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【読書記録】月の魔力

「月の魔力」A.L. リーバー 著、藤原美子 訳、東京書籍

著者はマイアミの精神科医で、月が人間の行動・感情にどのような影響を及ぼすかについて研究をし、明らかな関連性があることを突き止めた。

「バイオタイド理論」

月はその引力により、満潮・干潮を引き起こす。
人間の体内水分は80%。生体にも潮汐作用が起きているのではないか。
この「生物学的な潮汐」こそ、人間の行動と感情の鍵であり、このリズムを通じて生命体は宇宙と結びついている…

統計的な調査の結果、殺人事件の件数やハムスターの活動量は月齢と関係があり、主に満月と新月でピークを迎えることがわかった。
ただし、緯度によって周期が満月・新月から数日程度ずれることがわかった。

以下、今後の自分のために要約と引用をメモとして残しておく。

バイオタイドの鍵 ーー 体内水分

人間は地表と本質的には同じ成分からなり、しかも相似た分布をもった小世界(ミクロコスモス)とみなすことができよう。
地表と同様に、人はほぼ80%が水分で、20%が固体である。
私は、月の引力が宇宙の他の力とともにはたらき、体内の水分にも影響を及ぼしていると信じて疑わない。
あなたの体も私の体も、地球の大洋と同じく、月の引力の影響を受けているのである。
生命体のバイオタイドは、月により高くなったり低くなったりすると思われる。
新月と満月時にバイオタイドの波は最高となり、行動に及ぼす月の影響は最強となる。

体内の液体は主に三つの部分に分かれて貯蔵されている。血液にふくまれる水分を"管内液"という。これは科学的には海水とほぼ同じ成分であるといってよい。
"細胞外液"とは、組織の間を自由に流れ、体内の細胞に水分を与えるものである。
細胞に含まれる水分を、"細胞内液"という。
水分はこの3つの部分を自由に移動する。
人間は水を飲んで水分を補給し、またバランスを保ち、膨張を防ぐため水分を排泄する。
しかし、バランスを保つ機構が乱れることもある。
体内生理が少し変化しただけで、ある部分の水分が増加したりする。たとえば、もし短時間でも排泄が止まれば、体内に水分がたまり、組織に過剰な負担をかけることになる。
このため一時的にせよ、人格が変わってしまうことすらある。

体内の水分が多すぎると、組織が緊張し膨張し、神経が興奮する。月の引力が液体バランスをくずすと、緊張が生じ、癇癪を起こしやすくなる。
体内にたまった水分の、神経や行動への影響でよく知られているのは、月経前緊張症候群である。情緒不安定やいらだちはこの症候群によくみられる症状で、バイオタイドの高まった状態とみなせる。月経前には、病院の救急室にかつぎこまれたり、精神病院に入院したり、犯罪を犯す頻度が高くなる。

月のさまざまなサイクル

月にはおよそ400に及ぶサイクルがある。月の引力に関したものでわれわれにとって重要なサイクルは、合衝サイクルと、遠地点ー近地点サイクル、日々の通過サイクル、そして日食ー月食のサイクルである。

磁場と生物コンパス

磁場は生体に少なからず影響を及ぼしている。
動物 ーたとえば鳥、魚、カタツムリなど の方向感覚である。
これらの動物は、地球の電磁場に現れる微妙な手がかりを感知し、電磁模様にそって進むので、巣への長い道のりを誤らずに進むことができる。
この生得的な能力は、"生物コンパス"と呼ばれている。

生物コンパスに関する研究結果

・実験室で実験装置を180°回転させ、地球の電磁場に対する虫の方向性をずらすと、虫の方向感覚は狂ってしまった。

・地球磁場と同じ強さを持った水平方向の磁場を回転させると、昆虫や高等動物がそれに反応し、しかも、時間や月齢により反応が変化した。

様々な研究結果から、生体は、確実な磁気コンパスをもっていることがわかった。

磁場を感受する能力は、方向を探るためばかりでなく、生理機能を統制するうえでも役立つと考えられている。
磁場を逆転させることにより、ある種の生物の生体リズムを180°変えることもできる。
周囲の"空間"ベクトルを変えると、生体リズムも変わってしまうのである。

月が地球磁場にもたらす影響

月は地球磁場に2通りの方法で影響を与えている。
一つは、弱いものだが、月の磁場が地球磁場に直接もたらす規則的な変動である。
もう一つは、月が地球磁場に与える間接的な影響である。月が天気に影響を及ぼすと地球の電磁場も変わる、といったぐあいにである。

生体は分かちがたく密接に、環境とつながっているようである。生体自身がダイナミックな電磁場であり、周囲の電磁場とも連続している。

イリノイ大学医学部教授のウィリアム・ピーターセン博士は、30年にわたる研究の末、人間の生体リズムと天気との間に相関のあることを立証した。
太陽、月、星などのサイクルが変化すると、それにしたがって、人間の生体リズムや天気も変化することがある。

博士は、出産や死亡、精神病の症例、新生児の性別比、死亡者の性別比などを調べることにより、人間集団にも生体リズムの見られることを立証した。死亡曲線は、精神病患者の入院数、出産数、天気などと相関していた。
"大気の潮汐"は、出産数、死亡者数、精神錯乱などと相関があった。
ピーターセン博士は、人々は一団となって宇宙の力に反応しており、宇宙と人々を結びつける媒介物は天気であると結論した。

博士は、満月直後には男児の生まれることが多く、新月には女児の多いことを見出した。天気にも同様な月のリズムを見出した。

ピーターセン博士は次のように述べている。
「地殻や海面が月の動きとともに周期的に変形するのは、目を引く現象である。このような力は、生体の水分分布にも影響を与えているかもしれない。影響を受けやすい器官や組織は機能変化を起こし、ひいては、バランスを失うかもしれない。
一般の人たちは、自分の体内リズムに変化が生じていることなど気づかずにいる。波の振幅があまりに大きかったり、ショックが突然すぎたりすると、適当な平衡状態をつくりだす余裕がない。こうなってはじめて、不快感や病気に気づくのである。」

磁場による体内水分の変化

イタリア・フィレンツェの物理化学研究所所長だったジョルジオ・ピカルディ教授は、地球磁場を通して天体事象が水の物理的性質に影響を与えることを発見した。

・コロイドの沈殿速度が、太陽活動、月齢、宇宙放射線、地球に対する惑星の運行、さらにその他の天体事象とともに変化することがわかった。

体内水分の物理的性質が変われば、水分の量、細胞膜を通り抜ける水の速度、血圧、そして心臓の拍動にも変化が生じるだろう。
同様に、水を吸い上げる細胞の力、組織間の電気伝導、ひいては神経の伝達にも影響が出てくると思われる。
水に関する"ピカルディ効果"は、電磁場を媒介として、天体事象が体内活動に影響を与えうることを示唆している。

ピカルディ教授はまた、緯度が異なると、水やコロイド溶液の物理的性質も異なることを発見した。教授はこの違いについて、緯度が異なると地球磁場の強さも変わるためだと説明した。

電磁場による生命の統制作用

地球を取り囲む電磁場と同程度の強さの電磁場を実験的につくり出すと、それは動植物や人間の生体機能に影響を与えることが、ソ連の科学者によって明らかにされた。
周囲の電磁場が乱れると、とりわけ成長発達過程に影響がある。
電磁場には動植物の細胞構造を統制するはたらきがあり、進化の際にも重要な役割を果たすようである。

動物同士の情報伝達の4つのタイプ
①群をなしている動物が、同時に同じ動作をとるときにみられるもの。
これは、魚や鳥の群が同時に方向を変えたり、ある種の昆虫がすばやく同一行動をとることなどに現れている。
あたかも"1つの意志"でつながっているかのようである。
これは比較的距離が短い場合にかぎられ、微弱な信号でちょっとした情報を伝えるのに用いられる。

②比較的ゆっくりした信号伝達。
これは多くの動物にみられるもので、遠く離れた相手を見出す不思議な能力と関係がある。

③集団や一つの種の中で、電磁場により個体同士がゆっくり情報交換する方法。

④動物の群が周囲の電磁場と相互に関わりあいながら行動すること

目には見えなくともきわめて重要な電磁気の世界が存在するということは、さまざまな研究から示されている。
われわれは電磁場を通してバイオタイドを定めるきっかけを得たり、コミュニケーションしたり、生命活動を統制したりする。
電磁場のおかげで、われわれは宇宙とうまく折り合っていける。

大脳の中の"太陽"と"月"


天体時間には太陽暦と太陰暦の2つなある。
これは理性に関する伝統的対立にも対応している。
つまり、太陽は合理的なものを表し、月は非合理で直感的なものを表す。

太陽と月のこのような関係は世界中の神話に数多くみられるが、文化面のみならず生理学的意味をももっている。
太陽や月のリズムはわれわれの体のリズムばかりでなく、脳の構造や思考そのものにも影響を与えているのである。

2つの大脳半球はあるていど独立しており、左右の脳は感じ方や考え方がまったく異なる。
左("太陽")半球は直線的合理的に情報を知覚し、処理する。
右("月")半球では直感や形態的知覚がはたらく。

このような双対性によるパターンは、生物の進化に本質的な役割を果たした。
動くためには対立する存在ご不可欠である。二本の脚を対立関係におくことで、歩いたり走ったりできる。
同様に、思考や創造性が望ましい発達をとげるには、知覚や思考の方法にも"月"(直感的)と"太陽"(合理的)のような対立が必要なのではないか、と私は考えている。

ヤヌス思考:
対立関係にある知覚や概念を融和させ、同時に扱うという創造的発想の方法。

かつてわれわれの祖先が重視した、月にもとづく思考方法やインスピレーションは、現代社会では無視されている。
あまりにも太陽的合理主義にかたよりすぎたため、創造的思考が生まれにくくなってきているのである。

宇宙から生物まで行き来する力

アインシュタインが確立しようとした統一場理論は、物理界に存在するさまざまな力を、単一の巨大な場の中の相互に作用し合う一部分として理解しようというものである。
つまり、あらゆる既知の力(核力、電磁力、引力)は分離不可能で、いつも一体となって作用しているという考えである。
統一場理論の考え方は、バイオタイドを理解しようとする際の助けになる。

統一場理論と同様の見地にたってみると、以下のことがらは密接とはいかないまでも、相互に結びついているようである。
①総降雨量、気圧変化、熱帯嵐、ハリケーンの発生といった現象にみられる大気の潮汐
②電離圏のイオンや電流にみられる月の周期
③地磁気の変動にみられる月のリズム
④乾燥した熱風の吹く季節にみられる、周囲のイオンの流れと人間行動の関係


宇宙は階層構造を内包する開放系をなしていると考えられる。
この階層構造の頂点には宇宙があり"底辺"には生物圏や生命がある。
この開放系の要素や力はどれもこれも、他のあらゆる要素や力と相互に作用しあっている。
階層構造のどんな部分で生じた出来事も、反響音となって他のあらゆる部分に伝わる。
生物圏で起きたことがらは、地球上の生物に影響を及ぼすばかりでなく、この開放系の他の領域にまで伝播する。
太陽面爆発により生じた磁気風は、生物圏に達して生命現象に影響を及ぼす。
て電波送信や核実験、人工の電流、さらにはエアゾールの使用でさえ、直接、生物圏に変化を引き起こし、その影響は大気上層部や太陽ー月ー地球系にまで達するのである。
われわれはつねに変動する宇宙の一部である。
生存のためにはわれわれも宇宙の変動に合わせて"満ちたり引いたり"しなければならないのである。




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