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データアナリティクスの観点からゲーム分析がおもしろい3つの理由

株式会社リーン・ニシカタの西方智晃(にしかたともあき)と申します。

はじめましての方も多いと思いますので、バックグラウンドについて紹介させていただきます。私は、ヤフー株式会社でエンジニアとして検索エンジンの開発、その後、株式会社ディー・エヌ・エーではデータアナリストとして、ゲームアプリの分析に携わってきました。

一見すると全く異なるドメイン・業種なのですが、ビッグデータから何かしらの規則性を見出して、生活やビジネスに貢献するためのインサイトを導き出すという仕事は両社で共通していました。これらの経験を活かし、現在は起業して、主にスマートフォンのゲームアプリ業界のお客様を中心に、データ分析業務を通じて意思決定のお手伝いをしています。

本noteでは、これまでの経験をふまえてデータアナリティクスの観点でゲーム分析がおもしろい理由についてお伝えできればと思います。

データアナリティクスの観点でなぜゲーム分析がおもしろいのか

ここでいう「ゲーム分析」の「ゲーム」とは「ゲームアプリ」を指します。

ゲームアプリの多くは無料で始めることができ、ゲームを進める中でユーザーに課金していただき売上を作っていくビジネスモデルです。したがって、ユーザーの遊び方に合わせてアップデートを行っていくことが必須であり、むしろゲームをリリースしてからが本当の戦いといっても過言ではありません。

その本当の戦いに必要になるのが「ゲーム分析」です。

逆に言うと、コンシューマーゲームのような買い切りのタイトルの場合、あまりゲーム分析が必要にはなりません。

ゲーム分析が果たす2つの役割

ゲーム分析には2つの役割があります。

1つ目は、ゲームの作り手とそのユーザーがゲームを通してきちんと意思疎通ができているか、という答え合わせをする役割です。

ゲームの作り手は、このゲームの中でこういうところがユーザーにとって面白いはずだ、こういう表現を通じてユーザーにこういった感情を喚起してほしい、このゲームを通してこういうメッセージを伝えたいといった意図をゲームの中に散りばめて、世の中に出しています。

一方で、本当にユーザーがその作り手の狙い通りの感情を抱いているのか。ユーザーが誤った解釈をして遊んでないか、作り手が意図した楽しみ方を提供できているのかは、ある一定のレベルまでしか定性的に拾うことはできません。

そこでデータを活用し、ユーザーの解釈や感情をデジタルに読み取り、解釈するというのがゲーム分析が果たす役割の1つ目です。

2つ目は、上記のように作り手の意図とユーザーの解釈・感情の答え合わせをした結果、意図通りだったか・そうではなかったか、意図通りではない場合にどう改修していくかという議論をゲーム制作に関わる全員で行っていくことになりますが、その議論をリードする役割です。

例えば、とあるゲームでユーザーがステージ2までは結構順調にクリアできるものの、ステージ3で離脱してしまう人が多い、という課題があったとします。

当初の想定では、ステージ2に至るまでにユーザーがゲームの仕様をもっと理解しており、ステージ3でもそれが使えてそこまで難しくなくクリアできるはずだったが、そうなってはいない。

そういった事象が起こった場合、そもそものステージ3の難易度を下げるのか、それともステージ3には手を入れずに、ステージ2までのチュートリアルを手厚くしてステージ2をクリアすることがステージ3をクリアするための糸口になるようにユーザーを導くのか、課題解決に向けたアプローチは人それぞれで、議論が空中戦になりがちです。

そこにデータを使って、どちらの改修プランが適切かを導き出すことができれば、作り手全員が同じ方向を目指せるようになります。

ステージ3で離脱している人はどういう人なのかを定量的に見ていくと、ステージ2まではスムーズにクリアしているにもかかわらず、ステージ3でいきなりつまづいてしまっているのか、ステージ2の途中からつまづきはじめているのかによって、ステージ3の難易度を変えるべきなのか、実はステージ2に課題があったのかを見極めることができます。

こういった示唆をデータに基づいて出すことで、「ステージ3の難易度を下げても、結局ステージ2の途中で離脱が発生しているのであれば、ステージ3に手を入れることは効果的ではない」と全員の認識を揃えることができるようになります。

このような示唆を出し、改修に向けた議論をリードするのが、ゲーム分析の役割の2つ目です。

ゲームを制作する上でデータアナリストが果たす役割

ここまで、なぜゲームアプリにゲーム分析が必要なのかを説明してきました。

このゲーム分析を担うデータアナリストは、ゲーム制作において「データの力を使って全員が同じゴールを目指せるような状態をつくる」「全員が真の課題に向き合えるような示唆を出す」という役割を果たすといえます。

ここからは、データアナリストにとってなぜゲーム分析がおもしろいのかをお話できればと思います。

ゲーム分析がおもしろい3つの理由

データアナリストが活躍できるフィールドはゲームに限らずたくさんあります。

その中で、なぜ今ゲーム分析がおもしろいといえるのか、その理由は大きく以下3つが挙げられます。

  1. PDCAサイクルが早い

  2. ゲームによってコンバージョンが異なる・1つのゲームの中で複数のコンバージョンを定義する必要がある

  3. ゲーム市場の今後の広がり(IPホルダーの市場参入やブロックチェーンゲームなどビジネスモデルの変化)

1.PDCAサイクルが早い

前段でも説明したように、ゲームアプリはリリース後にアップデートをする前提でサービス提供を開始します。リリース後にどのようなアップデートをしていくかは、もちろん事前に計画している部分もありますが、その時々の状況によってアップデートの方向性が変わっていくことがほとんどです。

そして、ゲームアプリにおいてはこうしたアップデートが大規模なものから小規模なものまでさまざまな粒度で行われています。大規模なものだと新機能開発や、新しいイベントといった粒度のものになりますが、同じイベントの中でも敵の強さを少し調整するといったものや報酬を少し変えるといった細かいアップデートも頻繁に走ります。

そういった細かいアップデートにも全てに対してきちんと明確な意図と目的があり、アップデートによってそれが達成できたかどうかは、常に見ておく必要があります。

こうした、PDCAサイクルの早さを経験することがデータアナリストにとってどうプラスに働くかというと、データアナリストが出すアウトプットの量に影響します。

というのも、PDCAサイクルが早いと言うことは、自分が出したアウトプットが、その現場に反映される量が増えるスピードが早いということを意味します。例えば、1ヶ月に1回PDCAを回しますというサイクルと1週間に1回PDCAを回しますというサイクルの場合、1ヶ月という限られた期間の中で単純に比較して後者は前者の4倍のアウトプットを出すことになります。

もちろん、出したアウトプットが必ずしもゲーム内での施策に生かされないこともあります。ですが、そういったアウトプットの積み上げが、分析スキルの向上に繋がっていきます。

データアナリストとしてより多くの打席に立つ経験を得られることは、ゲーム分析の魅力のひとつであると言えるでしょう。

また、ECや動画配信サービスといった他のオンラインのサービスでは、結局そのサービスの体験価値そのものというよりは、そのプラットフォーム上で何を売るか・何を配信するかといった中身のコントロールがそのビジネスの成功に直結します。

そういったサービスと比較して、ゲームは「体験を売る」という要素が他のオンラインサービスよりもビジネスの成功に強く影響してきます。ゲームという体験そのものを売るために、新しいシステムを取り入れるなど、常に新しい遊びを生み出し続けねばならないという宿命があり、そこにデータアナリストが深く関われるのもゲーム分析のおもしろさです。

2.ゲームによってコンバージョンが異なる・1つのゲームの中で複数のコンバージョンを定義する必要がある

一口にゲーム分析といっても、携わるゲームによって積める経験が大きく異なることもゲーム分析のおもしろさのひとつです。

ゲームアプリビジネスにおいては、ユーザーが課金をしてゲームの売上を作ることが最終的に目指したいコンバージョンです。ですが、それだけをやっていては、ゲームアプリ自体が焼畑になってしまいます。

ゲーム提供者は、ゲームの「おもしろさ」という人の感情に関わる変数を分析し、ユーザーのLTV向上につなげる必要があります。

例えば、コツコツ何かを集めるコレクション要素が強いゲームと、仲間と協力して敵を倒していくゲームでは提供している体験がまったく異なりますし、そのゲームの「おもしろさ」を表現する数値もまったく異なります。当然、必要なデータ分析の切り口も、そこから生まれる示唆もまったく異なるものになるでしょう。

また、同じゲームでも、人によって遊び方が異なり、ユーザーがなにを「おもしろい」と感じるかはその遊び方によって異なります。

一日中張り付いてそのゲームをやっている人もいれば、週末の空いた時間に子どもと一緒に遊ぶためにゲームをやっている人もいます。そのようなユーザーの間ではゲームの進捗も、そのゲーム内での目標やおもしろいと思う要素もまったく違ってきます。

なので、前者の方に向けては、1人でコツコツとゲームを続けている状態をいかにつくるか、そのために必要な要素をいかに定義して仮説を出せるかが必要ですし、後者であれば毎週末必ず親子でゲームを楽しめる状態をいかにつくるか、そのために達成すべきKPIは何かを考えなければなりません。

このように、1つのゲームの中で複数のニーズを同時に満たすことも必要になり、他のサービスにはないKPI設計が必要になる点もゲーム分析のおもしろさであると言えるのではないでしょうか。

3.ゲーム市場の今後の広がり

ゲーム分析のおもしろさの一つとして、今後のゲーム市場の広がりもあげられます。

まず、スマホの性能が上がり、3Dで新しい表現ができる等、新しい体験が生まれ続けてそれがゲームにもどんどん反映されています。

また、今のゲームアプリを取り巻く環境は、プレイヤーの入れ替わりが激しく、10年続いているゲームは本当に数えるぐらいしかありません。1年を待たずにサービス終了するものもまだまだ多く、業界内に知見が積み上がっていないという課題があります。

ただ、その中でも、新しいチャレンジは頻発していて、ブロックチェーンゲームによるビジネスモデルの変化や、IP(Intellectual Property)ホルダーがコンテンツビジネスの一環としてゲームにも参入するといった動きがあります。

特に、近年ではIPの扱い方がだいぶ見直されており、以前は成功したゲームにIPをあてはめてゲームをリリースする、という流れがほとんどでした。しかし、昨今ではIPとそのゲームでの体験が合っていないとすぐにユーザーが離脱したり、ひどいときには炎上につながってしまったりということが起こります。

いかにIPが持っている世界観を損なわない体験を提供するかが求められるようになっており、IPありきのユーザー体験を定義してKPI設計を行うスキルが求められるようになっているのもゲーム分析のおもしろさのひとつです。

その他にも、これまでは投資といった金融の分野で使われていたブロックチェーンの技術がトレードの際のゲーミフィケーション要素にまで派生して使われるようになるといった動きもあります。これまでゲームで遊んでいた人とは違う人たちに向けて、市場を広げていくといった動きも、今後のゲーム市場の広がりを示唆していると言えるのではないでしょうか。

さいごに

ここまでゲーム分析がおもしろい理由を色々な切り口でお話してきました。

最後に個人的な話をさせていただくと、ゲームはどこまでいってもエンタメなので人の感情がダイレクトに出やすいサービスであるという側面があります。

課金ひとつとってみても、「きっとこの人は悔しくて課金したんだろうな」という負けて悔しい気持ちや、「仲間を助けたくて課金したのかな」といったデータの向こうにいるユーザーという「生の人間」の動機を推察することができる。

ゲーム分析を通じて、ゲームの中にユーザーの人生が凝縮されていること、ゲームの中で一つの社会が回っていること、そういったひとつの「ユニバース」を感じることができる点が、ゲーム分析の究極のおもしろさなのではないかと思っています。

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