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旧作ザオリク図書館「六年四組ズッコケ一家」レビュー

 ズッコケ一家といっても、ドラマ化&アニメ化した某ズッコケシリーズとは全く別物。作者も違う人です。ただし年代と雰囲気は近く、書かれたのは70年代前半。
 本書は「6年の学習」に連載(73~74年)された児童文学であり、作者は「おれがあいつであいつがおれで」で有名な山中恒先生。noteの交友で、山中ファンの方にご紹介いただいたので、今回購入してみました。

 内容としては、全12回を通して、12人のクラスメートがおのおの活躍するアンソロジー集といった体裁です。
 文体はいかにも70年代の作品らしく、劇画めいたべらんめえ口調やお嬢言葉が度々引用されている。つばさ文庫の新装版だから、挿絵は今風なんですけどね、みんななかなかの美形キャラに描かれてます(笑)
 96年に一度復刊された時、再編集があったらしく、70年代の作品なのに、ガンプラの話題があったり(ガンダムブームは79年以降)、トレーディングカードが好きな生徒がいたりするのはご愛嬌。

 さて、登場する12人の生徒は、それぞれに個性的で魅力ある人物たち。              
 今のエンタメでも、キャラ設定として活用されている王道ネタも多く、児童文学にありがちだが、女性陣が強いですw
 以下、六年四組主要メンバー紹介。

 健忘症?少年ワスレノスケこと、青山大介。
 私も忘れっぽいので、かなり好きな大介。彼はある日、中学生にカツアゲされてしまうが、異常な健忘症に不良中学生も呆然。

 超泣き虫のナニセ・ナキエこと、成瀬牧枝。
 なんにでも泣き出す牧枝の友情&恋?の始まり。

 無口・無表情・無愛想なシラケ・ゴンパチこと、平井八郎。
 挿絵では綾波系のイケメンになった彼。そんな八郎が、学校の火事騒動をクールに解決。

 ボーイッシュすぎる女、ミス・パリこと、花原美和子。
 男になりたい美和子が、校内ドッジボール大会で男子相手に無双。

 とんだホラ吹き男爵・マンカラ(万に一つも真実無しの意)こと、村上和也。
 あまりに嘘をつきすぎた和也は、ついに精神病院送りに!?

 のんびり天然少女・オテンポこと、野村恵子。
 思考が数テンポ遅れているのろま少女が、民宿の幽霊怪事件を暴く!

 目立ちたがり転校生のハッタリオバケこと、八田正弘。
 彼がハッタリ野郎になったのは、そもそも転校続きが理由で・・・。

 そそっかしい暴走少女・ソッパン(反っ歯)こと、山口やよい。
 そそっかしすぎて失敗の日々。校内美術コンテストでも、自業自得の悲劇が!

 稀代のお調子者・ミスター・チョイノこと天野正彦。
 リコーダーでイタズラして先生を怒らせた雅彦は、屁の音だと誤魔化そうとするが・・・。

 そのままずばり、オセッカイサマこと、渡利哲子(石原プロの人ではない)
 おせっかい焼きを皆に嫌われる哲子だが、今回はなんと空き巣退治で大金星!

 ステルス人間・イナイこと、乾潔。
 存在感が無さすぎて忘れられ、ろくな目に合わない潔。とうとう交通事故の危機に直面!?

 クラスの情報屋・キキ耳ズキンチャンこと、三好利恵。
 やたらと事情通な彼女が、新しく赴任してきた教師の内情を赤裸々に暴く。

 更には、忘れちゃいけない名脇役・担任女教師の立野先生&校長先生であります。
 立野先生(挿絵は美人)に関しては、各話にツッコミ役で出番があるし、最終エピソードが先生の結婚パーティーなので、かなり重要なポジションです。
 それと、「おれがあいつであいつがおれで」でもそうですが、山中作品における校長先生は、妙に俗物で、さんざんな目に遭うのが特徴的。老害的な立ち位置でもある。

 さて、読んでみての感想ですが、やはり今のジュブナイル小説とはだいぶ味わいが違うなあ~と。
 時代的な背景も70年代丸出しで面白いし、悲鳴が「ふわあ~!」「ギャーイ!」とか、作者の独自センスが微笑ましい。キャラも体育会系寄りというか、今と比べ暴力沙汰をあんまり恐れてない印象が(笑)
 フィクションとはいえ、約50年前の空気感を知る良い参考書になります。








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