たばこの話

好きな銘柄は、好きな人が吸っていたたばこの銘柄でした。

初めて吸ったのは、なんとなく。もう覚えていないけれど、キャメルのベリーシリーズがレジ横で販売されていたからそれと百円ライターをコンビニで買った。吸い方もわからなくて味も不味くて煙は臭くて、すぐに火を消した。

ネットでできた友達が吸っていたから、その6人で遊ぶときにもらいたばこをした。楽しそうなあの子たちにつられてまた買ってみた。バイト先の人が吸っていたし友達も吸っていたから、その影響でこっそり少しずつ吸い始めるようになった。

その友達ともあまり会わなくなって、吸うこともやめた。

新しく始めたバイト先では、当たり前のようにほとんどの子が喫煙者だった。その頃からだろうか、本格的にたばこを吸うようになったのは。
いつの間にか、ちゃんと喫煙者になっていた。

紙たばこからアイコスになり、そしてまた紙も吸うようになった。起きたらまず一服。食後にはもちろん吸うし、仕事の合間にも休憩のたばこ。生活の一部になっていった。

好きだった人が吸っていたのは、アイコスのミントだった。その銘柄に変えたのは、一度だけ遊んだ日の次の日だった。未練みたいに聞こえるかもしれない。けれど、実際においしかったのも、事実だった。メンソール感が強すぎないものが好きだった。甘みのあるものも好きだった。だから、たぶんあの人が吸っていなくても、ミントを吸っていたらずっとこれだったんだろうな、と思う。なんて、言い訳がましいか。

紙たばこを吸うあの人からもらいたばこをした。久しぶりに吸う紙は少し緊張したけれど、やっぱりよかった。ウィンストンのキャスターと、ハイライトメンソール。わたしが昔吸っていた銘柄。紙たばこもいいな、と思って残っていた数本を吸い終わってからハイメンを買い直した。おいしかった。好きな女の子が吸っていて憧れから吸い始めた銘柄。メンソール感が強すぎなくてたばこの味も楽しめるもの。結局わたしは好きな人の影響ばかり受けてしまっているのかもしれない。

たばこを吸うと、少しだけ自分に戻れる気がする。数分間だけ、意識を遠くへ飛ばせる気がする。わたしがたばこを吸い続けている理由なんてそう大したものじゃない。暇つぶし。リセット。スッキリさせるため。考え事。かっこいいから。好きな人を思い出す。好きなことを忘れない。違う自分になる。なんでもいい。

音楽を聴きながらよくたばこを吸う。そんなときはバラードかミドルテンポの曲。何も考えずただ身を任せて、音を聞き煙を吐き何もない空間を眺める。そんな時間があってもいい。

夜空を見上げながらたばこを吸う。月が雲に隠れたり光がさしたり、星が少しずつ視界にあらわれてきたり。煙が空に溶けていく。肌寒い季節には、吐く息が白くて煙なのか息なのかたまにわからなくなる。この世界に生きているのだと感じる。

生活の一部。生活をすること、それは生き続けていくということ。わたしは、生きていく中でたばこという嗜好品を、大事にしたいと思う。自分を大事にできないのならば、生活の一部であるたばこを、音楽を、大切にできるようになりたい。

気に入ったらサポートよろしくお願いします。