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「コレラの時代の愛」(ガルシア・マルケス)を読んで〜読書感想メモ〜

2年ほど前、最初にステイホームを余儀なくされた頃、
たしか、毎回楽しみに聴いている「村上radio」で
家で何をするのかという話題になって
村上春樹さんが「コレラの時代の愛」を読み直したと言われたのを聞き、
いつか読もうと思っていた。

ガルシア・マルケスという作家を知ったのもこの時で、
先に「百年の孤独」を読んだ。
「百年の孤独」はじわじわと染み込んでくるような深い思索の波に静かな感動を覚え、
昨年読んだ本でもベストワンだった。

それに比べると、
「コレラの時代の愛」は、
読後に感動というものはなく、
むしろ主人公や彼が思い続けた女性について考え、呆然とした状態が続いた。
一人の女性を51年も思い続けるなどと聞いて
その人の愛がものすごく強く深くて崇高なもの、と想像していた。
最後は成就したのだから、愛の力は素晴らしいとも捉えられる。
けれど、率直な感想は
「人間の執念深さ、愛というものの不確実さ、人間の気まぐれさを見せつけられた」だ。

登場人物たちにより、
人間の多様なありのままの性癖、性分というものが示された。
国も時代も違っても、
人間の種々の本性というのはたいして変わらないものだ。
けしからんとか嘆かわしいとかではなく、
人間とはそういうものだと、
自分もそういうものだと、
俯瞰して受け入れる。
そんなことを思った。

それにしても、これら二つの作品は、
人々の表情や話し声、
家々や通りのざわめき、
様々な花や樹、鳥たち、
空や暗い森、どんよりとした河…
においや空気の温度や湿度までもが五感に届き、
読後いつまでも私を物語の中に留めおく不思議な力がある。



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