03/01　百貨店のちりめんじゃこはおとなしい
03/02　双蝶に見ているキュートアグレッション
03/03　恋と認めたら楽なのに薄紅梅
03/04　磯焚火おぼえなき胎児の記憶
03/05　ご覧、あれがヒトのカルマで点く山火
03/06　啓蟄のわたしがうしなったすべて
03/07　世界中芽立がつくる点描画
03/08　正しさの数だけ延びる蜷の道
03/09　はるかなる悔悟の果てにマント脱ぐ
03/10　わたしたちを瓦礫と気づかせる暖雨
03/11　蜆舟の底へ積もっていくしじま
03/12　手に入らないものがきれいな日に挿木
03/13　こんなにも春鮒釣がくれる命
03/14　過去がフィルム映画めいて木の芽風
03/15　また朧月夜へ預けておく秘密
03/16　結局は卒業証書だけがきれい
03/17　弱虫も見る夢はある春疾風
03/18　うずくまることをゆるしてやる彼岸
03/19　春三日月に拐われていくふたり
03/20　洗いざらいを吐き出して咲け辛夷
03/21　春分は眠たい日差しだから好き
03/22　竜天に登る銀河は君の中
03/23　穴を出る蛇も同じ言葉で話す
03/24　沈丁花が明るい中を黙りこむ
03/25　メトロノームも柔くなる春休み
03/26　うまれたての枝毛に絡む風車
03/27　佐保姫の素足で触れていた地面
03/28　限られた夢の証拠の雁供養
03/29　引鶴の見ている天が空だった
03/30　雁風呂の熱は同様に確からしい
03/31　知っていて名残の雪で泣いている