川崎で仕事をした。

早い時間に仕事が終わったので
夕ご飯どうしよう？駅弁でも買うか？と悩んだ。
駅に向かうけど
止めて、居酒屋さんに入った。

ハッピーアワーだった。
得々晩酌セットとかそういうのがあった。
それにするか、と決めて
待つ。

すこし離れたところに
コントから抜け出したような人がいた。

グレーのジャンパー
ストライプのポロシャツ
スラックスとサンダル
無精ひげのおじいさん。

おじいさんは大声で大将と話をしている。
「今日はな、すんでのところで大勝さぁ！」
「言い間違えたからさ、ヤメヤメと言ったけど、ピンときてそのまま！」
「それが大当たり」
同じ話を多分何度もしているのか店員さんは苦笑い。
その後も延々と続く。

ビールとおつまみとか細々きて、狭い机がいっぱいになる。
呑みながらいつ帰ろう？と新幹線の予約を入れていたら
目の前におじいさんが立っていた。

「あんた！言い間違えて得するって信じるか？」と絡むので
「あるかもね」と答えると
何度もこちらとウエストポーチを見る。
勿体付けた表情で言う。

「見るかこの大金！！」とウエストポーチを開ける。

ぎっしりの千円札だった。

帰り支度をすると
「良かったら。肝臓にいいから」と
しじみのお味噌汁が出た。

しじみをお箸でひっかきまわしながら
なんとも言えない気分になった。

間からはからず掬う蜆取り
はざまから　はからずすくう　しじみとり