第13章 リフ島南の小さなバニラ農園 -カメラマンがバニラ農園と出会う物語⑦-
北から南へひたすら走る。
大体1時間半くらい走るとリフ島の中心地「ウェ市」に着く。
ここで、今回バニラ園を紹介してくれるという3人のおじさんが待っている。
特に白い髭を生やしたシモンさんという方が私が日本から来る前から事前に話などをしてくれていたおかげですんなりとお話をすることができた。
今回こちらの方々にもクチュームを渡した。
シモンさんは日本製の5本指靴下が気になってるとのことだったので2足プレゼントした。
彼らはリフのバニラをもっと広めたいと考えている農園です。
リフのバニラというと、地元にメゾンデラバニーという会社があります。
以前にも少しNoteで話しましたが、ニューカレドニア本島や空港のお土産、ネットで買えるリフ島のバニラは大体この会社のものだ。
リフはバニラを観光産業にしているため、ここメゾンデラバニーではツアー客に対してバニラの生産地巡りなどツアーもやっている。
ただ日本人は本当によっぽどのもの好きでないとリフ島には来ないので、オーストラリアやフランスからのツアー客が多いみたい。
さて、話を少し戻すと。
彼らは、【リフのバニラ】を広めたいと話しました。
これはどういうことかと言うと、
先ほど話したメゾンデラバニー社というのは、リフ島のバニラ生産者から収穫したバニラを集め、自社で加工をしています。
つまりは上記写真のように、農園は緑の鞘の状態で収穫した後、このままの
状態でメゾンデラバニーに売る。おそらく重さで買取価格などが変わるのでしょう。
加工を完成まで農園任せにすると、味・香りの品質の差が出ることを懸念して会社で一括して加工するということでしょうね。
さらにはリフ島だけでなく、隣のウベア島、マレ島で栽培されたバニラも全部集めていると言うことです。
そのため、リフのバニラ。と勘違いされやすいのですが正しい表記だと、
ロワイヨテ諸島産のバニラ。つまり生産者が誰かわからない混合されたバニラということです。
ここまで話すと勘の良い人はお気づきだろう。
彼は自分たちが大切に育てたバニラを、誰が作ったものか、どこで作られたものかも分からないで混合されて販売されることに危機感を感じている。
そのためパトリック氏は自分でバニラの協会を立ち上げて、仲間と共にリフのバニラを世界に発信したいと考えていた。
だが、生活をするにはお金も必要。
販売先がなければ家族を養っていくにはメゾンデラバニーにも売らないと生活ができない。
特に小さなバニラ園は体力がないので確実にお金になる方を選ぶ。
確かにそれは安定したレールの上を走っているかもしれない。
正しい選択だ。
だがそれが続くことによって、本当に良いバニラを育てていて誰がそれを評価してくれるのか。
ただMIXされて観光客用に販売されていくモノ売りになってしまって良いのか。
彼らはリフの子供達のことを心配していた。
大人になると働く場所を求めてリフを出る。
バニラを育てることに誇りを持たなくなる。
仕事に困らず大人になった子供たちが戻って来れるようにしたい。
そういう想いで自分たちの協会を作ったとのこと。
彼らの言うリフのバニラというのは、他国の同じプラニフォリア種のバニラと比べるとバニリンの量が豊富にあるとのこと。
島の太陽。
土壌。
穏やかな気候。
ココナッツの皮の再利用。
島にあるものだけで作られるから良いものが作られる。と。
良いものを作るには人の手が必要だ。
今ではバニラの加工を機械で行う国もある。
そのメリットは何か。
「短期間で仕上がること」
バニラは通常加工には半年から約1年くらいかかる。
一番大変なのが天日干しでの自然乾燥工程。
これに3ヶ月くらいかかる。
もちろん天候にも左右される。
その工程をもっと短時間に天候を心配しないで乾燥できるのが機械での乾燥。
この乾燥工程を現代に至るまで自然乾燥で手間暇かけていた長い文明の中で、人間が開発した楽に早く。乾燥ができるようになったのは生産者としても願ってもない発明だっただろう。
世界のバニラ輸出量1位である生産国。マダガスカルでは年間の生産量2022年で3,000tと統計が出ていることに対して、ニューカレドニアの国内の生産量は3tとのこと。
生産が多ければ多いほど、機械に頼って作業効率を改善することは良いことだと思う。その分品質のクオリティを維持するのはとても大変だ。
水分が抜けきれていないものにはカビも生えやすくなるし、
悪質なところは香りが少ないバニラに香料を表面に塗って出荷しているところもあるそうだ。
人の手が加わったものと機械で作られたものとでは価格も全く違うが、
品質も全く違う。
彼らの最高のバニラをこれから日本で紹介したいと思う。
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