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【旅行記】いったん落ち着こう、パリジャン

「そうだ!パリにいこう。」
ということで、急遽、飛行機のチケットをとり、ホテルの予約をし、一週間ほどパリに行ってきた。途中で、ボルドーへ日帰りの遠足にいき、最後にリヨンに寄り道して、ハンブルクに帰るという旅程を組んだ。

今回の旅は、パリのシャルルドゴール空港に着いた瞬間から、「うわっパリだ。気を付けなあかんやつだ」っていう経験からスタートした。

まず、シャルルドゴール空港からパリ市内までアクセスするには、電車かロワシーバスという長距離バスで移動することになる。タクシーも固定価格で利用できるが、タクシーは確か50~60€くらいしていたので、3人とかで移動するときには利用を考えてもいいのかもしれない。今回は一人旅なので、もちろんタクシーは利用しなかった。

バスよりも、電車の方が早いが、治安が悪めな地域を通るせいで電車内でスリが多いというネット情報に加え、最近、電車の座席にトコジラミ(南京虫、ベッドバグ)が発生したというニュースを見たこともあって、バスを利用することにした。

というのも、実は、私、去年、スペインのマドリッドを訪れた際に、宿泊先のアパートメントで南京虫の被害にあったことがあるのだ。蚊とはちがい、刺されてから2~3日後に症状がでてくるので、すぐには気づけないのである。そして、気づいたときには全身が熱をもつくらい真っ赤にはれ上がり、日常生活に支障をきたすほどの痒みが襲ってきた。これが二週間ほど続くのだから悲惨である。痒みが収まったあとも、跡がきえず、肌のターンオーバーが二巡(6カ月)して、ようやく跡が消えた。あの経験をして以来、私は南京虫が本当に恐怖でしかない。ただ、実際には、SNSが拡散しただけで、どこにでもトコジラミがいるわけではなかった(本当によかった)。

話がそれた。こういう個人的なわけがあって、とにかくなんとなく電車をとっても利用したくなかったのである。

ただ、ロワシーバスはオペラ座の前までしかいかないので、そこからホテルまで行くのに地下鉄に乗る必要があった。地下鉄のチケットを毎回買ったりするのも面倒なので「Navigo Easy」というSuicaのようなカードを購入することにした。ただし、Navigoカードは、Suicaのように券売機で購入できず、窓口で購入する必要がある。しかも、課金ではなく、チケットを購入してチケットをチャージするというなんかよく分からない方式である。だからSuicaのように電子マネーとしては使えない。

Navigoカードには複数の種類があって、一カ月券や一週間券(乗り放題)などもあった。旅行には一週間券が便利なのかもしれないが、この一週間というのが、月曜日から日曜日までで固定されている。つまり、例えば、水曜日から一週間券を購入すると、日曜までの5日間しか利用できない(私の理解があっていれば)。でも値段は同じである。このナンセンスにも思える謎の価格設定はいまでも理解できない。しかも、乗り放題のカードを買うには、証明写真が必要となる。他人への譲渡を防ぐためなのだが、これもナンセンスな感じ。旅行客には非常に利用しにくい。

そこで新しくできたのが「Navigo Easy」というカードである。これを作るには、証明写真は不要である。しかし、先にも説明したように、購入したチケットを電子的にチャージするだけのものである。一週間券は22.8€するのに対し、Navigo easyは発行に2€、10枚綴り回数券に14.9€かかる。一週間乗り放題券を買った方がお得なようにも思えるが、パリ市内は山手線の内部とおなじくらいのサイズなので基本的には歩いて回れる。だから、10回分のチケットがあれば十分である(なお、1回のチケットで2時間は、電車とバスに乗れる)。何より面倒くさいので、Navigo Easyの一択となった(紙媒体でも1日~5日間の乗車券も売ってはいるものの、高い。例えば、1日乗車券は12€もする。日本円にすると、2000円弱。いらない)。

ちなみにドイツでは、アプリで電車のチケットを購入するのが一般的となっている。パリもアプリでチケットを購入できるのだが、決済手段のなかに、ペイパルもクレジットカードも含まれておらず、海外の人が利用できそうなのはアップルペイくらいだった。私は、日本でアップルペイの設定をし忘れていたため、承認用の数字を通知するSMSが、日本の電話番号にいってしまい、ドイツ番号を使用している今は承認ができない状態になっている。このため、アプリの利用は諦めるしかなかった。しかし、クレジットカードが決済システムから外れているのはいただけない。公共交通のシステム設計がなんか不便でセンスがない。利用者側の気持ちに立つという基本発想がないのかなと思ってしまうほど、、、

便利さでいうとロンドンは素晴らしかった。クレジットカードやスマホ(アップルペイ)をそのまま改札口の機械にかざせば、地下鉄、バス、船に乗車できる。そして、一定金額(一日8£だったかな)を超えると、自動的に請求がストップする。つまり、8£を払えば、そのあとは一日乗り放題となる。一日乗車券を買っても、もとをとれないこともあるので、こういうシステムは嬉しい。ただ、ロンドンの地下鉄もバスも、エアコンがないので、夏は長時間乗っていると、それだけで体力が奪われる。歩いた方がましなほどである。そして、なにより、電車が古くて汚い。パリの地下鉄は、ロンドンのそれよりはまだましだったがやはり古くて、エアコンがない。公共交通機関については、日本に勝る国はないと、はっきり言える。


さて、話がだぶそれてしまったが、Navigo Easyを購入するには窓口にいかないといけないことは前述の通り。ロワシーバスの到着先であるオペラ座の近くの地下鉄の様子が分からなかったので、大きなスーツケースをもって地下鉄構内で窓口を探したりすることになったら嫌だと思い、空港の窓口で、事前にNavigoカードを購入することにした。なお、Navigoカードにはロワシーバスのチケットもチャージできるとのことだった。

そこで空港に着いた直後、窓口に向かい、「Navigo Easy」を買おうとしたのだが、そこの窓口の担当者が、なんだか話が通じないのだ。
彼は「このカードはパリ市内でしか使えない」というので、
私は「わかってる。私はこのあと、ロワシーバスに乗ってパリ市内に入る」と答えた。
さらに彼は「ロワシーバスのチケットは、ここでは買えない」という。
私は、そりゃそうだろう、だってバスと電車で会社ちゃうやんかと思いつつ、「それも知っている。Navigoカードだけ買いたいのだ」と答えた。
しかし、なぜか担当者は納得せず、何度も同じやりとりをしてくる。なんでもいいから早くカードを買わしてくれ、2€払えば、あとは券売機で自分でチャージするからよ、と思いながら、どんどん時間がたってくことに、だんだんイライラしてくる自分がいた。

全然カードを買わしてくれないので、10枚綴り券をここで一緒にチャージしてもらえればいいのかと考え、10枚綴り券を付けてくれとお願いしたところ、ようやく納得したのか、カードを発行してくれた。ところが、購入したレシートをみると値段が高い。すると、彼が電車のチケットも渡してくる。なぜか購入するつもりのなかった、パリ市内行きの電車のチケットまで購入することになっていたのだ。
すぐにその場で、「電車のチケットはいらないから払戻しをしてくれ」というと、彼は、それはできないの一点ばり。担当者は「俺がどうやってパリ市内まで行くのか聞いたら、チケットを買うって君いったよね?」と言ってくる。私は、「いや、私が買うといったのは、10枚綴り券とNavigoカードだけで、ロワシーバスのチケットはあとで買うって言っただろう」と主張。しかし、このやりとりが何往復か続き、埒が明かないので、隣に座っていた担当者に助け船を出してもらおうと目くばせをしたら、隣に座っていた担当者が二人とも、まさかの彼の肩を持ち、私が悪いと責めてくる。あまりにもショックで言葉がでなくなったのはいうまでもない。

これがパリか。ドイツなら払い戻してくれるよ、、、

結局、なぜ払戻しができないのかは全く分からないままだった。こちらが「なんで払戻しができないのか」と聞いているのだから、少なくとも払戻しをしないのであれば、払い戻しができない理由くらいは説明すべきだろう。しかし、できないというだけ。聞いたことに対して回答が返ってこないことに、イライラとモヤモヤがさらに積もっていった。しかし後ろには行列ができている。仕方ないので、払戻しを受けずに電車に乗ることにした。

パリについた瞬間から、なんかもう辛い、、、

ちなみに、電車が悪いわけではない。なんなら電車の方が早くて、バスよりも1€くらい安かったかもしれない。しかし、さっきも説明した通り、いろいろな不安要素があったので、電車は避けたかったのである。それにもともと電車に乗る予定ではなかったから、電車がどの駅に着くのかもわからず、どこで地下鉄に乗り換えるのかもよく分かっていなかった。Google Mapsで検索すればすぐに分かることだが、この検索作業をすること自体にも何だか釈然としない気持ちが残った。そしてなにより、なんとなく詐欺にあったような気持ちにもなってしまう。欲しいといっていないものを買わされたのだから。

旅のはじまりがこんなスタートだったので、10年前に一度訪れたときのパリに対する印象(上を見上げたら綺麗だけど、下を見ると不衛生で、スリの多い場所)が瞬時に蘇ってきた。あぁここは他のヨーロッパの街とは違うのだ。もう嫌だなぁ、こんなとこにこれから6日もいるのかぁと気持ちがとても萎えた。ただ、今回は、前回がショートステイだっために行くことができなかったルーブルやオルセーなどの美術館にどうしても行きたかったのである。街の散策はほどほどに美術館に引きこもろうなどと弱気になる。

ちなみに、そのあと、電車に乗ってパリ市内に向かったが、車内は、そんなに治安は悪くなく、ジプシーがお金をたかってくる程度だった(ヨーロッパではどこでも見る光景!)。もちろん、トコジラミもいなかった(本当によかった!)。地下鉄にも無事に乗ることができ、ようやくホテルに辿り着くことができたのは、空港に着いてから2時間後だった。こんなに、空港からホテルまで行くのに時間がかかったことについては(本来なら1時間位で済むはずだった)、もうなにも考えないことにした。その日は、レストランで夕食をとったあと、翌日の美術館巡りのために、早めに就寝した。

翌朝は、よく晴れたとても気持ちのいい朝だった。オランジュリー美術館まで歩いていると、とある横断歩道で、バイクに乗っている男性が大声で自転車に乗っている男性に罵声をあびせている。なんやどうしたんやと思って観察していると、どうも自転車の彼は、自転車レーンじゃないところを走っていたようだ。一言だけ怒鳴る程度ではなく、信号の色が変わるまでずっとすごい剣幕で怒鳴りまくっていたので、ぎょっとしてしまった。私の爽やかな朝はすっとんでいった。

そしてその日の夕方、美術館鑑賞が終わり、夕日が沈む中、美しくそびえるエッフェル塔を眺めながら帰り道の散歩を楽しんでいたときのこと。自転車に乗っている女性が私の向かい側から横断歩道を直進しようとすると、右折してきたバイクとぶつかりそうになり、かなり危ない瞬間があった。すぐさま女性が、バイクの男性に向けて中指をたてて、大声でFワードを発する。これにはびっくり。女性が汚い言葉を大声で叫ぶ姿をあまり見たことがなかったからかもしれない。どうかジェンダーだとか言わないで欲しい。否定しているのではなくて、ただびっくりしただけである。

もちろん街中では、ずっとクラクションが鳴らされまくっている。

こんな光景を見ていたら、
もうね。パリジャン、いったん落ち着こう笑
と笑うしかできなくなった。

パリに到着して二日目。ようやく前日に起きた出来事や、不便さや、カオスな感じ(建物の上からはなんか水がぽたぽた飛んでくるし、水が道路の下からあふれかえっていたりもする。理由は分からない。建物やインフラが古いからなのか。。。)を受け入れて、笑うことができた。こういう街なのだから、これを楽しむしかない、よね笑。

心に平穏がもどってきた瞬間だった。

(まったく触れてないですが、美術館は素晴らしかったですよ!一級品ばかり)



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