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“フクモリの味”の足跡

こんばんは。フクモリです。

6/1からお店を休業し、当初予定していた7/12再開の日にお会いできることは難しく、当面の間、フクモリはお休みをいただくことになりました。

長期間お店を閉じていると、わたしたち自身もだんだんと“フクモリの味”から遠ざかっていってしまうような、そんな気がしています。走り続けた日をゆっくり振り返る機会ととらえて、今回は“フクモリの味”の足跡を辿ってみようかと思います。

フクモリの定食スタイル

フクモリで提供しているのは、シンプルな山形の味です。これまで取材などでもお話をしていますが、フクモリは山形にある三軒の旅館が共同経営者でもあります。上山の葉山館、天童の滝の湯、庄内の亀やさんです。

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始まりは三軒の旅館に食材を届けている生産者を紹介してもらったことでした。有機米の生産者である井上農場さんや、伝統野菜の作り手、酒田漁港からの新鮮な魚や、山形牛、平田牧場さんの三元豚。そこで、山形の土地が育む美味しい食材を知ることになったのです。

同時に、山形は北の寒い土地が育んだ保存食の必要性から、醤油や味噌、麹などの発酵調味料にも独自性を持っていました。

そして、三軒の旅館はそれぞれの土地に根付いた食材や調理法を大切にしていました。豊富な食材と、その土地が持つ独自性の高い調理法。これらをシンプルに組み合わせてシンプルに定食として提供する。フクモリの定食スタイルは、食材の個性をそのまま活かしたものにしようと決めました。

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美味しい山形の食材を、奇を衒うことなく、切る、焼く、煮るなどのごくごく素直な調理方法の組み合わせで提供する。

凝った料理や目に刺激的なスタイルを追わず、食材の良さを全面に打ち出すことを大切にする。「体に優しい」「健康的」などフクモリで提供している料理に対するイメージは、こうしたフクモリのスタイルからきているのではないでしょうか。

山形の食材の良さとは

「食の王国」とも呼ばれる山形は、大きく4つのエリアに分類されます。そのため、山形の「だし」ひとつとっても考え方は異なります。

山形のだしは、ナスやキュウリ、茗荷を微塵切りにして昆布や調味料と和えた山形の伝統的な料理です。例えば天童の「だし」は、キュウリやナス、ネギなどと醤油や昆布とを和えて粘り気を加える一般的なスタイルですが、上山の「だし」は、とろみや粘り気はなく、キュウリやナス、ネギなどを微塵切りにしています。

同じ料理でも、エリアによって異なるのが特徴的で面白いですよね。ほかにも、山形を代表する郷土料理の芋煮も、内陸は醤油味、海沿いでは味噌味と味付けが異なります。フクモリではどちらの味の芋煮も提供しており、山形出身のお客様が来店された際には、出身地による違いを楽しめるという点で喜ばれています。

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山形県のなかでも、エリアによって食材や調理方法が変化するのは興味深いですし、その違いはフクモリの提供価値のひとつにもなっていると感じます。

カフェとしてのフクモリの在り方

フクモリの紹介をする際、カフェ兼定食屋としてお話をします。実際、定食や山形食材を提供するダイニングとしての側面が強いですが、元来はカフェです。そして、オープン当初から提供しているコーヒーに、こだわりを持っています。

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提供している豆は、10年の間に試行錯誤を繰り返し、現在は湘南の著名なロースターである27 coffee roastersさんにブレンドしてもらったフクモリブレンドです。深入りで、酸味よりもまろやかな苦味に焙煎された味が特徴。

フクモリオリジナルの「ホットケーキ」や、フクモリスイーツとして13年間定番である、山形の名産のだだちゃ豆をつかった「アル・ケッチァーノ」さんのロールケーキとよく合うコーヒーです。

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ほかにも、自家製のジンジャエールやほうじ茶ラテなど、オープン当初からオリジナルのカフェドリンクを数多く提供しています。根強い人気のある「クリームソーダ」では、季節の山形フルーツを使ったフレーバーもご用意。デザート的なドリンクを装い、昔懐かしいカフェや喫茶店の一品として楽しんでいただけるメニューです。

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フクモリのカフェとしての在り方は、オリジナルのドリンクとオリジナルスイーツをゆったりした空間と時間のなかで楽しんでもらうことにあるのです。

フクモリとお客様にとって心地良いアップデートを

フクモリの味は、少しずつ変化しています。大きく味を変えているわけではありませんが、調理方法や材料の変更が味を変化させている部分もあります。

長い月日で、馬喰町を訪れる方、フクモリに足を運んでくださるお客様が変化していることが大きな理由です。

オープン当初、近隣にはオフィスが多く、働く方々がランチやディナーでフクモリを利用してくれていました。10年以上の月日のなかで、馬喰町周辺にもオフィスがマンションに建て替えられるケースが多くなり、居住者が増え、家族でご利用される方も増えました。

訪れるお客様のフクモリでの過ごし方を考え、調理方法や、調達する材料を見直すことで、提供するスタイルを変化させています。

訪れる方の変化と、10年以上の間に育んだフクモリのオリジナルの部分を上手く共存させながら、少しずつアップデートをしているのが今のフクモリです。今後も、根底にある部分には手を加えず、ホッとできる場所であることは変えず、しかし訪れる方々の変化には寄り添っていくフクモリでありたいと、そう思っています。

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