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夢は箱からつくるべきではない

久々にご質問をいただきました。

今年が大学受験の年だった方からのご質問です。まずはひとまず、受験本当にお疲れ様でした。そして、高校3年生という若さで研究者という素晴らしい夢をお持ちなこと、非常に尊敬します。

一文系院生でしかない私がお答えするなんて恐縮ですが、私なりにご質問にお答えしてみようと思います。

大学教員になるためには学歴はどの程度関係あるんですか?

結論からいうと、「大学教員になること」と「学歴の高さ」には一定の相関はあるかもしれませんが、関係があるとは一概には言えないと思います。たとえば東大大学院を卒業しているからといって必ずしも研究者になれるというわけではありません。

なぜなら、研究者は「学歴」で評価されるというよりも「研究成果」で評価されるからです。たとえば査読付きの論文を書いた数とか、学会で賞をとった数とか、自分が書いた論文の被引用数とかだと思います。ここは大学生が民間企業に就職する際とは大きく異なる点です。

では、研究者は具体的にどのようなステップを踏んで大学に就職するのか?

研究者を志望する人はこまめに公募を確認し、条件が合致する公募があればいくつか応募します。中には一つのポストに対して数百件の応募が来ることもあるそうで、非常に競争率が高いです。ちなみに公募をチェックできるのはこちらのサイトです。

そのため大学教員になれるかどうかは、「自分がポストを探しているときに、自分の研究テーマが大学が募集する教員の研究テーマとマッチするかどうか」によって決まってくるということになります。つまり、実績だけでなく運やタイミングも関係してきます。

さらに、仮にポストに就くことができたとしても、若手のうちは有期つき雇用となってしまい、数年後また次の仕事を探さなければ職を失ってしまう可能性があるという非常に不安定な雇用形態となります。

ーーここまで書いてみてやっぱり絶望せざるを得ないのですが(笑)、私も研究者になりたいと思っていろいろ調べたことがあるので、その時得た知見からいうとこれが現状です。

受験に失敗して前期試験で落ちてしまい、立命館大学が浪人かで迷っています。

これに関しては、質問者さんが“何を目的に大学へ行くのか?”という問いから、自ずと答えは見えてくるのではないかと思います。

もちろん目的は一つではないと思うのですが、たとえば「研究者になる」ことを第一目的とするのであれば、大学名や偏差値等で進学先を選ぶのではなく、研究したいテーマを決めて、そのテーマの第一人者である先生あるいはそのテーマと関連する先生が所属する大学に進学することが一番ベストだと思います。

ーー✂︎ーー

以上でご質問にはお答えしたので、ここからは個人的にお伝えしたいことを書いていきます。

noteで度々書いているように、時期としては質問者さんよりは遅かったものの、私もかつては研究者になりたいと思ったことがありました。

しかし現代において研究者として大学に就職することは、以下のような理由で狭き門となっています。

・大学院重点化計画によって、大学院進学者が増加した。
・少子化によって今後大学自体が潰れていく(減っていく)可能性がある。
・大学教員のポジションが空くのを待つポスドクで溢れている(「博士が100人いる村」というのがわかりやすいです:https://www.youtube.com/watch?v=Liw1-Zjd-zo)。

研究者になるための“絶対的な条件や方法”は、はっきり言ってないと思います。しかし、ネットやX等で調べるといろいろと情報は出てきます。

・研究者を多く輩出している研究室を選ぶ(特に国立大学は研究者養成機関としての特性を持つので有利な傾向)
・教育歴(非常勤講師として勤務した経験など)を持つ

また、私は結局まだ読んだことがないのですが、こちらの本がおすすめです。

https://amzn.asia/d/8jTkRVL

さらに文系に限って言えば、たとえ大学に研究者として就職することができたとしても、その後研究をするうえでは文系研究者は理系研究者と比較して研究費を取得することが難しい傾向にあると聞いたことがあります。

私も無知なので詳しくはご自身で調べていただきたいのですが、少なくとも日本については社会科学系の研究よりも自然科学系の研究の方が重視されている傾向にあります。たとえば、今現在文部科学省において重点課題とされている研究テーマは以下のサイトに記載されています。おそらく自然科学系が中心となるテーマがほぼですよね。

一方で個人的には、さきほど“自然科学系が中心となる”と申し上げたように、こうした研究は文理融合で進められるべきなのではないかと思います。たとえばヒューマンインターフェースを用いて人の心に働きかける技術開発を行うのであれば、当たり前ですが単に開発するだけでなくその効果を測定することが必要であり、そのためにはヒューマンインターフェースを専門とする研究者だけでなく、心理学の専門知識を持った研究者が参画する必要があるといえます。

夢は箱からつくるべきではない

最後に、私が尊敬する人からいただいた言葉をご紹介します。

私がある人に研究者になりたいと相談したとき、「箱からつくってるよね」と言われました。

つまり本来は、研究者になることが目的なのではなく、研究者になって何がしたいのか?

〇〇を実現したいから、そのために研究者という職業を利用する」というのが本来のあり方であり、研究者になることをゴールにするべきではないということに、この言葉から気づかせていただきました。

この考え方に似たことはこちら↓のnoteにも書いているので、もしご興味があればご覧ください。

質問者さんがご納得のいく形で進路を決めることができるよう、陰ながらお祈りしています。このnoteがその一助となれば幸いです。

ーー 質問箱はこちら↓ ーー


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