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みかんの旧作ザオリク図書館「オリエント急行殺人事件」

 言わずとしれたクリスティの傑作推理小説。考えてみれば、列車系ミステリーの始祖なのかも。
 これも昔学校の図書室で、推理小説コーナーにあったが、結局当時は手つかず。ポワロシリーズ自体は海外実写ドラマ版が好きで、原作小説も数作読んだんですけどね。
 オリエント殺人に関しては、有名映画になったのにも関わらず、今まで映画も含め未見。ならやっぱり、一度は読んでおきたいと。
 そう思い立って、早々に茅野美ど里訳のバージョンを購入。同じ内容で何冊か訳書があるみたいですが、茅野版は他より廉価だし、ポップな挿絵も多いのがいいですね。

 さて、エルキュール・ポワロといえば、フランス語キャラ(ベルギー国籍だが)が人気の探偵シリーズですが、本作でも会話はやたらに、フランス語混じりで進むのが印象的。実写ドラマでも、声優の熊倉一雄がいい味出してたなあ。「ムッシュ、○○」というやつ。
 それに殺人事件の舞台が、1930年代の厳冬トルコを走る鉄道内という、エキゾチックな時代感が実にいいですねえ。これ戦前に書かれた小説なのかあ。
 本作の事件自体は、他の長編作のように次々と被害者が消されていくわけではないが、その分じっくり丁寧に、一つの密室殺人事件を扱います。
 オリエント急行で深夜に起こった、とある旅好きの富豪殺し。彼を刺殺したのは何者か? 主人公ポワロは、殺人犯はいまだ乗客の中に潜んでいると推理する。
 小説の大半は、鉄道乗客達への長い尋問シーンで消費されていくのですが、事件の容疑者はなにしろ「12人いる!」のです。乗客全員、国籍も階層も年齢もばらばらで、各人妙にキャラが濃いので、尋問メインでも全然飽きません。
 個人的には、イギリス家庭教師のメアリ・デべンナム嬢が、クールな性格で好きだなあ。ハンガリー外交官夫妻のアンドレニイ伯爵夫人も気品があって良き。

 もちろん世界的に有名なミステリーだし、私もおぼろげに犯人の情報は知ってたんですが、それにも関わらずレジェンド作家アガサ・クリスティの筆力のお陰で、十二分に楽しめました。戦前にこれ書いたら、評価高いのも納得です(でもこのトリックだと、普通に推理してたら犯人当ては無理かもw)
 まあ、今回は推理モノということで、流石に結末ネタバレは控えます。探せばネタバレサイトも多いけどね。
 
 あと、古典ミステリーとしても当然面白いのですが、舞台である当時の寝台車や食堂車など、オリエント急行内の描写がなかなか珍しいので、鉄道旅行なんかが好きな方にもオススメです!



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