PSYCHO-PASS3のアニメを見た時、よくわからない、が正直な感想だった。
主人公も変わって、初めましてのキャラクターが多い。知っているキャラクターの霜月も昇進している。状況が掴めなかったけど、何話見て行ってもそうなった経緯がわからない。
一期メンバーが出てきてくれなかったら離脱しそうだった、という人もいるのではないだろうか。主人公が変わったし、面白いというから見てみようという初見さんにはキャラクターの名前も内容も難しくてつらかったと思う。
劇場版を見た結果として、解決した疑問はあったし、『新しいことを描く4期に続くための一区切り』としてなら許容範囲だった。劇場版を見るか見ないかで、フラストレーションの残り方はかなり違うように感じる。

3期のアニメを見た時、まず敵の組織について印象的に繰り返される単語があるものの実情がわからない、というのがあった。
結果としてそれは3期のメインの謎ということになるのだろうが、梓澤の立場や目的が明確に頭の中で位置づけできず、もやもやしながら見ていた。

ラウンドロビンとビフロストとは

劇場版を見てわかったのは、
・法斑静火たちが動かしていたラウンドロビンは、シビュラシステムのデバッグシステムであり、そのためにシビュラから独立した状態であったこと
・ビフロストはそのラウンドロビンを運用する機関で、コングレスマン、インスペクター、狐の三層構造になっていること
これは、執行に焦点を当てた場合のシビュラにおける局長、監視官、執行官（猟犬）の三層構造と対になっているのだろう。
調べて知ったが、インスペクター（INSPECTOR）の意味は高位の警察官＝監視官。灼がドミネーターを使用する時、画面隅にINSPECTORと表示されることに気づいたのは、PSYCHO-PASS IN CONCERTの時だった。その時は、実は灼が敵サイドなのではと怖くなったが、そんなことはなかった。監視官を示すワードとして、表示されていただけだったのだ。

ラウンドロビンは、シビュラの権能が現実に及んでいる以上、デバッグのためには現実の事象に対処する必要がある。しかし、そのためにビフロストの構成員の犯罪係数が上がれば対処は困難になる。
だからこそ、役割は細分化される必要があった。そのための三層構造であり、これは舞台PSYCHO-PASS Virtue and Viceの『哲学的ゾンビ』とは違ったアプローチで、シビュラシステムの網を潜り抜ける方法と言える。

ラウンドロビンを取り巻く人々

ラウンドロビンもシステムである以上、シビュラと同じ問題に行き当たる。
システム内部や運用側に異分子が混ざっていては、運用効果が保証されないのである。
利害のためにシステムを悪用する裁園寺や、シビュラと同一化したいという目的を持った梓澤のような存在は、ラウンドロビンの当初の目的と方向性が一致しない。それだけでなく、ラウンドロビンがシビュラ社会に悪影響を及ぼしてしまう状況となった。
法斑静火が父に言われた為すべきこととは、（シビュラが完璧に近づいたために）不要となったラウンドロビンを停止させること。だとすると、おそらく彼の父は、純粋な開発側の人間だったと推測される。

灼の父の名刺にも狐のマークがあったが、前述のとおりビフロストに属すること＝悪なのではない。生前彼がしてきたことはほとんど明かされていないが、免罪体質の灼をシビュラから守るために記憶を消し、集団ではなく個の「灼」として生きてほしいと願う一人の父親だったことは、劇場版で描かれている。これが可能だったのは、シビュラシステムから独立したラウンドロビンを運用する組織の人間だからだろう。そうでなければ、シビュラの干渉から逃れられるとは思えない。

シビュラシステムの変化

集団的サイコパスを認めることとなった2期。
マカリナというAIの存在を認めた3期。
シビュラが人間という存在に、どこで線を引こうとしているのか、というのは、今後も一つのテーマになる。
シーズンを経るごとに変化していくのを見ていると、完全性を求める中で、いつかシビュラ自身を裁く道を進んでいるような気がする。

個人的に1期メンバーの活躍が嬉しかった話

ここから唐突に分析も何もない個人的な感想になるけど、狡噛さんと朱音ちゃんが（ホロだったとしても）桜の咲いたところで再会するのがめちゃくちゃいい。槙島を撃ったあの荒野で、荒れた異国の地で別れていた2人の再会から、ようやく余計なことを考えず、信頼し合える関係性に戻れて本当によかった。
縢くんが好きだったので、シビュラの正体に近づいていくときは心が痛かったけど、宜野座さんの狙撃がかっこよかったし、志恩さんとダンゴムシの活躍には手に汗握った。1期メンバーの頼れるところがとても好き。
今生きているメンバーだけでも集合して、4期で協力するところが見られたら嬉しいなと思う。