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褒め上手なひと

自宅最寄りのコンビニ。
店員さんは、お昼は敏腕マダムたち、夜はジャニーズ系のおそらく大学生集団によって構成されているが、どの時間帯に行っても接客がとても素晴らしい。

きびきびとしていながらも笑顔、快活。

夜の部のジャニーズ系大学生は、仕事仲間どうし楽しそうに雑談しながら作業しているが、その光景も微笑ましく、レジに向かうと元気な声とともに飛んできてくれる。

レジを打っていただいて自動ドアを抜けると、いつもあたたかい気持ちになるもの。

しかし、「いつも素敵な接客ですね」と褒め称えたい気持ちを抑えながら「ありがとうございます」と軽く会釈をして商品を受け取るのみ。

わたしは「テリアメンソールの女」(注:テリアメンソール=電子たばこiQOSの銘柄)と店員さんから陰であだ名をつけられていてもおかしくないほど高頻度でそのコンビニに足を運んでいるので、今さら称賛をおくるのは照れくさいという理由もあるけれど、基本的に、親しい間柄でない人を直接、しかもいきなり褒めることはわたしにとってなかなかハードルが高いものだ。
どうしても少しの恥ずかしさが邪魔をして、ためらいをおぼえる。
急に仕事ぶりを評価しようもんなら驚かせてしまうでしょうよという懸念もある。

わたしの好きだった人は、引っ越しをしてもすぐに「行きつけのお店」ができていた。

彼は、初めて行く飲食店でも料理が素晴らしければ「いやぁ美味しいっすねぇ」と、マスターらしき人に声をかけるのだ。

やはり褒められたマスターはうれしそう。
そこから「ご近所なんですか?」という風に会話が生まれ、次第に行きつけのお店となっていくのだ。

「いつもマスターと仲良くなるからすごいよ」と好きだった人に伝えたことがあるが、
「自分が客側やけん愛想よくしてもらってるだけよ、自分が下の立場のときはこうはいかんけん」と謙遜する彼。

さらりとカジュアルに他人を褒めることができて、自分の居場所を広げていく。

わたしはきっと、彼のそんなところがいちばん好きだったのかもしれないなぁと甘い感傷に笑みがこぼれつつ、今日もまたジャニーズ系大学生店員に称賛をおくることはできず、テリアメンソールを片手にコンビニをあとにするのであった。

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