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『愛の不時着』ー「ロマンチックな北朝鮮」をあなたに

by 輪津 直美

数週間前に見終わっていたのだが、どう書こうか思いあぐねているうちに、時間が経ってしまった。

まあ、一言でいって昭和の少女漫画である。もう、全てがてんこ盛りなのである。コメディ、恋愛、サスペンス、アクション、お涙頂戴。

ありえない設定、ありえない展開。

ベルばら、キャンディ・キャンディ、はいからさんが通るの世代(つまりおばさん)は、どハマりするかと思われる。

で、それはさておき、このドラマの一番の見所は、何と言っても北朝鮮事情なのである。

いろんな北朝鮮ウォッチャーが、ここは正しい、ここは正しくないなどあーだこーだいっているが、北朝鮮を舞台に恋愛ドラマが展開すること自体が画期的だ。

「北朝鮮」と聞いた時、誰もが思い浮かべるのは、太り過ぎの将軍様とか、チマチョゴリを着て絶叫するアナウンサーとか、一糸乱れぬ軍事パレードではないだろうか?

「愛の不時着」を見た後、あなたの北朝鮮イメージは、「背が高いイケメン将校」「美味しそうな北朝鮮家庭料理」「ネットはなくとも暖かいご近所づきあい」「北朝鮮美人」などに変わっているかもしれない。

このドラマは、北朝鮮のイメージアップにかなり貢献しているのだから、北朝鮮は感謝するべきだが、当局は「最近、南朝鮮(韓国)当局と映画製作会社が、虚偽と捏造に満ちた荒唐無稽で不純極まりない反共和国映画とテレビ劇を流し、謀略宣伝に積極的に力を入れている」と激怒しているらしい。

もしかしたら北の美男美女を求めて、モテない男女が「脱南」しないとも限らないのに。

冗談はさておき、このような共産主義国と資本主義国の男女が恋愛するストーリーというのは古典的で、監督エルンスト・ルビッチ、脚本ビリー・ワイルダーという豪華布陣の映画「ニノチカ」が特に有名である。

この映画は、ソ連の女官僚とフランスの金持ちプレーボーイのラブコメで、主演はグレタ・ガルボである。

グレタ・ガルボはそれまでシリアスな役が多かったため「あのガルボが初めて笑った!」のが売りになっていたようである。

1939年の映画であるが、今見ても古臭くなく、とっても面白いので、おすすめしたい。

「愛の不時着」は、さすがにニノチカのような超一流監督と脚本家が手がけているわけではないが、主演のソン・イェジンとヒョンビンの演技(特にヒロインのソン・イェジン!)が的確で、荒唐無稽な話を「見れる」ドラマにしている。

3話ぐらいから面白くなってくるので、ちょっと辛抱して見てみてはいかがだろうか?

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