ZAZEN BOYS の『ZAZEN BOYS4』を聴いてみた編

こんばんは、内山結愛です。

今回は「向井秀徳さん特別編その②」として、ZAZEN BOYS の『ZAZEN BOYS4』を聴いてみた編をお届けします。

メロディー不要の、「This is 向井秀徳」という抑えきれない存在証明。

シンセサウンドでより一層SI•GE•KI的に、独自の空虚な世界観を表現した一枚です。

是非読んでみて、聴いてみて下さい!

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1.Asobi

空間が歪んでいくようなシンセの音。冒頭から唱えられるキラーフレーズ「諸行無常」。電子音と悲しげなピアノの旋律に、バリバリな向井節が炸裂しているのジワジワくる。歌というよりも詩の朗読。素っ頓狂な抑揚が面白い。気持ちの良いダンスミュージック。ハウスの要素もある。無機質なサウンドと淡白な4つ打ちが、無常感と切なさを感じさせる。「遊び足りない」は、向井さんの心の叫びなのかもしれない。そういった心の叫びが、無情な音の中に消えていく様はどこか虚しい。


2.Honnnoji

「本能寺で待ってる・・・」と、本当にずっと待っている歌詞。”ずっとずっと”の言い方のクセの強さ。「この曲の歌詞を内省と考える奴は流石に病院に行った方がいい」とまで言っちゃう向井さん面白いな。鋭角ポストパンクサウンド×変拍子なファンク、めちゃくちゃ格好良い。ひたすら繰り返され、癖になるギターフレーズ。3:45〜雰囲気が一変。「Life in the cold water」でめちゃくちゃニヤニヤしちゃった。ZAZEN BOYSにメロディーなど要らない。

↓みんな何かに取り憑かれたように演奏して居る姿がまた格好良い。グルーヴ感だけで意思の疎通をしているような一体感。

3.Weekend

淡々と進んでいくイントロに、ノイジーなギターが度々斬り込んで来る。この曲も裏声を多用して歌っている曲。ねっとりとした印象。中盤からクラップが入り、シンセで華やかポップな雰囲気へ。3:26〜ギター大暴れ、鳴りまくり。しかし拭えぬ空虚感。

WEEKENDというバンドの『La Variete』に影響を受けた曲らしいが、「ヴォーカル=アリソン・スタットンのワンピース姿にグッときて作った」という向井さんらしいエピソードにグッときた…


4.Idiot Funk

これだけ不規則なブレイクや変拍子を使ってるのに、レコーディングでは殆どライブのように、全楽器一斉に演奏し、一発録りって凄い。幻想的なシンセが空気を和らげる。ヤケクソな歌詞。どんどん歌唱が過激になっていく。縛り付けるものが何もない自由さ。どんどん音数が減り、奇妙になっていくドラム。

5.Memories

ハスキーでしゃがれた裏声で叫ぶ。「This is 向井秀徳」だと言わんばかりに、同じ言葉を繰り返す技をZAZEN BOYSでは容赦なく行なっている気がする。軽快でハッピーオーラ全開のコーラス。甲高いギターの音色好き。複雑でテクニカルなリズム。それでいてキャッチー。この曲はわりかし「歌」っぽい。

6.Fureai

イントロめちゃくちゃ格好良い…。幻覚みたいなギターリフ。向井さんは叫びまくり。1:20〜夢見てるみたいな感覚。向井さんの魂の叫びだけが現実。複雑なリズム気持ち良すぎる。右耳から左耳へと「ふれあい」「肉体」と囁かれる不気味さ、面白くなってくる。

7.Taratine

勢いよく打撃音のように叩かれるドラム。向井さんの絞り出す一文字を待つようにリズムが刻まれる。読んだ本『三栖一明』の帯に、「これは私の恥のアーカイブ集である」と書かれているが、歌詞には「恥のアーカイヴス」という言葉が出てくる。錯乱と虚無が出たり入ったり。無音の強調が言葉を強くする。エキセントリック。最後、子供みたいに「今日はもう寝る」と呟くの可愛い。

8.The Drifting/I Don’t Wanna Be With You

ハウス感のあるイントロ。懐かしく温かみのある電子音。ボーカルに強くディレイが施されている。1:50〜どんどん意識が遠のいて行き、電子音の世界へ。時々来るZAZEN BOYSのダンスミュージックな曲、かなり気持ちが良い。3:00〜ここら辺だけ流したら、ZAZEN BOYSだと気づかなそう。お洒落。7:00〜様子が変わり始める。太くてゴリゴリ地鳴りするベース格好良い。10分越えの大作。
シングルとして出されていた原曲が、このアルバムでハウス風にアレンジされた。

↓シングルバージョン。2:47あたりの向井さんの表情が怖すぎる…いや、みんな怖い。それが面白い。


9.Sabaku

切なくも美しいイントロ。ここまでほとんどメロディが存在しなかったから、歌らしい歌が入っているの珍しい。殴打するみたいに打ち込まれる生ドラムのキック音。電子音と生のコントラストが切ない。アルバムを通して空虚感が付き纏っている。透き通っていて、優しい。「割と・・・さびしい」という最後の呟きで、空虚感が現実のものとなる。

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↑本来クレジット部分に入れられるべき文言をジャケット全面で打ち出したデザインはHowlin' Wolfのジャケットを参考にしている。

↓この男の名前は「ディレイ・マン」。向井さんがギガ・ディレイDD-20を被っている。

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♦︎ ナンバーガール以降の向井秀徳、ZAZEN BOYSの歴史や音楽性、活動について

ズバリ”青春”であったナンバーガール時代に決着をつけ、一度リセットして前に進む気持ちでアヒト・イナザワと共にZAZEN BOYSは2003年に動き始めた。

メンバーは向井秀徳(Vo・G・Key)、通称「カシオマン」の吉兼聡(G)、MIYA(B)、MCで必ず「柔道二段・松下敦」と紹介される松下敦(Dr)。所属レーベルは、向井秀徳自らが立ち上げた「MATSURI STUDIO」。

「常に肩に力が入っている状態。イライラしていたし、今もイライラしてる。」と言わしめるほどの熱い気持ちで、ZAZEN BOYSは突き進んで行く。

キーワードとなる、繰り返される諸行無常と自問自答の向井節には、どうやらインスピレーション元があるらしい。

「ミッシー・エリオットっていう女性ラッパーがいるんだけど、この人は毎回何度も何度も念を押すように「This is Missy Elliott!」って叫ぶ。「ミッシー・エリオットを、私自身から発信するぜ、バカヤロー」みたいな感じで、念を押し過ぎだけども、それがカッコ良いなと思って。それで私も「This is 向井秀徳」って何度も何度も言おうと思って。知ってる人いるかもしれないけども、常に言い続ける。繰り返し言い続ける。」
(『三栖一明』p260-261)

1stアルバム『ZAZEN BOYS』収録の「自問自答」では、すでに「繰り返される諸行無常」、「よみがえる性的衝動」「冷凍都市の暮らし」という、以降の作品でも延々と繰り返される向井節が全て揃い踏みしている。

2004年に2ndアルバム『ZAZEN BOYSII』が完成。ZAZEN BOYSと並行して、向井秀徳アコースティック&エレクトリックの活動も開始。テレキャスター一本だからこそ、ストレートに響く言葉の数々が心に刺さって抜けない。初めて聴いても感じる懐かしさ…

とにかく人に自分をアピールしたい思いがあるそうで(本人も「ある種のビョーキだからしょうがない」と語っている)、突然下北沢駅前に弾き語りに出向くこともあったらしい。

↓若者たちに弾き語りを披露してもらい、タバコ片手に満足げな向井さん。素敵…そして贅沢な空間。

「まぁ根本的に考えると、やっぱり他人に何らかの繋がりを持ちたいんだろうね。「俺がここにいる」ということをまず知らしめたいたいうか、そういうことをしたいわけですよ。」(『三栖一明』p255)

2006年には『ZAZEN BOYS III』、2008年には今回紹介した4thアルバムの『ZAZEN BOYS4』をリリース。段々とテクニカルに複雑に、それでいてキャッチーを貫く。止まることを知らない向井節!

2010年にはLEOの今井とのユニットKIMONOSが始動。”我”の自問自答から”汝”への寄り添いへ。

ZAZEN BOYSや向井秀徳アコースティック&エレクトリックが“我”というものだとしたら、KIMONOSでは、LEOの今井と私・向井秀徳が寄り添ってやろうという感覚でしょうね。(『三栖一明』p314)

↓KIMONOSでは幽霊的な話や幻を歌う歌詞が多く、電子サウンドの多用されていて、これまでの向井さんとは違う一面が楽しめる…!お洒落で心地良くも油断できない音楽性。

様々なアーティストととのコラボ活動も盛んになる。これまでコラボしたアーティストは椎名林檎さん、iLL(ナカコー)さん、七尾旅人さんなど、ユニークかつ幅広い、豪華な顔ぶれ!

↓椎名林檎×向井秀徳-KIMOCHI
(椎名林檎さんが、向井さんの語りのたびにニヤニヤしたり、終始照れていて本当に可愛いし、二人とも楽しそうで色気ダダ漏れで凄い。)


2012年、4年の時を経て、より研ぎ澄まされた5thアルバム『すとーりーず』がリリース。

ただずっと変わらないことは、私が音楽をやる理由は結局コミュニケーション欲求なんです。
“自分“という存在を、少しでも多くの、どこの誰かも知らない人に、どんな反応でも良いから知って欲しいという欲求です。その感じはずっと変わらないけれども、年齢を重ねて時間が限られてくると、むしろ強くなっている気はしますね。(『三栖一明』p331)

2019年2月15日にNUMBER GIRLの再結成を発表。(!!!!!!)

2021年5月4日には日比谷野外大音楽堂で、ZAZEN BOYSとNUMBER GIRLの共演が決定。(ウォーーーー!!!!応募しました。)



今回はまたさらにボリューミーな内容でしたが、いかがだったでしょうか…!

今回も体力・精神共にガツガツ削りながら向きあって、とても勉強になったし、またさらに音楽が好きになりました!

改めて様々な角度から掘り下げることの楽しさを知り、内山レビューの幅が広がった気がしました!

そしてライブ行ってみたい!!!!!

生で見られる日を楽しみに、これからを過ごしていきます。


↓YouTubeで色々動画を見漁っていて見つけたおもしろ(最高)向井秀徳さん動画

・向井秀徳によるYUI「CHE.R.RY」のカバー

バスバスバラ〜♫聴くだけで元気が出ます。

・シャキーン! -サウンドファイターズ- -- 向井秀徳 (NUMBER GIRL / ZAZEN BOYS) vs 鈴木研一 (人間椅子)

朝7時のNHKでこの映像が流れたことが面白すぎる。「シャキーン!」は小学生の時毎朝見てました。

・向井秀徳 インスタントラーメンを語る 

本当に面白い…「これだラーメン」食べてみたい…

Best of ラーメン for me・・・最高。


『ディストラクション・ベイビーズ』や『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』など、映画内の音楽や、主題歌も手がけていてその活動の幅広さには驚きました。

何処まで行っても底なしの向井秀徳さん。

向井さんを見習って、内山も「This is 内山結愛」の精神で生きていきます。

ZAZEN BOYSもNUMBER GIRLも向井秀徳さんも、心から出会えて良かった!!!


次回は Black Flag の『Damaged』を聴いてみた編をお届けする予定です。お楽しみに…!

最後まで読んでくださり有難う御座いました!

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