見出し画像

ロボット犬「Mini Pupper」で遊んでみた

MangDang Technology Co.(本社:香港、代表者:Afreez Gan)が開発したロボット犬「Mini Pupper」。昨年末、Makuakeにて先行販売が開始され、サンプル品をいただいたのでこちらで紹介させていただきます。

ロボット犬の動向

Spotから始まるロボット犬ムーブメント

ロボット犬、または四脚ロボットとして最も有名なのは、やはりBoston Dynamics社の「Spot」でしょう。

2020年には福岡ソフトバンクホークスの応援団として、「Pepper」とともに活躍していたことから、エンジニア以外の多くの人に知られるきっかけにもなったのではないでしょうか。その影響もあってか、ロボット犬といえば黄色い印象が浸透しています。Mini Pupperも黄色いので、初見の方からは「Spotだ!」と言われることも多々ありました。

また、同年にはSpotの販売が米国企業向けに開始され、Explorerモデルの価格は74,500ドル(日本円で約800万円)とのこと。

さすがに個人で800万円は出せませんし、企業でもなかなか気軽に購入できる価格ではありません(と思っていたら、バックオーダーは数カ月待ちらしいですね。皆さんお金持ち…)。となると、やはり低価格で勝負に挑んでくるのが中国企業。Unitree Roboticsの「Unitree A1」はバク宙をこなせる高い運動性能で、価格は128万円。

さらに翌年になると、Xiaomiが「CyberDog」を発表。なんと約17万円で販売するというのですから驚きです。しかしながら、こちらも一般販売ではなくエンジニアコミュニティ向けの限定販売とのことでした。

オープンソース化でメーカーからメイカーへ

Spotを起点に、技術の発展や低コスト化が進んできたロボット犬ですが、なかなか個人販売までには至っていませんでした。メーカーの開発部署や、大学の研究室で所有しているのが大半ではないでしょうか。そんな中、メーカー(製造業)からメイカー(モノづくりを楽しむ個人)へ、よりロボット犬の存在が近しくなったのも、2020年のことでした。

スタンフォード大学の研究チームが小型四足歩行ロボット「Stanford Pupper」をオープンソースで公開したのです。ローコスト、かつ自由なカスタマイズやプログラムが可能なこのロボット犬は、多くのメイカーを虜にしました。部品総額は6万~10万円、製作時間は約4~10時間とのこと。サイズも小型なので、机の上で作ってそのまま遊ぶことができます。

しかしながら、オープンソースになったといえど、全ての部品を買い揃えて作るのは多くの労力を要します。それを鑑みた結果なのか、その後すぐ、Cypress Software Incにより「Pupper Robot V2 Kit」が販売されました。これは一部違いはあるものの、ほぼStanford Pupperの組立キットです。

そして、キットはMangDang社へ引き継がれ、デザインや機能が洗練されたMini Pupperへと進化を遂げました。

メイカーが愛する小型ロボット犬

Stanford Pupperとは異なる系譜の小型ロボット犬も多く登場しています。サイズやコスト感は似ているものの、形状やメカ的な機構、使用している技術は様々です。例えばMini Pupperと同じように、クラウドファンディングでは以下のようなロボット犬が登場しました。

オープンソースプロジェクトも沢山存在します。

また、キットを買わずに様々な部品を組み合わせ、自作するメイカーも多く存在します。凄いですね。

Spotなんて高くて買えない、遠い存在の技術だと思っていたロボット犬ですが、高度な技術を提供するメーカーや、モノづくりを加速させるメイカーの手によって、とても賑わってきました。

Mini Pupperの概要

さて、Mini Pupperですがスペックは以下の通りになります(Makuakeサイトより引用)。ROSで動きをプログラミング可能、業界最小クラスのLiDARモジュールを搭載することで自動で指定の場所に向かわせることも可能です。Luxoni社のカメラモジュール「OAK-D-Lite」にも対応しているため、周囲のモノを認識し、追跡する事もできます。様々な機能を拡張することで、番犬的な扱いをさせることもできるかもしれませんね。

画像1

全12自由度の構成で、細かい動きまで再現可能です。脚部には軽くて丈夫なカーボン素材が使用されており、安定且つダイナミックな動きができるように工夫されています。

表情豊かなのも特徴的です。ロボット犬は(Spotの影響を受けてなのか分かりませんが)そのほとんどに頭や顔がありません。拡張して付けれるものも多くありますが、なんだか寂しい印象がします。Mini Pupperは首が付いているわけではありませんが、正面の液晶に表情を表すことができます。様々な感情表現を実装することができ、ロボットに愛着がわいてきます。

画像3

このプロジェクトではDIY派用のキット版と、ラジコン派用の組立完成版が用意されています。製作目安として、初心者なら約2〜3日、上級者なら約2〜3時間で出来ると記載がありました。きっと私は上級者であると信じて、DIYキットの組立にチャレンジしてみました。

画像2

作ってみた

時間計測も兼ね、Twitterにアップしながら組み立てましたので、それに沿って紹介していきます。

箱を開けると、部品用の小箱、ラズパイ用の箱、コントローラーなどが同梱されていました。

取扱説明書はありませんでしたが、Webのドキュメントを参照すれば問題ありません。先行入手した日本のメイカー達の手によって、とても分かりやすいマニュアルに進化しています。

Twitterにも正直にコメントしましたが、部品は思ったより多かったです。外観から想像できる部品、例えばカバーやサーボは予想できるのですが、ベアリングやネジは細かく見えにくい部品なので、いざ目にするとややボリューム感がありました。モノづくり初心者には、作る前から少し難易度を感じさせます。しかし、手順通りに組めばいつかは完成するので、見た目に惑わされず焦らず丁寧に作業すると良いです。

部品を一つずつ組み上げていきます。4脚なので、毎回それぞれ4つの構成品が出来上がることになります。まだこの段階では4つとも同じように組めばよいのですが、この先になると、前後左右で向きが変わるので注意しなければいけません。

1時間30分が経過しました。類似部品を探したり、方向や種類を確認するのに意外と手間取ってしまいました。ネジ類は小袋に仕分けられていたのですが、最初の段階で別途小皿にうつしておいたりすると、もっと効率的だったかもしれません。

ところで、私はMini Pupperの脚部に使用されているスラストベアリングをとても気に入りました。こんな小さな部品、普通にAmazonで売られているのね。3Dプリンタで作る小物作品などに活用できそうです。強いて言えば、逆に小さすぎて紛失しそうなのが難点でしょうか。

いよいよ、左右の足が組み上がってきました。全体像が見えだしてくると気持ちが高揚してきますね。しかし、ここから配線や基板の取り扱いも含まれてきますので、勢い余って間違えないよう、気を付けなければなりません。

サーボモータの配線は接続箇所が決まっています。しかし番号がありませんので、自分で目印をつける必要があります。

一般的なロボット組立の場合は、よくマークチューブを使用したりしますが、簡易に済ますならコネクタ部に番号シールを貼るだけで良いかもしれません。

お腹の部分にはバッテリーが装着されています。なかなか良いフィット感でした。また、ラズパイも組み立てましたがこのタイミングでSDカードを差し込みます。

SDカードには事前にOSを書き込んでおく必要があります。組立タイムアタック挑戦者は注意が必要ですね。最初に準備しておかないといけません。

そして最後にカバーを付けます。やはりカバーがあるだけで印象が変わりますね。結果、約3時間で組立は完了しました。

カバーのSTLデータは公開されているので、自分が好きな色のフィラメントで3Dプリントするのも良いでしょう。自分だけのオリジナルカラーMini Pupperを作ることができます。

動かして遊んでみた

まだROSで動かしたり、センサをつけたりはできていませんが、簡単にコントローラーでは動かしてみました。ちなみに最初に動かす前にはキャリブレーションが必要です。うまく歩行する為には、このキャリブレーションがすべてを左右します。また、事前にバッテリーは充電しておきましょう。

下記動画は10FPSのGIFアニメーションなので、足さばきをうまくとらえることができませんが、見事歩くことができるようになりました。多方向に滑らかに関節が動くので、ただコントローラーで動かすだけでもとても楽しいです。自律移動ができたら、さらに生物ぽさが増してより愛着が湧くことでしょう。

画像5

Lidarやセンサは大変そうだったので、代わりにKirobominiを座らせてあげました。お尻の部分を両面テープでくっつけています。これもまた、相棒感があってとても親しみが湧きますね。

画像4

Mini Pupperの表情は、GIFやPNGで追加可能とのことでした。これも画像を用意するだけで簡単だったので、一部界隈で有名な魔獣キングスパニエルちゃんを表示してみました。とても愛らしいですね。

画像6

Mini Pupperは作っても楽しい、動かしても楽しい、とても素敵なロボット犬でした。もちろんペットのような楽しみ方もできますが、ラズパイに各種センサを拡張することで、より高度で本格的なロボットプログラミングにもチャレンジすることができる、学習用ロボットとしても最適だと思います。

また、シミュレーター上でも動かすことができるため、本体を所有していなくても開発を体験することができますし、シミュレーションの結果を実機に反映することもできます。

また、実は私自身もロボット犬を自作したことがあるのですが、沢山のロボット犬を並べてレースさせたりしても楽しそうですね。早く走れるロジックを追及したり、足回りのハードウェアを工夫したり、技術を磨く良いキッカケになりそうです。

画像7

2022年2月24日現在、MakuakeにおけるMini Pupper支援は、日本のクラファンロボティクス部門において、応援購入総額が2,300万円を突破し、史上最高金額を更新したそうです。

こういった素敵なロボット犬の登場をキッカケに、多くのメーカーやメイカーを巻き込みながら、よりロボットやモノづくりが身近になってくれる世界になると良いですね。

参考情報

Mini Pupperは、すでに日本の多くのメイカーの手に渡っており、各種機能紹介やノウハウの共有が行われています。本記事では触れなかった詳細事項については、是非以下の方々の記事をご覧ください。

tiryohさん

でべさん

にっしゃんさん

HomeMadeGarbageさん

ちむさん

Tech Life Hackingさん

記事が探せなかった凄い方々も多くいますが、Twitterで#minipupperで検索すると沢山出てきて楽しめます。

以下、技術系サイトでもレビューが掲載されています。

ロボスタ

@DIME

GADGET HEAD

TECHABLE






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?