見出し画像

「#これからのインフルエンサー」イベントレポート【DAY5】 〜企業はどう向き合うべきか〜

「#これからのインフルエンサー」イベント概要

画像1

ここ数年で、主にSNSを通じて企業の商品やサービスをPRするインフルエンサーと呼ばれる人々が次々と現れています。それに伴いインフルエンサーマーケティングという手法が生活者と企業を繋ぐ新たな架け橋となりました。一方で、インフルエンサー及びインフルエンサーマーケティングを取り巻く市場では様々な課題も生じています。単純にSNSのフォロワー数によりPR費用が決定される価格設定、PRであることを隠して行われるステルスマーケティング問題や、それらを扱うインフルエンサー専門プロダクションの在り方も問われています。
今、インフルエンサーの市場はどうなっているのか?そして、企業はインフルエンサーとどう向き合っていくべきなのか?モデレーター:テテマーチ株式会社 福間昌大が、インフルエンサー界隈のスペシャリストをお呼びし、5日間を通して紐解いていきます。

──本記事では、DAY5のイベントレポートをお届けします。DAY5のテーマは、「これからのインフルエンサー〜企業はどう向き合うべきか〜」。

画像2

5日連続イベントの最終回となった第5回では、今回のテーマである「これからのインフルエンサー」を体現するクリエイターの5歳氏、わたらいももすけ氏とテテマーチ株式会社の三島悠太が登壇します。インフルエンサーとして各コンテンツに注いでいる想いや熱量をお聞きするとともに、企業・SNSマーケティングの支援会社としての視点も混じえながら、インフルエンサーマーケティングの今後についてのトークセッションを行いました。

三者三様の視点からインフルエンサーを考える

これからのインフルエンサーDay5 (14)

福間:今回は、インフルエンサー側であるわたらいさん、クライアント・企業側として弊社の三島、そしてどちらの役割も担っている5歳さんに、三者三様の視点からインフルエンサーマーケティングについてお話いただきたいです。
 
5歳さんは、現在、Twitterのフォロワー数が12万を超えていますね。プランナーとしても手腕を発揮されているとお聞きしています。

5歳:僕はTwitter界で一番成功した男なんですよ(笑)
インフルエンサーとして様々な企画に起用していただいた中で、「どうやればインフルエンサーマーケティングを成功させられるのか」が掴めてきたんですよね。そのタイミングで、株式会社カラスの牧野圭太さんに「5歳さんは広告が向いているので、一緒にやりましょうよ」とアドバイスをいただき、企画にも携わるようになりました。

福間:5歳さんは漫画の原作者として実際に本の出版もされていますよね。どういった経緯で出版に至ったのですか?

画像4

5歳:僕はTwitterで主に家族や妻のことをつぶやいていて、その投稿がバズりまくったんです。当時のフォロワー数が4万人くらいだったんですが、それくらいのフォロワー数だとかならずどこかの出版社から書籍のオファーが届くんですよね。それで、出版が決まったタイミングで、「漫画完成の半年後までにフォロワー10万人達成してください!」と言われて…そこから鬼人のごとくTwitterを攻略して、約束通り10万人を達成しました。
 
福間:そのときのノウハウも今のお仕事に活きていらっしゃるんですね。わたらいさんはどのような過程を経てインフルエンサーへと変化していったのですか?

わたらい:僕はいわゆる作品撮りを行っていて、SNSでハッシュタグをつけて写真にコピーを載せてを投稿していたんです。全然狙っていたわけではないんですけど、広告代理店の方に「商品PRとの相性いいですね」とお声がけいただいて、そこから様々な企画のご相談をいただくようになりました。

これからのインフルエンサーDay5 (16)

また、「こんびにこ」というYouTubeチャンネルの運営もしています。現在、チャンネル登録者数は44万人を突破しました。わたらいももすけとして以外にも、いろいろな名義のクリエイターとして活動しているため、顔出しはしていないんです。それぞれのクリエイターが「同じ人だ」という印象を持たれたくなかったんですよね。

「好きな気持ち」発のPR案件

スクリーンショット 2020-08-03 11.31.56

三島:最近のインフルエンサーマーケティングに関して、5歳さんとわたらいさんはどのような変化を感じられていますか?

5歳:もはやインフルエンサーマーケティングの手法も全部やり尽くされているな、という印象を受けています。その上で、企画内容と本当に相性のいいインフルエンサーのキャスティングこそ現在求められている部分ではないでしょうか。
 
ある商品を好きな人がいて、それをSNSでつぶやいてアピールして、それが仕事につながることが一番いいですよね。ナチュラルなPRにもなり、クライアント側にとっても嬉しいことばかりです。 正直、やらされているPR案件って分かるんです。そういうのはバズらないし、関わっている人たちが幸せになりません。

福間:広告代理店も、最近だとSNS上で口コミを調べて、すでに対象商品について言及しているインフルエンサーを探す、というパターンでキャスティングをすることがあります。クライアントもすでに自分たちのことや自社の商品を好きなインフルエンサーの存在を求めているのは感じますね。

5歳:ゆくゆくは、先に商品を紹介をしてあとから紹介料という形で報酬が支払われるシステムになればいいと思っています。ただ好きなものを宣伝していたら、仕事になった。そういう流れだとみんながハッピーです。

わたらい:僕も好きなものが仕事になればいいなと思っていて、企業までは絞らないもののジャンルを意識したコンテンツ作りは行っています。僕がコンテンツ作りをすればこんなふうに商品をPRできますよ、というのが見えるようにはしていますね。
 
飲料が好きなので、コンテンツの中に飲料品を混ぜることが多いんです。こんびにこは、名前の通りコンビニ商品への好きな気持ちのアピールだったのですが、残念ながら現在までにコンビニチェーンからPR案件の依頼はきていないですね(笑)ジャンルを広くしすぎて、欲張りすぎたんでしょうね(笑)

企画を依頼する際のポイント「人として見る」

スクリーンショット 2020-08-03 11.30.52

5歳:要はだよね。企画に携わる側の人間としては、インフルエンサーに対しての愛にも注目しています。
 
わたらい:「この方は、僕のことを深く見てくれているのか?」というのは依頼をいただいたメールの文面でもう分かります。顔出ししていない僕のところに、成果報酬型の化粧品PRの案件の相談とか来るんですよ(笑)
 
5歳:僕のところにも化粧品の依頼、くるなあ。「え?僕のこと知っている?」ってなっちゃう(笑)

 
わたらい:「いつもSNS見ています!」とか書いてあると、それだけで嬉しいですね。たとえそれが建前だっていいんです。定型文をコピペして、他の人にも同じ内容を送っているのが分かるようなメールはもったいないなあと思います。
 
5歳:僕がキャスティングをする際には、自分がインフルエンサーとして依頼がきたときに嬉しかったメールの内容を真似するようにしています。連絡をするインフルエンサーの作品について言及するなど、その人への手紙となるようなメール作成を心がけているんです。そういったコミュニケーションは大事ですね。
 
ただ、数十件というインフルエンサーにアプローチをかけなきゃいけない広告代理店の担当者の気持ちを思うと、コピペで同じ内容を送りまくるのは苦肉の策なのかな、という気持ちもあります…。
 
福間:そのPR案件の目的が、「とりあえず商品やサービスをリーチさせたい」になっていた場合、フォロワー数重視でたくさんのインフルエンサーにDMすることもあるかもしれませんね。
 
5歳:ただやっぱりその場合でも、ひとりひとりのインフルエンサーに合わせて何かしら文言を変えておくりたいですね…相手が人だっていう意識があるから、なおさらです。

クライアントが求めた以上のものを返す

わたらい:PR案件が多くなったときの傾向として、商品紹介の定型文をそのまま使うなどコンテンツが雑になっているというのは見ていて分かります。5歳さんは、ひとつひとつに本気ですよね。
 
5歳:自分が参加している企画がスベるのが嫌。恥ずかしいじゃん!(笑)

だから、全力で企画を盛り上げます。インフルエンサー同士も横のつながりがあるので、盛り上げようという雰囲気を一緒に作りたいですね。「盛り上がったPR企画、あれもこれも5歳さんがいるよな」となってくれれば、クライアントに喜んでもらいながらほかの仕事にもつながります。
 

福間:表立って企画を盛り上げる立場のインフルエンサーだった5歳さんが、裏方として盛り上がる企画を作っているのは、新しいインフルエンサーの方向性なんだろうと思います。

5歳:こくみん共済さんの案件はオウンドメディアの編集や、企画のプロデュースをさせていただいたのですが「インフルエンサー・5歳」という自分の名前を出さずに、どこまでできるのかというのが、企画側に回っての挑戦でしたね。

5歳さんがプランニングしたメディア・企画

また、アース製薬さんの「#アースジェットプロプレミアムプロモーション」も僕自身が広告のモデルになるという新しい取り組みでした。プロのモデルと同じように、半日かけて最高の写真を撮って…。撮影現場にいるみんなで楽しく一緒にコンテンツを作り上げていたのも印象的でしたね。
これらの事例も新しいインフルエンサーの形なのかな、と思います。

福間:アース製薬さんの案件はTwitterのアイコンも、しばらくの間はPRで使用した写真に変えていましたよね。

名称未設定のデザイン (6)

5歳:プロフィール写真を変えるのは僕が勝手にやりました。クライアントが求めていること以上でお返しすれば、気持ちよく報酬も払っていただけるじゃないですか。そうやって生活ができているので、僕にやれることはなんでもやりますよ。
 
三島:インフルエンサーがアイコンにしたくなるくらい良いクリエイティブを完成させた、というのもポイントですよね。SNSマーケティングの支援会社は、インフルエンサーが「この案件に携われてよかった」と思うお土産を用意する企画設計ができれば、共創コンテンツの熱量は高まるんじゃないでしょうか。

PRの成果を把握しておくことが長生きの秘訣

三島:僕ら支援会社は、クライアントからKPI(目標値)を渡されており、それを達成するためにお金をいただいていますし、達成する手段として企画を立ててインフルエンサーに依頼をします。目標とする数値など、インフルエンサー側には共有したほうがいいのでしょうか?
 
わたらい:僕の場合は、数値目標が共有されれば「やってやるぞ!」と思えますが、そうならない人も多いのではないでしょうか。
 
クライアントに企画を提案する前の企画立案の段階で、「この企画をわたらいさんと一緒にやりたいんです。プレゼン資料に掲載してもいいですか?」と相談されると嬉しいなと思います。それに、企画の時から話を聞けるので、目標を達成するために効果のありそうなやり方をこちらからも提案できますよね。ただ数字だけ知らさせるのではなく、上流のところから携わる形であればいいのではないかなと考えています。
 
5歳:僕の場合は、数字を把握したいので、PVとかも確認するようにしていますね。SNSのPR投稿なんかは「このくらい結果が出ましたよ」と自主的に数値報告を行っているんです。数字を把握しておくことで、自分が出した結果の良し悪しも分かるようになっていきます。インフルエンサーとして今後も長生きしたいと思うのなら、知っておくべき側面です。
 
福間:インフルエンサーにお支払いしている報酬は、単に投稿したものへの対価じゃないですもんね。「このお金はなにに対して払われているのか」を意識することが、長く仕事につながる秘訣かもしれません。

「こういう仕事がしたい」と積極的にアウトプットする

福間:仕事につながるためのインフルエンサーとしての心がけをいくつか話していただきましたが、クリエイターとしてのポートフォリオもあったりするのでしょうか?
 
5歳:僕の場合のポートフォリオは過去のTwitterでバズったツイートですね。

「こういうツイートがバズれば、仕事につながるだろうな」というのを見越してツイートを作成して、実際にバズらせます!クライアントに見せれば、イメージも湧きやすくなるかと。
 
また、飲食店についてのツイートがバズった時などには、お店側にも「なんか今日、お客さんたくさん来てやけに忙しいな?なんでだろう?」と理由を探った先にSNS上で僕のことを見つけてくれたらいいなと思います。こういう取り組みは大手企業の商品でも、ちいさな路地裏の飲食店でも、問わずやっていきたいですね。

わたらい:僕はハッシュタグをつけて作品撮りをして、それをSNSに投稿しています。お酒を飲む女の子の撮影をしていた「#夜女子」では、投稿を見てくれた福間さんの引き合わせによって、キリンビールさんとの案件が決まりました。僕の作品の中に、キリンビールが添えられる、という感じで作られたコンテンツなので、非常にクリエイターライクなPR案件です。イメージとしては、自分の作品にスポンサーがつく、というのに近いかもしれません。インフルエンサーは積極的にポートフォリオとなる作品を発信することで、自分に合った案件に恵まれる機会が増えるのではないでしょうか。

SNSプロモーション・企画制作・インフルエンサーなら|餅屋(ソーシャルコンテンツスタジオ)

テテマーチさんを通しての依頼だったロッテさんの「クーリッシュ」のPR案件も、本来だったらクライアントから指定が入ることが多いモデルのキャスティングについて柔軟に対応してくれて、元々撮影したいと思っていたモデルの花柳のぞみさんを起用させていただくことで、自分がやりたかったクリエイティブを実現することができました。
テーマのすり合わせをしっかりした上で後は自由に、という体制もやりやすかったですね。 
SNSのフォロワー数ではなく、僕のアウトプットを見込んで依頼してくださると、やはり嬉しいですし、モチベーションも高まります。

ボーダレスな関係値から、インフルエンサーマーケティングをはじめよう

5歳:先にギブする姿勢は、よっぽどお金に余裕がある人しかしないようなイメージだけど、駆け出しの人ほどやったほうがいいと考えています。「この企業と、こんな面白いことしました!」の積み重ねは、絶対の後々仕事を呼び込んでくれる。
 
わたらい:たとえお金をもらわなかったとしも作りたいもの、一緒にやりたい人がいれば、その絆からより良いコンテンツが誕生するように思えます。  
 
三島:僕らSNSマーケの支援会社の人間だけだと、企画の限界があるように感じているんです。これからは、それぞれの立場の垣根をなくして一緒にいいコンテンツを作っていこうと考え届けることが、本質的なマーケティングになるのではないでしょうか。企業のSNSでのコミュニケーションを支援する立場にある僕としては、インフルエンサー・クリエイターが企画に参画しやすい環境づくりをしていくことが使命なんじゃないかと思っています。仕事と遊びの垣根を越えて熱中する仕事を、ボーダレスな世界で実現したいですね。

──3名がともに口にしていたのはインフルエンサー・企業の枠を超えて、共創できるコンテンツを作ること。そして、当たり前の話だが、インフルエンサーを「人」とみなし、しっかりと信頼関係を築くコミュニケーションをとることの重要性。インフルエンサーマーケティングという単語に踊らされてしまいがちですが、人と人が信頼関係を築きながら、共により良いものを創っていくことの大切さは今までの仕事と何も変わらないのかもしれません。

スクリーンショット 2020-08-03 11.33.32

===
 
DAY5では、「これからのインフルエンサー」自身のインフルエンサーマーケティング論とともに、餅屋が掲げる「共創」というキーワードが似合うような立場を越境した企画・キャスティング・コンテンツ作成への熱意に触れられることができました。

5日間のイベントレポートは以上ですが、モデレーターの福間による総括をご用意しましたので、そちらもご覧ください。

スピーカー:5歳

画像17

株式会社アマヤドリ代表/ディレクター・ライター
結婚生活についてツイートをしていたらいつの間にかフォロワー数が12万人に。ライター業を経てオウンドメディア運営会社を設立。SNS広告のディレクション、キャスティングなども手掛ける。

スピーカー:わたらいももすけ

画像18

クリエイター
エモい企画屋。#バイバイ制服 #バイバイ恋人 #夜女子 #ぶかぶかと女の子 などSNS向けの企画立案から、写真や映像、イラスト等を組み合わせたクリエイティブ制作まで一貫して行います。

スピーカー:三島悠太

画像16

テテマーチ株式会社 執行役員
前職のインターネット系広告代理店ではSNSマーケティングにおける企画・運用・プランニングに従事。企業のSNS活用法などの数々のセミナーに登壇。2018年2月にテテマーチ株式会社にジョイン後、Instagramを中心としたSNSマーケティングにおける企業の企画・立案を300社以上手掛ける。その後、執行役員に就任し、事業を統括。Instagram Day Tokyo 2019登壇。
 
モデレーター:福間昌大

画像15

テテマーチ株式会社 コミュニケーションデザイン室
1990年生まれ。学生時代、クラブイベントやファッションショーの運営を経験。大学卒業後、2社を経てテテマーチ株式会社に入社。同社にて、企業のSNSコミュニケーションの企画提案、及び自社のマーケティング企画等を兼務。アドテック2019・2020公式スピーカー、個人の活動としては、20代のマーケターイベントの企画や、chill outをコンセプトにした200人規模のイベント等を開催している。趣味は囲碁とファッションとTwitter。

ソーシャルコンテンツスタジオ『餅屋』

画像19

テテマーチ社では、SNS時代のプロモーションに特化した企画集団『餅屋』を設立いたしました。

餅屋は、インフルエンサーを単なる拡声器としてではなく、コンテンツを共に創り上げるクリエイターとして考えています。多くの実績を持つプランナーとチームを組み、SNS時代にあわせたコンテンツを「創る」から「広げる」までプランニングいたします。

餅屋へのお問い合わせはこちら↓

公式サイト:https://tetemarche.co.jp/mochiya/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?