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『ザ・シューター』シーズン3 展開がグダグダになっても最後まで見続ける理由

by キミシマフミタカ
 

 途中まで、緊迫感のある面白いドラマだった。主人公はライアン・フィリップ。海兵隊の元狙撃兵(スナイパー)が、罠にはめられ、大統領暗殺計画の首謀者にされてしまう。彼はその濡れ衣を晴らすため、単身、陰謀組織との戦いに乗り込んでいく。シーズン2は、好敵手ソロトフとのスナイパー同士の一騎打ちで、それはそれで見応えがあった。

 ところがどうしたことだろう。シーズン3になったとたん、まるで別人のようにグダグダになってしまったのだ。「アトラス」という世界支配をもくろむ組織との戦いになるのだが、その「アトラス」自体がショボ過ぎるのだ。組織の内容も目的もよくわからない。誰のために誰と戦っているのかがよくわからなくなり、展開は目に見えて雑になる。

 致命的なのは、数キロ先の標的を一発で仕留めるスナイパーとしての技量が、まったく物語に反映されなくなってしまったことだ。必殺の武器を使わない、必殺仕置き人のよう。ただ殴り合うだけ、ただ殺し合うだけの、マッチョで単純なストーリー展開になり、契約があるからとりあえずシーズン3を続けています、の見本のようなドラマになってしまった。案の定、シーズン3で打ち切りが決定した。

 このドラマにはベストセラーになった原作があるという。2007年には「ザ・シューター」という映画も作られた。マーク・ウォールバーグが主演で、Netflixでも観ることができる。だがシーズン3を見終えた時点で、原作も映画も確認する気力がない。

 視点を変えれば、シーズンを重ねるごとにグダグダになってゆくNetflixのドラマと、どう付き合っていくのか? という課題に取り組むには、良いドラマだったと思う。

 なんとなく嫌な予感はしていたが、最終回は、収拾がつかなくなったストーリーを、強引に幕引きさせる展開になった。それを“衝撃の結末”と言うのなら、シーズン2までのドラマに失礼というものだろう。だが、Netflixの視聴者たるもの、どんなことがあろうとも、途中で挫折せず、最終回を確認する義務があるのでは? と思う。

 なぜなら、グダグダになったシリーズを、どう決着させるか。そこが脚本家たちの腕の見せ所であり、本領を発揮する場面であり、それを見届けることにワクワクするから。ある意味、あまりにも出来が良過ぎるドラマの最終回よりも、よっぽど刺激的なのだ。

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