見出し画像

ほんの少し


秋。
温度調整のための人工的な風は吹かない。


わんぱくなのでいつだって食欲はあるが、秋に特に食べ物が美味しく感じるのは自然を慈しむ気持ちが強いからだろうか。


夏から秋に変わるとき、天気予報すら見ない私は移り変わりに置いて行かれた"いつも通り"の服を着て、肌寒いまま体縮めて一日を過ごしたりして、厚めの服に袖を通してホッとするときのあの感覚が好きだ。
"肌寒くなる"というあまりにも短い期間のための言葉が好きだ。好きな人が贈ってくれてもっと好きになった。

中秋の名月の頃に生まれた私は秋への気持ちが特別だと勘違いをしそうになるが、かわいい勘違いは積極的にしていこうとたった今決めたところである。


人生は勘違いをしていたほうが楽なのかも、とふと思う。
ただ、ここでいう勘違いは自衛に近い。信じてみるという類のもの。
勘違いと信じるが一緒だなんてへんてこだ。いや本当にそうかな。
思いも寄らないところで繋がっていたり繋がっていなかったり、全てが紙一重で表裏一体だ。
単純なものは複雑だし、複雑なものも実は単純だったりする。
醜さが美しさ。どこから誰がどのように見て、それがいつなのかによっても変わってくる。積み重なるし、積み重ねてしまう。



間違えた、秋が気持ちいいという話のはずだった。
右往左往、混沌、不安定。
気持ちがいい。秋は幸せだ。秋は死にたい。



そんな季節に、SEVENTEENがGod of Musicという曲を出した。遂に自分たちは神だと言い、私たちにあなたたちを神と呼ばせてくれるのかと思ったが、"もし音楽の神がいるなら"という祈りであり、人生の讃歌であり、喜びだった。
欲張りな彼らが好きだけど、自分が自分が、という欲張りではないんだったね。
"あなた"を肯定するために、見つけるために、僕はこうだよって誠心誠意伝えられる人たちなんだった。


こんなことがあっていいのかよというのが率直な感想である。

SEVENTEENのことを"致死量の幸福"と表現したことがあるんだけどまさにそれで、ああもう全部いいやと思ってしまった。彼らが与えたいものはそういうものじゃないかもしれないけど、気持ちのいい季節も高じて、あまりにも満たされてしまって、これ以上生きていられない気がした。

この上ない幸せを表す「Seventh Heaven」とグループ名を掛け合わせたアルバムでこの気持ちになるのはあながち間違いではないのが皮肉だ。てかちゃんと体現するのスゲ〜




私が"いちばん"好きなミンギュさん、どうしようもなく綺麗で、私がどんなに頑張って言葉を紡いでもどんな風に愛を叫んでも到底及ばなくて、あの命の輝きを私が浅はかにしたり嘘にするみたいで耐えられなくなっていた。
私のきみを想う気持ちとそれを表現する方法が全部枠に当てはめられていくみたいだった。自分が特別だとかそういうことじゃなくて、"それぞれ"でいいものが、結局。

そんなときに「世界中が一斉に合唱」って高いところで旗を振るようなミンギュさんをみた。突きつけられた。緩やかな衝撃だった。
涙を流すわけでもなくひどく心を震わせるわけでもなく、どんな感情なのかもわからないまま全てを手放すしか方法がなくなった。私のこのはち切れそうな気持ちも美しいきみの全てを守る方法がそれだけになった。私とだけ向き合わないと私が壊れてしまうと思った。


こんなに世界は広くて素敵なモノと人で溢れているのにミンギュさんから目が離せないのは見ていて何も苦しくも怖くもないから。
目を瞑る必要も怯える必要もないから。
何もかもうまく信じることが出来ない私の心を開かせてくれて、柔らかい状態でいさせてくれる人。そこに恐怖を伴わせない人。あれこれ考える"私"に"今"を信じさせてくれる人。

まっさらで新しいのに安心する。確かにそこに私の過去があるのに初めて訪れる場所みたいに新鮮にワクワクするみたいな、そんな気持ちを与えてくれる。いつも。


切れ長で奥二重の目に冷たさは宿らない。
構成要素ひとつひとつを敢えて分類するのであれば、かわいいよりもかっこいいが圧倒的に多いはずで、温かさよりも冷たさのはずで。
私が積み重ねてきてしまった私の中の常識という名の偏見が私をいつも寂しくさせたけど、いつも、どんな瞬間も、見落としてしまいそうな小さなことでも、かき消してしまう。
これも全部勘違いだったらどうしようかな。可愛い勘違いだよって笑ってくれるかな。



私はきみを想うとき、この上なく満たされている。満たされてしまう。それが少しだけ恐ろしい。幸福を怖がりたくない。これは私の過去できみは新しい。



美しく生きるミンギュさんを遠くから眺めていられたら十分なのにこっちを見て笑いかけてくれる。
綺麗だねってきみの世界に入れてくれる。






好きだ。全身が叫んでいる。
私はキムミンギュがどうしようもなく好きだ。



本当は文字なんて書きたくない。言葉は足りない。何も言わないことでしか守れない気持ち、それが確かにあることを忘れてしまうのが怖いからほんの少しだけ言葉にした。悔しい。なんだそれ、へんてこだな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?