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【マイソングス】ヴィジラント・マン "Vigilante Man" / ライ・クーダー (1972)







いつも元気の出る曲を選んでご紹介しておりましたが、今日はいきなり、大きな革のカウチにでもずっぽりはまりながら、ライムを入れたコロナビールか(またはその後に)、ちょっと気分が良くなってきたら、やや苦めのバーボンなんかを片手に(ロックでよろしくー) 、聴いちゃいた〜い曲です。

数日前にお友達のnoterさん、Miyukismさんの記事を読んで、「体がよじれちゃうぐらいスキ、これはキケン」とコメントを残してきたところ、

すぐに、彼女も「よじれ隊」とのお返事。
そこへもう一人のお友達noterさん、りりかるさんも加わり、

「大好きすぎ」♥と言うことで、急遽、「よじれ隊」結成させていただきました。

ではなぜこれほどまでに、乙女たちを「よじれ隊〜」と言わせるのか。
検証です。

まず、ライ・クーダー、有名どころで、1984年の映画『パリ・テキサス』の音楽を担当した方。
監督がヴィム・ヴェンダース、カンヌ映画祭でパルムドール貰ってます。

荒涼とした砂っぽい映像にはこれしかない、と言う程シンプルな弦の音。
プリミティブな心の叫び、とでも言える旋律です。
きっと私達の、サピエンスな部分に直接訴えてくるのでしょう。

それは何を置いてもライ・クーダーの演奏テクニックによるもの。
これはきゃうん、なギター奏法の一つで、"スライドバー"という金属で出来た短いパイプのようなものを持つか、指に装着してから震動で音を出すんです。弦楽器でしか表現出来ない、官能をくすぐる音色。ナイロンと金属が、触れるか触れないかで接触するので、音程が不安定で、こんな聴覚中枢を刺激するような、あはん、な音になっちゃうんです。

そこでまず最初のMV。
頭のコードをぐいい〜ん+スライドバーで、そんなに震わせないで〜、なビブラートをかけて弾きだすところから、いやん。
そして、手のアップ。アンタ、左手の小指!
これってそこのバーで飲んだあと、ガツンと瓶を割って作ったわねっ、って感じのぶっといガラス製。確かに優等生の金属製よりも、肉厚で良い音。しかもガムテープで動けないように固定させてちゃってるし。そしてそのゆるゆるさ加減に反してリフはキレッキレ。しかもグリッサンドでぐーっと撫でるところは、あくまで優しく。その両極端なメリハリがたまりません!

そんな風に弾いている姿にうっとり、していますが、歌っている内容はかなり辛辣。
この曲は、彼の'72のアルバム『紫の峡谷』の中の一曲。

彼が歌ったのはこんな出来事に関連しています。
まず1929年の金融恐慌でガタガタし始めたところへ、30年代にアメリカの中西部を襲った、砂嵐攻撃。
これは歴史にも残る一大事件だったんですが、意外と知られておりませんね。
白人の入植で、地表が露出し乾燥した大地。そこへ直射日光が当たり土埃を作り、強風で砂が舞い上がると巨大な黒雲となり各地を襲いました。風に乗った砂はオクラホマからシカゴや大西洋沿岸まで。土が雪のように舞い、遂に'35年の4月14日には"黒い日曜日"となり、150m先も見えない世界に。
仕方なくオクラホマ民、オーキーはカリフォルニア、テキサス、ニューメキシコ等への移動を余儀なくされるのです。

それを当時歌にし、録音したのが、カントリー・フォークの神、ウディ・ガスリー

この「我が祖国」はボブ・ディランもブルース・スプリングスティーンもカバーしている、リスペクトでございます。
彼の歌の多くが、労働者階級が直面する状態を歌い、反体制ソング等でも人気に。
彼のギターにはいつも「This machine kills fascists」(この機械はファシストを死なせる)というメッセージが。

ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』や、女流写真家のドロシア・ラングの有名な母子の写真もこの"ダストボウル"という時期の産物。

こちらによくアメリカンアートのお勉強をさせて頂いているartoday - chiakiさんの記事も。


そしてもう一人、スライドギターの草分けはこの人。
ブラインド・ウィリー・ジョンソン。
ライ・クーダーもこの曲弾いていました。
「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」。

彼は盲目の宣教師だったので、元々はゴスペルを弾き語っていましたが、スライドギターが上手かったので、ブルースの人たちにも影響を。
低音シワガレ声は、天使とは程遠いのですが、崇拝しているミュージシャンは多いです。
また、'77年のボイジャー計画には、モーツァルトの曲と共にこの曲もプレイリスト入り。

そんなアメリカン・プリミティブな部分を上手く抽出し、蒸留させたのがライ・クーダー。
アメリカ文化とは寄せ集めなんだ、という説もありますが、ここまで来るともう既にオリジナルなアメリカの民族音楽だ、と言えるんじゃないでしょうか。

それでは最後にライ・クーダーがスライドギターでゴスペルを歌う「ジーザス・オン・ザ・メインライン」。
1977年のライブ。


いかがです?
もう一回最後によじれちゃう〜。
男性のみなさま、乙女を「よじらせ隊」なら、サピエンスでプリミティブな魅力いっぱいに。
「よじれ隊」参上いたします〜♥



マイソングスを聴きながら。

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