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パリ・シャンゼリゼ 本日の時計屋さん(19) 〜 モーリシャスからの手紙

サッカーワールドカップファイナルの贈り物(?)も、そしてそれに続くクリスマスの贈り物(?)も、今回はモーリシャスからだった姐さん。


珊瑚礁に縁取られた美しい海、目を見張る雄大な山々、見慣れない動物たちとの触れ合い。
『インド洋の貴婦人』とさえ呼ばれる、珠玉のリゾート地、モーリシャス。
この年末年始、そのリゾート地からリゾートしにパリにやってくる観光客が密かに増えていた。
(姐さん個人の感想です。)


『神は、モーリシャスを最初に創り、
そしてモーリシャスを真似て、天国を創った。』
とな。
そして今や彼の地は、TAX HEAVENでまさしく天国。



こりゃあ、ちと気になってきた。
何故に最近モーリシャス人観光客が多いのか?
(局地的にね)
何故にリゾートだけで庶民がこれ程潤っているのか?
そして何故にこれだけ羽振りが良いのか?

あんまり知らない国だけに、謎は深まるばかり。



きゃう〜ん♥
行きた〜いん♥

...でなくてね。


ググッとさかのぼってみましょうか。


ときは大航海時代のヨーロッパ。
そのちと前までは『ヴェニスの商人』なんかで有名で、マルコ・ポーロだってヴェニス出身の優勢イタリア勢。
マルコの旅は1271年頃始まって、中国へ入り、元寇も目の当たりに。(1274年)。
そして中国の町で麺を茹でているのも目の当たりにし、これを自国イタリア持ち帰ったのがパスタの始まりとか。
そしてその頃、もっと東には金色堂があったり、金印なんかを日常茶飯事に使っている黄金の国「ジパング」があると小耳に挟む。
ほ〜、そんなに金があるんかい。
憧れちゃうねぇ。ただやっぱりコワイよね。
元寇も追い返されたカミカゼが。
これ、ちとおとなしくなるまで待つか。
だったら今回は南回りでのんびりと、海賊うようよの「ライオンの町」シンガプーラの前身、テマセック辺りで中継しながらイタリアへ帰らせていただきませうか。
あ、これみんな『東方見聞録』にアップ済み。
当時、かなりのファンから「スキ♥」をもらったらしい。

かのジェノバ出身コロンブスだって、フォロワーに。
目指せ!マルコ・ポーロ様! で頑張っちゃいました。
結構優秀だったもんで、こちらスペインにヘッドハンティングされ、『インド』を目指したんでございますが。
1492(イヨ〜、クニ!)のアメリカ大陸発見ですね。
けれども、ちとハズレちまったのはみなさんもご存知のハズ。
おまけに長い南米大陸滞在で、「さみし〜」くなっちゃって、梅毒まで持ち帰って来ちゃったりしてるし。
そんなこんな、お陰でその当時のヨーロッパは、そりゃもう大騒ぎでしたよ。

しかし! スペインがインド(?)を目指すなら、と頑張ったのがお隣りのポルトガル。
姐さんがポルトガルを訪れた時もそうでしたが、ここでは、コロンブスなんか「しゃかりき」じゃありません。
ココでは我らがヒーローは、ガマ爺ちゃん。
(どうしてもガマ🐸をイメージしてしまう姐さん。)
そう、皆さんもご存知のヴァスコ・ダ・ガマ
かつてはお札にも刷り込まれてましたっけ。
5000エスクード。


ガマ爺ちゃん率いる彼らは、既に1460年にはインド航路を発見、今でもインドの西海岸はポルトガル人の末裔が多いカトリック県でございます。
そして1505年には、モーリシャスへと到着。しかし彼らの目的は入植ではなく、航路開発にありましたので、船は更に東へ。

♪東へ東へ廻れ
1、2、3、4、5、年。
必ず行ける 地球は丸い!

かつてピンクレディーのおネエさんたちも歌っておりましたが、彼らは、かの黄金の国「ジパング」を目指しておるわけでございます。


そしてやったー🙌
なんとか種子島へ到着したのが1543年
その後すぐ6年後、1549年には、あのフランシスコ・ザビエル氏も到着されております。


でもこれ、ガマ爺ちゃんがジパング目指してなかったら、出来なかった曲ってことじゃないですか。
元祖ヘソ出し、太腿出しルックもあり得なかったってことじゃないですか。
オジサマ方、ガマ爺ちゃんには感謝して頂きたい。

まあ、コロンブスでも『パラダイス銀河』って曲作りましたけどね。
色々「しゃかりき」やらかしてたらしいんですよね。
でも「夢の島までは探せない」ってことなんで。


どちらにしても、お二人とも約400年以上経ったジパングで黄金を稼ぐことができたなんて、夢のまた夢!


姐さんもいつものことながら、コロンブスと同じくらい航路が外れておりますが、この辺で舵の取り直し。

ポルトガル人がやって来たあとは、オランダ人。
モーリシャスにも1600年頃到着し、元々はインド航路の補給地の役割でございましたが、そのうち
サトウキビプランテーションに目覚め、勤しんでおられました。そして、サトウキビと言えばラム酒。植民地の目的はいつでも似たようなモン。




当時は「東インド会社」を立ち上げ、オランダは早くも会社組織として世界を股にかけており、インド、東南アジアとヨーロッパ間の貿易及び植民地経営を目的としておりました。
同時に行き着いたのがインドネシアのジャワ島、そしてジパングは平戸。

ってことで、長崎の出島パスをげっちんした、上位2カ国、ポルトガルとオランダでございます。

その後1700年頃になると、アフリカ奴隷を連れたおフランス領となり、『不思議の国のアリス』にも登場する、奇鳥ドードーも絶滅。



1800年頃にはイギリスの手に渡り、多くのインド商人が移住し、貿易中継地に。
(これってシンガポールと似てますね。)
そのため、現在の人口約70%を占めるのは、その頃のインド系末裔なのだそう。

そして1968年にイギリスから独立
その後、観光業にピンポイント。
リゾート開発はヴァカンスマスターのおフランス人におまかせ!
更にオランダ人のお陰で、ダイヤの加工も一級コース!
しかもイギリス人の息がかかる所、何処もTAX HEAVENで、ココも然り。
ゴーストカンパニーが増える増える...
となれば、やりたい放題、お金の廻りも良くなるってぇ寸法だ!
しかも貨幣単位はモーリシャスルピー。
誰も知らんで。
そして、ココで全てが繋がるゆるゆる業満開♥

にゃ〜るほど。
今日は航路発見の記事なのか、いややっぱり時計の記事なのか。
ふ〜。やっとイッタ。かな?

みなさん、モーリシャスについては完璧ですね!


🐠🐠🐠


と、そ〜んなモーリシャスから、姐さんの店に天使がやって来た年の暮れ、仕事納めの12月30日。

やっと幕開け、本日のお客様!

「邪魔するでぃ。」

このいっそがしい時にまたですか、インド人。
但しいつもと違って、同僚たちやや身構えの体。
しかし淀みなくツカツカ近寄る強気の姐さん。
ここは任せとき。

フランス語が流暢な小柄なネズミのような男と、英語を喋るひとまわり大きめのビン底メガネの二人組。
ぱっと見たところ、ネズミ男はインドはポンディシェリ辺りの出身でパリ在住、そこへ年末で遊びに来た友人のビン底メガネか。
インドのポンディシェリは、インド東岸に位置する唯一の元仏領県で、1964年に返還されたものの今でも公用語はおフランス語がバリバリ通用する。
はて、ビン底メガネの兄さんはどこにお住まいで。

「コレコレ。」
と舌ナメズリと揉み手でショーケース前に陣取る。目の前には、ライダースお好みのバイクを型どったモデル。
「随分お気に入りのご様子ですが、兄さんもバイク好きで?」
といつものように周り固めから。
厚いビン底メガネの奥の小さな目が緩む。
相当なスキ者と見た。
「この白いの、見せてくれる?」
ほう、珍しいとこへ落ちた。

ホワイトダイヤル、クロノグラフ、43mm、クオーツ、ループ付きサファイアガラス、ローズゴールドバゼル、ホワイトシリコンベルト


「いや〜、兄さんご自分に良くお似合いになるものわかってらっしゃる。兄さんのこのお肌の色にはぴったりじゃないですか。しかもこのローズゴールドがまた上品な感じで、ワンランクアップ。」

確かにインド人のショコラ系には、普通の白人達がまず選ばないホワイトシリコンベルトでも違和感がない。
逆に彼らには黒の革ベルトだと同系色となりそれ程映えない。アフリカ系然り。

「だけど、これクオーツでしょ。オートマチックの方がスキなんだよね。」
おぉ。よくぞ言ってくださいました。
そうざんす。
ありますよ、ありますよ。ちょうど良かった。
コレ、兄さんに。

ブラックダイヤル、クロノグラフ、45mm、オートマチック、ループ付き、レッドライン入りバゼル、革付きブラックシリコンベルト、2022年限定モデル

ゴクリッ。
いや、そんな大事な所掴まれちゃったような顔しなくても。
「せっかくだけどね〜、ちと考えさせてもらおうか。」
あれ? 大事な所掴んだと思ったんだけど。ダメ?
「実は今日はナンバーないもんで。」
あ〜、なるほど。パスポートナンバー持ってないから免税できないってことね。

よござんす。
どうせこっちも予算達成し終わったバタバタの年の瀬に売るよりも、しゃきっと取り直した新年の方が気分もよろしくて。
またのお越しをお待ちいたしやしょう。


🐯🐯〜年を跨いで〜🐰🐰


仕事始めの正月2日。
まだ皆さん、お屠蘇気分でおられるところ。

いらっしゃいませ。よっ! 待ってました。
良い年明けでございましたか。

おぉ、ハロー・アゲイン。再び現るビン底メガネのインド人。
ただこの兄さん、英語にもインドのインド人特有のアクセントがなく滑らか。
ランドンランドンか? (インド人はロンドンのことを、ランドンと発する)
しかもところどころおフランス語も理解する。
英語で話してくるので、英語で返すと、いきなりフランス語で話し始める。え!?どっちで喋りゃあいいんだろ?
🤨ん...もしや。

「YOUはどこからこの店へ?」
来たな、その質問。とばかりに身構えた兄さんその刹那。
「オーストラリア。」
💪よっしゃげっちん! こりゃ落としやすい。
お年始一番縁起がええぞ。
財布の紐が緩い国上位国。
ドル箱系はゴールドカードで外資を落とす、ザックザク✨
姐さん内心でっかく✌

「...に移住したモーリシャス出身。」
へ!? 今なんて?
来たー! 魔界の変化球⚾
おぉ。ハロー・アゲイン、モーリシャス。
ややや、コレはまさかの武者震い。
「ほぅ、兄さん。この残り僅かな2022年モデル、いわゆるリミテッド・エディションてやつですがね、ナンバー入りですぜ。しかもうちではラスイチで。」
なぬーっ!?
更に見開くビン底メガネの奥の目が!
ランドンランドン! ナンバンナンバン?
これは数フェチ。何処ぞにもいましたっけ、ゾロ目にこだわったり、6にこだわったりする方が。
「ね、姐さん...(ゴクリ)」
カラッカラになった喉に唾を飲み込む音が聞こえたような。
ふっ、一秒でも早くナンバーを知りたいかい?
教えてあげようか?
ココは姐さん、ちと焦らしてあげちゃおうかな。
...えーーーっと。
「ね、姐さん。その前にコレをちと見ておくんなせい。」
と額に汗してスクロールするスマホのフォトアルバム。
あら、赤いデュカッティのシリアルナンバー。
「見てくれましたか!? このナンバー...」
ハイ、確かに。
このナンバーが何か。そんな今にも斬り殺されそうな悲痛な顔しなくても。
「コレがコイツのナンバーなんっすよ。」

...あ、ナニ!? ただ見せたかっただけ?
そんじゃあ、今度は姐さんのお手打ちを。
さぁさ、こっちをちと見ておくんなせい。
「コレがコイツのナンバーでござんす。1296/3333...っ!?」
WOW 🤯まぢ!? 
兄さん、沸騰点間近のコーフン度。
だけど、なんでこのナンバーでそこまでコーフン?

「姐さん、イカせていただきますっ!」
おぅ、即イキ。早いぜ。
何故かはようわからんが、ま、いいってことよ。それでは、早速お持ち帰りのご準備へ。

「ちょっーと待ったー! 姐さん、こっちの白いのもいただきやすんで。」
ふっ、今なんて?
明日の帰国を前に気分はゆるゆる、お財布もゆるゆるとはこのことか。
よござんす。姐さんは初めからこの白いのの方がお似合いになると思ってました。
ま、所詮リミテッド・エディションは飾って眺めているもの。
さすが兄さん、よくおわかりで。
正月の浅漬けを噛みしめるようなしゃきっとした清々しい年の始めでございます。
姐さん、今だにあのナンバーへの反応だけはようわかりまへんが。

兎にも角にも、本日はお買い上げ誠にありがとうございました🐰



なんだかこれは、かのモーリシャスからのラブレターだったのではなかろうか。
いや、ラブレターという名の年賀状。


本年もパリの時計屋さん、どーぞご贔屓に♥
あはん♥









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