スーツ

『SUITS/スーツ』日本版を見て、日本のドラマが20年以上前から何ら変わっていないことに驚愕した件

by  輪津 直美

今回は相当辛口なので、気分を害する人もいるかもしれない。はじめに謝っときます。どうもすみません。あと、アメリカ版「スーツ」のことはほとんど書いていませんがあしからず。

さて、この「スーツ」、言わずと知れた米国の大ヒットドラマではあるが、私が見始めたきっかけは、スタンフォード大学のウィリアム・ヴァンス先生が、英語学習教材として推奨していたからだった。

ところが、Netflixでは1話目に英語字幕がついておらず、「これじゃ勉強にならないじゃないか」と思ったが、なんとなく見ているうちにどんどん引き込まれ、結局2シーズン分イッキ見してしまった次第。

フジテレビがこのドラマをリメイクすると聞いて、全く期待していなかったが、少しだけ興味もあったので、昨日久々に「月9」にチャンネルを合わせてみたのだった(古い)。

ところが、だめだ…耐えられない… 15分でギブアップ。

話はほぼ本家と同じだった。それなのに、驚きのダサさ。

まず、演出がトレンディドラマの時代から何ら変わっていない。薄暗い照明、凡庸なカット割り、編集、音楽!

そして大げさな演技!特に、織田裕二!これほどまでにひどいなんて… ルイス(に相当する)役の小手伸也にもがっかり。わざとらしすぎて、ムズムズする!まだジャニーズの中島くんの方が、変に小細工せず素直に演じている分マシだ。

どうしてこうなるのか。

恐らく、テレビ局の電波利権が元凶なのだ。

「なんでドラマの出来不出来が電波利権とカンケーあるの?」とお思いかも知れないが、大いに関係あると私は信じている。

地上波テレビというのは免許事業であって、総務省の許可があって初めて営業できる。しかし、新規に免許を得ることは非常に困難で、現在テレビはNHK+キー局5つの寡占状態である。

従って競争が起こらず、各局似たような内容となっている。

「こっちは視聴率の1%の上げ下げにしのぎを削ってんだよ!スポンサー獲得がかかってんだよ!」とテレビ局社員からお叱りを受けそうであるが、そんなものは他の産業からすれば、大甘もいいところなのである。食品業界や家電業界などのメーカーが、商品開発や売り上げを伸ばすためにどれだけ苦労しているかを思えば、テレビ業界の番組制作なんて屁みたいなものだ。

異論は認めない。私は以前テレビ局に勤めていたため、実態はよくわかっているつもり。

ゴールデンタイムの視聴率が一桁前半になれば、番組は打ち切りになることが多いが、ただそれだけである。視聴率が悪いからと言って、テレビ局が倒産しそうになったとか、リストラを行ったという話は聞いたことがない。

相変わらず局の社員は高給取りで、横並びのつまらない番組を下請けの制作会社に安い金で作らせているだけなのだ。

まあ、さすがに「月9」は制作会社がパッケージで納品する「完パケ」ではない、いわゆる「局制作ドラマ」で、チーフディレクターも局員が務めているだろう。しかしそれにしてはお粗末な出来としかいいようがなく、これでは、競争がないぬるま湯世界に長年浸かってしまった弊害だと思われてもしかたがない。

テレビからはたまに、「半沢直樹」とか「ドクターX」などのヒットドラマも生まれるが、これらは水戸黄門と類似した「様式美」がウケているだけで、アメリカのヒットドラマのように、脚本がいいとか、演技がいいとか、演出がいいといった評価とは別物だと考えなければならない。

日本の映画産業が斜陽になった1970年代、テレビマンたちが「これからは俺たちの時代だ!」とギラギラしていたであろうあの時代は、もう戻らないのだろうか。



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