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人生の傾奇者

 今回のnoteで「人生の」シリーズは終わる。私が今まで書いてきた題材の人の順番はルーレットで決めていたが、この人が最後となるに相応しい人だったと思う。私の中で印象的なのは、その人自身の生き方と、何をしてきたかの経歴と、守るべきものがある事に対する覚悟である。

 最初に言っておくと、私が使っていた言葉は全てその人を否定しようとしたり、嫌悪しているから使用しているのでは無い。今までの付き合いがそれなりに長くなっているのもあるので誤解を恐れずに書いている。

 彼女と出会ったのはもう数年も前になる。当時の私は確かフリーターの真っ只中であった。適当に入った和食系の居酒屋で日本酒を嗜みつつ、今まで食ってきたバンドマンでバンドが組めるという話を聞かされた。この当時はまさかここまで関係が続くとも、また彼女が隠していた嘘を知る事もなかった様に思える。彼女の生き方は単純明快で、突飛な刹那主義であり、過去から今までの行動原理は全て「今が楽しいなら良い」というものから来ている感覚であった。対する私の早死にしたいと言う願望は、「未来を犠牲にしてでも今が楽しくありたい」という未来の事を少しばかり考えている未練がましい思想の産物であり、純粋な刹那主義を羨ましく思った。
そんな彼女に影響されてなのか、私の日本酒好きは彼女へ憧れがきっかけになっている。

 彼女の経歴に関してはここに詳細は書けないが、私の友人には到底あり得ない経歴を持っている。また今やっている彼女の金の稼ぎ方も、周りの人間にはないやり方であった。自慢話をよく聞かされるが、基本突飛な話なのもあってか聞くのが楽しい。喋りも上手かった。

 ここ数年の付き合いの中で、彼女が私に対して嘘をついていた事があった。
「ここまで長く付き合いが長くなるとは思わなくて…今まで嘘ついてた事を正直に話すね。」
その後に出てきた内容は、私と彼女の関係が壊れかねない事であった。言葉そのまま、彼女には守るべきものがあった。それを今まで隠していた。
聞いた当時は驚きよりもどちらかというと安堵が大きかったが、境遇の似ている友人に相談しつつ考えると、これからの関係をどうするべきなのかは絶対に答えを出さなければならないのは明白であった。だが、未だに答えは出ない。私の悪い癖が出ている自覚はありつつも、そんな簡単な感情で答えを出せる人間がいるのなら私は軽蔑するかも知れない。
ただ私はどんな選択をしようとも、彼女の事を応援する気持ちは忘れないだろう。長生きしてくれ。

私の周りには「変な人」が集まるが、彼女は「変な人」ではなくて「世の中を練り歩く傾奇者」と言うレッテルの方が合っていると思う。また、そう思わせる生き方も、自然と惹かれてしまう光り方をしているものである。

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