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高千穂の夜

 神楽を観てみたいとずっとおもっていた。数年前に訪れた島根県は石見神楽が有名だし、好きな宮崎県では高千穂神楽、銀鏡しろみ神楽などどれもいいと聞く。五島神楽というのもあるしその時期に合わせて行ってみたい。とにかく神楽を体験してみたいとずっとおもっていた。

 秋の宮崎旅、これは友人の仕切りで、我々は日程とメンバーくらいしか把握していなかった。適切な服装くらいは事前に訊いておいたけれど、あとは人任せ、その瞬間をたのしむつもりで参加した。

 1、2泊目は日南で、手づくりご飯や懐石料理をたのしんだ。3泊目は高千穂に宿をとったのだけは聞いていた。高千穂では夜神楽に行くのだというのを聞いたのは当日だったかもしれない。行きたかった夜神楽!

 食事やお風呂を済ませて、昼間に参拝をした高千穂神社に向かった。夜神楽は20時からで、本来は夜通し奉納される33番の夜神楽から、観光用に4番の舞が公開される。神楽殿の室内は、時間が近づくにつれほとんど満席となった。

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手力雄たぢからおの舞
天照大神が天の岩戸にお隠れになったので、力の強い手力雄命が天の岩戸を探し出すため静かに音を聞いたり、考えたりする様子を表現してあります。

 カメラは置いておいて、全身で体験したほうがいいとわかっていたけれど写真を撮るほうを選ぶ。太鼓や横笛(篠笛というそうです)の音が心地がいい。私のカメラ(Nikonです)のAFは、鈿女さんの舞ではずっと迷子だった。

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鈿女うずめの舞
天の岩戸の所在がはっきりしたので、岩戸の前で面白くおかしく舞い、天照大神を岩屋より誘い出そうとする舞であります。

 物語が展開していって、手力雄が真っ赤な顔をして岩戸を取り除く場面。迫力があっていい。

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戸取ととりの舞
天の岩谷も岩戸の戸も所在がはっきりしたので、手力雄命が岩戸を取り除いて天照大神を迎え出す舞で勇壮で力強く舞う舞であります。

 最後にはイザナギ・イザナミの二神が出てきて、仲良く酒を酌み交わす。以前はこの辺で一度イザナギの浮気の様子も見られたらしい。観客の中から相手を選び、巻き込んで盛り上げたらしいのだけど、このご時世でそれははずされてしまったみたい。

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御神躰ごしんたいの舞
一名国生みの舞と申しますが、イザナギ・イザナミの二神が酒を作ってお互いに仲良く飲んで抱擁し合い、極めて夫婦円満を象徴している舞であります。

 ここの場面がおかしかった。それはこの旅のはじめあたりの私たちの会話からなんだけど、パートナーのことで、ひとり身のRUさんが冬場になると「彼氏が欲しい~」と言うんだとの話が出た。それは重たい灯油を運ぶときに毎年出る言葉らしい。それを聞いた私は、実体験からパートナーがいても自分で運ばなければならない話をした。その場にいたRKさんも、以前のパートナーが荷物持ちも荷物運びもしてくれなかったよ(してくれるものなの?)と言った。相手によるのだ。
 それで、この夜神楽の御神躰の舞では、イザナギ・イザナミは説明の通り酒をつくり、仲良く飲み、酔いつぶれ、抱擁し(というか結合して)、ばたんと寝てしまう。その後、まず立ち上がるのはイザナミで、寝転んでいるイザナギの横で道具を片付け、肩に担いで退場する。これを見たRKさんが「ほら! 神話の頃から女が荷物を持つっちゃよ(方言)」と言ったのでみんなで笑った。なるほどね。

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 写真にくっつけた説明文は、この場で配られた説明書きから転載した。一般社団法人高千穂町観光協会とある。

 厳粛なのもいいけれど、こうやってげらげらと笑いながら観られてたのしかった。ほくほくして宿に戻り、残っていたかっぽ酒とお茶であったまってから早めに休んだ。翌朝は雲海を見に行くのだ。

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