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推しのことが好きで、つらくて、浮気する

この特殊な感覚がわかるオタクはいるだろうか。

わたしは推しが好き過ぎてフラフラと他の配信者に浮気をしてしまう癖がある。
良くないことだと頭ではわかっているが、こうでもしないと推しへの大きくなり過ぎた愛情を止められないのだ。

と言っても、他の配信者にコメントをするとかリプを送るとか投げ銭をするとかそういう事は一切しない。
そういう愛を伝える行為は大切な推しだけにしたいから。
ただ配信を聴いて、動画を見て「ほう〜、この人いいじゃん」と思っているだけ。


わたしは独占欲が強くて、依存しやすい。
推ししか見れないようになってしまうと、わたしには推ししかいないのにって自分勝手な思考に蝕まれてつらくなる。

推しが「愛情全部ぶつけてよ。俺しか見ないでよ。よそ見しないで。」なんて言ってくれるなら喜んでそうするが、そんなのは妄想の話で現実はそうもいかない。
必要以上に重くなった汚い愛情は、応援とか期待とかの域を超えて推しにとってはただの邪魔な荷物でしかない。
わたしのせいで推しに迷惑をかけたり、嫌な思いをさせたくない。

だから、気持ちを分散させるという意味で浮気する。

だが、皮肉なことに推し以外にときめかない。
良いなと思ってもそれ止まりで、決してそれ以上の感情の揺さぶりがあるわけでも深く知りたいと思うわけでもない。
わたしの大好きな推しはわたしの感情をいとも簡単に揺さぶるのに。


推しの生配信が見終わった後は決まってセンチメンタルな夜を過ごす。
大体、夜中の1時頃に配信が終わるので、ネガティブなわたしのゴールデンタイムだ。

投げ銭をした同担に推しがリップサービスをしていたり、特に苦手な同担が構ってもらっていたり、自分のコメントが拾われなかったりすることがほとんどなので、推しに爆弾のようなクソデカ感情を抱えているわたしはいつも悲しくなる。

それが彼の配信スタイルだと言われればそれまでだが、推しのことが好きすぎるわたしにとって同担と推しの絡みなんてこれっぽっちも見たくもないものであり、やっぱりつらい。
ファンと絡んでいる推しが嬉しそうで微笑ましいなんてそんな生ぬるい感情ではいられない。もっと汚くて真っ黒でドロドロしている。


そういうときに、わたしには推しだけじゃないって自暴自棄になって他の配信者を求めて配信サイトを徘徊する。
推し以外の配信者にもドキドキしてみせたいから、少しセンシティブな配信をしている人のところに行ってみたりもする。

でもやっぱり推し以外にときめく事はない。
胸がギュッと締め付けられて、鼓動が早くなる感覚を味わうことはない。

またそれが独りよがりで悔しくて他の配信サイトで動画を漁って…なんていう負の無限ループだ。


けどそれで良いのだと思う。

結局わたしは推しのことが一番好きだと、わたしには推ししかいないと改めて確認したいだけなのかもしれない。
他の配信者にときめかない自分を、やっぱり一途なんだと認めて褒めてあげたいだけなのかもしれない。


世の中には推しへの大きくなり過ぎた愛情を胸の中に抱えているオタクがどれだけいるんだろう。
この思いを全てぶつけたら絶対に迷惑になってしまうってわかっていて、無理やり気持ちを押さえつけているオタクがどれだけいるんだろう。
みんなどうやってその感情と付き合っているんだろう。

でもそういうオタクは、みんな優しい心を持っていて繊細で真面目で思いやりのある人なんだろうなと思う。

推しのことが好きすぎるが故に推しを貶したり、掲示板や捨て垢等で同担を晒し上げて攻撃を仕掛けるようなオタクもいるのだから、本来なら自分の感情をむき出しにして生きたって良いはずなのに、そういう害悪行為に走らず、当たり前のように自分より推しを優先できるのは凄いことだ。

まあ、その気持ちを押さえつけるために他の配信者の元へフラフラ行ってしまうのはいかがなものかと自分でも思うが、推しに迷惑はかけてないから良いか。


いくらセンチメンタルな夜だって、推すのがつらくなったって、推し以外の誰かに揺らぐ事はないしやっぱり一番好きな人であることに間違いはない。

「俺だけ見ててよ、全部ぶつけてよ」って言ってもらえたらどれだけ幸せだろう。
そうしたら、もう絶対によそ見なんてしないし推しに等身大の好きを伝えられるのに。

でもそんな日は絶対に来ないから、今日も明日も明後日もわたしは他の配信者の枠や動画を徘徊する。
それで、やっぱり推しが一番かっこよくて大好きだって再確認する。
推しのことが大好きだけど自分の心を壊したくはないわがままなファンのわがままな行動だと思って許してほしい。
絶対に推しの元に戻ってくるから。


だけど、だけどもっとわがままを言って良いなら、やっぱりぎゅって捕まえていて欲しい。よそ見できないように。


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