詳細と各国の反応。岸田首相の発言や容疑者の供述、一般人の反応にも触れている。現職時の活動や派閥についても記述している。また、日本ではこういうイベントでも警備が軽微であること、伊藤博文元首相や原敬元首相の銃撃にも触れている。別記事では「安倍元首相を撃ったのは何者か」とのタイトルで、容疑者宅周囲に住む人の話を聞くなどして人物の掘り下げを行っている。

中国:人民網(ソース:新華網)

安倍晋三元首相、街頭演説中に銃撃受け死去

事件の詳報。10日に参院選があることや、岸田首相の発言、容疑者の供述、容疑者宅での爆発物発見、安倍元首相の来歴にも簡単に触れている。人民日報の他記事では、同国外交部の趙立健報道官が「安倍元首相は中日関係の改善と発展に貢献した」として遺族に向けお悔みお見舞いを述べたと報じられている。

韓国:朝鮮日報

朝鮮日報は同件についての記事がかなり多く、内容も詳細。容疑者の宗教団体発言や、海上自衛隊を離れた後の勤務先情報、海外の反応なども報じられている。中には「なぜSPは銃撃を防げなかったのか」という考察記事もある。ムン・ジェイン元大統領が哀悼の意を述べたとの報道もある。

英:BBC

BBCも同件についての記事を何本も出している。事件の詳細についても語られているが、現職時の活動についての解説記事やコラムなどが多い印象。日本においては銃を使った暴力事件が極めてまれであることも報じている。「安倍晋三の死、今後の日本を変えるかもしれない衝撃的な死」という記事では、日本と銃の関係について語られており「このニュースは治安の良さを誇る日本に衝撃を与えた」と記している。その他、政治的事件である二二六事件と、(BBCの見解として)特定の何かに恨みを持つ個人による犯行である京アニ放火事件、秋葉原通り魔事件に触れ、今回の事件がどちらなのかはまだ不明とも書いている。

ドイツ:Supigel Online

安倍晋三が暗殺により死去

上記4か国の報道に比べるとさすがに少したんぱく。岸田首相の発言や選挙が予定通り行われることについての記述が若干目立つ。日本の銃文化について「世界で最も安全な国の一つ(中略)日本でのテロは国民に限らず広く衝撃を与えた」と報じている。他記事では各国首脳のツイートをまとめている他、TwitterやFacebook(Meta)が事件画像の取り扱いについてどう考えているかについて解説するなど、SNSに関する情報が多い印象。

フランス:Le Figaro

安倍晋三が暗殺──平穏な日本に衝撃

Le Figaroもドイツと同じくらいの記述量に見えた。こちらでは、政治学者が街頭演説の実施場所が直前に変更されたことから、事件が偶然に(計画的ではないという意味)起きたと分析している。同誌でも在職時の活動について触れているが、こちらは森友問題などのスキャンダルにも触れている。日本の銃文化については、日本の政界が平和であり市民活動もあまり活発でないことなどから「(今回の事件は)日本では想像もつかない」ことだと報じている。加えて日本の警備についてはレーガン大統領銃撃事件を振り返りながら「非難を浴びることは間違いない」と評価している。

ロシア:Russia Today

Russia Todayでも今回の事件は詳しく報じられている。銃文化に関する言及はなかったように思うが、プーチン大統領が安倍元首相を好意的に見ている雰囲気が端々に現れている印象。また、別記事では、フィギュアスケートのアリーナ・ザギトワ選手が追悼の意を示していること、秋田犬をプレゼントされたことなどに触れるなど、エピソード面が厚い。

傾向

中韓とアメリカは日本とも近くにあるからか、事件の詳細についてはかなり詳しく報じている。また、日本の近年の政治動向については、多少知られているものとして報じられている感じも見られた。

一方、欧米の報道では銃文化に関する記述が多く見られた。日本は平和であり、銃撃事件もほとんど起こらないという前提(事実)から、それが脅かされた事件としても注目度が高いとみられる。また、記事構成としては、安倍元首相の経歴や在職時の活動などにも簡単に触れていることが多い印象だった。

BBCは国際メディアとしての力か、日本の過去事例にも詳しく、今回の事件に関してかなり踏み込んだ記事を出していた。ロシアは安倍元首相とプーチン大統領の関係性が報道にも表れているような印象を受けた。

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