暴風警報 雨のち晴れ ?

風が強い日は、遠回りして帰ろう。お気に入りのドラマで彼女が言った言葉だ。大学の帰り道、太陽の光を水面に受けてぱちぱち弾ける瀬田川が真珠みたいで、ふとその言葉を思い出す。天気が良い日はさらさらと、いろんなものがこぼれていくようで、なぜだか少し寂しくなる。空が青くて、温かな幸せが浮かんで、心の奥にのこる悲しみが、ずっとずっと吸い込まれることなく、ここに留まっているからかもしれない。風が強い日は、空気が澄んでいる気がする。それはきっと、昨日の夜の苦しさも、あの日の雨の匂いも、全部空の向こうに流れていくからだろう。遠回りして帰ろう。彼女が空の向こうで手を振っている。近道は禁物。ただひたすらに、前へ、前へ。

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