神経原性ショックと脊髄ショックの違い

神経原生ショック 救急医学会HPより引用

上位胸椎より高位の脊髄損傷によるショックで,その本態は「自律神経系失調」によって引きおこされた末梢血管弛緩による血圧低下である。血液分布異常性ショック(distributive shock)の一つである。症状としては血圧低下のほか徐脈をともない,四肢末梢の皮膚は暖かく,乾燥している。外傷にともなうショックであるので,その診断はまず,出血性ショックを否定することが前提となる。治療では輸液の効果は少なく,トレンデンブルグ体位と血管収縮薬が有効である。徐脈がみられる場合は副交感神経遮断薬であるアトロピンが用いられる。多くの場合,血圧低下は24‐48時間で回復することが多い。

JATEC 第6版より
通常第TH6以上で認められるショック。損傷した脊髄支配レベル以下の交感神経活動が抑制され、末梢血管が拡張、迷走神経刺激や低血圧に対する心臓への制御ができなくなる。そのため血圧が下がる。出血による代償としても頻脈や冷や汗、湿潤、蒼白などの皮膚所見を示さない。
低血圧で輸液に反応しない場合は循環作動薬。高度な徐脈に対してはアトロピンを用いる。
脊髄損傷の程度と循環異常の程度には相関があり、完全麻痺を呈する患者では不完全麻痺の患者に比較して5倍の頻度で循環作動薬が必要になると言われている。

脊髄ショック(spinal shock)

横断性の脊髄損傷にともなう神経症状を指し,傷害レベル以下の筋トーヌスの低下する弛緩性麻痺,感覚脱失,尿閉からなる。脊髄反射である深部腱反射,表在反射ともに一過性に消失するが,消失した脊髄反射は数週間後から徐々に回復して筋トーヌスも亢進し,痙性麻痺に移行する。

脊髄が腫脹して完全脊髄損傷に類似した状態となる。完全な神経機能障害となる。症状は数日で消失するが、しばしば後遺障害が残る(痙性麻痺になる)。

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