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【4711】電話① She loves you

この作品は『シトラスの暗号』から始まる4711シリーズの続編です。よろしければ1作目からどうぞ。

登場人物

✻水木清香さやか
私大附属のS高に通う3年生。美化委員会会計。
家庭科と体育が苦手。好きなものはテディベアとアイスクリーム。趣味はゲーム。
昭和54年12月13日生まれ。B型。

✻織田修司
S高の物理教師。二枚目。
好きなものは寿司とビール。趣味はテニス。ドイツ製の4711というオーデコロンを使っている。愛車はBMW 。
昭和47年1月1日生まれ。A型。

✻堂本はじめ
清香の恋人。S高の2年生。
サッカー部でゴールキーパー。
身長185センチ。




1997年10月


「はい、お」
「せんせー、聞いてー!」
「おまっ、テスト前に電話してくんなよ」
「お前? お前って言った?」
「言ってない」
「言った」
「み、水木さん」
「気持ち悪っ!」
「俺世間では二枚目って言われてなかったっけ」
「テストがどうしたの?」
「テスト前ってさー、職員室入っちゃいけないとか、いろいろあるじゃない? こうやって電話で話してても、問題漏洩の危険があるわけよ」
「どうして?」
「たとえば君が色仕掛けで俺から問題を聞き出そうとするとかね?」
「ない」
「ないな、うん。色仕掛けってのがそもそも間違いだな。脅迫の方が信憑性ある」
「悪かったわね、色気なくて」
「いや、むしろ助かってるよ。君がものすごい巨乳だったりしたら、俺今頃シャバに居られなかったかも」
「巨乳好きなの?」
「いや、特には」
「何それ」
「特に好きじゃなくても、ふらふらっといきそうな響きがあるでしょ、巨乳って」
「知らなーい。いやらしいわね」
「一応男子なので」
「キモッ!」
「キモいキモい言うなよ。二枚目はか弱い生き物だから、もっと愛情を持って接してください」
「余計キモいわよ」
「で、ご用件は?」
「なんだっけ?」
「なんか怒ってなかった?」
「あ、そうそう! 堂本くんがね!」
「はい、堂本くんがー」
「デート中も友達と電話してるのよ。わたしとデートなのによ? 別に急ぎの話でもなんでもないのに、かかってきた電話にフツーに出て、そのまま30分も話してるのよ? どう思う?」
「君は? デート中に電話かかってきたらどうするの?」
「あとでかけ直すって言って切るわよ。それか電源切ってるし」
「偉いね」
「だってデートだもん。相手に失礼でしょ?」
「もし俺から電話かかってきたらどうする?」
「えー」
「あ、ちょっと悩む?」
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」
「おい!」
「今デートだからって言うわよ。別にそれで怒らないでしょ?」
「怒らない。ちょっと淋しいだけです」
「かまってちゃんか」
「二枚目はか弱い生き物だから」
「まだ言ってんの。てゆーかさー、先生電話かけてこないでしょ!」
「ああ確かに。いつも君が一方的にかけてくるよな。じゃさ、今度電話するから、次のデートの予定教えて」
「やめてよー」
「はい、じゃ回答ね。どう思うかって、それは俺も相手に失礼だと思う。ただ感覚には個人差があるから。君は真面目だから腹が立つんだろうけど、彼はそこまで生真面目じゃないだろ?」
「うん」
「それはだらしないとかいいかげんとかじゃなくて、むしろ君に気を許してるってことだと思うよ」
「そうなの?」
「堂本にとっては、俺は君に何も隠し事してない、友達との電話も普通に聞かせられるよって意味なんじゃない?」
「そっか」
「だからって、彼女ほっぽっといて30分も話してるってのもどうかと思うけどね」
「でしょー?」
「ま、君に安心してるし、甘えてるってことじゃないの」
「あー、甘えてるのかー。そっかー。なんか納得」
「機嫌直った?」
「うん」
「そんなんでカリカリして喧嘩すんなよ」
「はーい」
「じゃ今日の授業はここまで」
「ありがと」
「どういたしまして。デートの日時教えてね」
「ぜーったい教えない!」
「はははは」
「じゃねー」
「おう」

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