11/01　晩秋にふたりで笑っていた虚構
11/02　見下せば野山の色と同じ国
11/03　露寒に　いいから少し黙っていて
11/04　うつくしく死ぬひととする冬仕度
11/05　破芭蕉嘘をつくなら早くして
11/06　少しずつ世界はずれて秋の果
11/07　立冬に生まれた風は鋭い
11/08　火の爆ぜて潤目鰯も断末魔
11/09　ちり鍋であなたの箸をつかまえる
11/10　わたくしのみづうみにゐる浮寝鳥
11/11　干蒲団が閉じ込めた日差しは過去
11/12　葉であった事実を殺め産む干菜
11/13　甘やかし甘やかされて毛糸玉
11/14　冬兆す謝罪へ使われる「不快」
11/15　可能性が千歳飴を握り締める
11/16　お互いに火をつけあって火吹竹
11/17　鮮やかな北風の宣戦布告
11/18　冬ざれや無声映画にあるノイズ
11/19　霜除の中の木となるわたしたち
11/20　おそろしいものは自分の中の鮫
11/21　残り香があなたの答え冬麗
11/22　小雪は町をくすんだ色で描く
11/23　ラグビーのボールの軌道が愛ならば
11/24　小春日は一枚のだまし絵でした
11/25　白地図の燃える匂いの憂国忌
11/26　咳きの反響と座す六畳間
11/27　欲しかったのは　抱き締める膝毛布
11/28　こんなにも冬菜の青が目に染みる
11/29　暖房の前だけで明かした秘密
11/30　押しくら饅頭の密度で恋を乞う