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【独自データ】SaaS企業の業績達成力を大調査

月額有料マガジン「企業データが使えるノート」では、

「アナリストにSaaS企業分析・データ作成をアウトソースできる」

をコンセプトにSaaS企業に関するデータ・コンテンツを発信しています。
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最も業績達成力のある国内上場SaaS企業は ―――。

これまでSaaSはストック型の収益構造であるため業績が見通しやすく「投資家が好みやすいビジネスモデル」といった見方がなされてきた。

2016年ごろからSaaS企業のIPOが例年のように行われてきた中、果たして各社はその期待に応えることができたのか。

企業データが使えるノートでは、国内上場SaaS企業を21社を対象に2016年以降に開示された期初業績予想と通期実績を集計し、達成率や差分の有無、予想から乖離する際の要因をまとめた。

* 2016年から取得可能な21社のSaaS企業データを独自収集した

詳細は後述していくが、先に結論を述べると、SaaS企業の業績達成率や予実精度は株価プレミアムを受けるに十分な安定性が見られた。

継続的な業績達成により株式価値を伸ばすSaaS企業がある一方、実績未達や下方修正により大きく株価を下げるケースも散見される。

スタートアップにとってIPOの最大意義は、資金調達による先行投資やM&Aの実行が可能となる点にあるが、株価の低迷によって打ち手が縛られる事態は避けたい。

スタートアップの予実管理に詳しい専門家の意見を交えながらSaaS企業の業績達成状況に迫っていく。

エムスリーやオービックが株式価値プレミアムを獲得した方法

今回の分析記事は、DIGGLE社が昨年12月に行った元外資系ヘッジファンド ポートフォリオマネジャー伊藤 潤一氏との共催セミナーから着想を得ている。

セミナーの要旨については、こちらのnoteでも同様の整理がなされており、スタートアップ関係者は一読の価値がある。

以下スライドでnoteの内容を要約した。

伊藤氏によれば、市場で特に評価が高い企業6社では「業績の安定性」そして「予実管理の精度」の高さに共通点があり、「厳密な予実管理による業績コミットの積み重ねこそ、市場から評価される(プレミアムがつく)最大のファクターである」と指摘している。

「また、実は上方修正などは短期的な材料になっても、それを頻発することがベンチマーク企業を目指す上で必ずしも必要でない(伊藤氏)」といった見方も一般的な投資家の認識とは異なり興味深い。

この分析と比較を行う形で上場SaaS企業の業績達成状況の実際をみていく。

*なお、伊藤氏は、同氏が運営を行ってきた東大金融研究会におけるSNS上での炎上などを発端に研究会の解散やCHROを務めていたクラウドワークスでの役職の辞任を行っている。企業データが使えるノートでは、そのような状況を認識しながらも、上記のnote記事において指摘がなされている内容は資本市場活用において有用であると考え、今回の記事の作成にあたっている。

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