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E判定からの逆転面接 ①総論   by 茶茶 サティ (無料原稿)

 1,E判定

 最初に宣言します。

 国公立大学の入学試験において、共通テスト(以前の大学入試センター試験でも)後に各受験業者が出してくるリサーチでE判定が出ていた場合、その判定は正しいのです。

 正しいということは「受かる可能性はほんの少し」、簡潔に言うなら「落ちる」ということです、このままなら…

 業者によって差はありますが、ボーダーラインあたりでC判定(合格可能性50~60%)程度ですので、今までの模試通りの二次試験の出来ならば合格は半々(フィフティ フィフティ)といったところ。まあ誰かさん流だと「ハーフ&ハーフ」なんてピザ屋さんみたいになっちゃいますがね。 

 実際入試の結果が出そろったあとに分析をすると、だいたいそんなものになります。BやCだから大丈夫、ということはないですし、Dだから絶対ダメということもありません。

 しかし… E判定から合格を勝ち取るのはほぼ不可能です。 

だからといって絶対に不可能とも言い切れないのが悩ましいところ。それが受験の大変さでもあり、奥深さでもあり、担当としての腕の見せ所でもありました。

 
さあ、宣言に戻ります。

E判定を覆して合格したケースのほとんどは…
 ①運動や芸術系など、実技重視で配点が非常に大きい場合
 ②二次試験に「配点の大きな小論文または面接」が含まれる場合
でした。

 これは予想ができることですよね。ウラを返せば、通常の二次試験の場合、逆転合格の余地はない、ということです。

 

 たいていの受験生は夢を見ます。出願したとたん、もう合格した気になってしまうのです。なんやかんや言っても、それぞれ勝算を胸に出願するのですから。県下有数の進学校の優秀な学生でさえ、甘い夢を見たがるものなのです。

 「D判定だけど、ボ-ダーまであと3ポイントだからほとんどCみたいな
  もの… 二次試験は得意な化学だから、きっと逆転できるはずだ… 」

 精神論を敢えては否定しませんが、こと入試の出来や採点にはなんの役にもたちません。初見の受験生の答案に気合が籠っているかどうかなど、誰にもわかるワケがないのです。そこにあるのは冷徹な採点と結果集計だけ。

「たった3ポイントだから」と見くびることによって、この3ポイントが致命傷になりうるという冷厳な計算上の事実を受け入れていないことが多いのです。

 

2,ボーダーライン


 それを軽く試算してみましょう。これも受験生相手に、目の前でやって見せることも大切なんです。

 たとえば共通テストが800点満点として、受験生の得点率が70%(560点)、ボーダーが73%(584点)だったと仮定します。この段階ではっきりさせておきたいことは、たったの3ポイントだと思っていた差が、実は3× 800/100 、つまり24点もの点差であることです。

 さあ、この点差を逆転するにはどうすれば良いか… 二次試験でがっつり稼げたならば可能かもしれません… と誰もが考えるワケです。

 ここで二次試験の科目の設定をしてみましょう。例えば文系なら英語と地歴公民(地理は使えないことが多い)の2科目400点(一次:二次=800:400)とか、あくまでも仮で結構です。理系なら、数学Ⅲと専門理科1科目計400点とかが妥当でしょうか。ここでは話を単純にするために「化学1科目400点」と仮定しておきましょう。 

 この400点の二次試験で、アナタのライバル、つまり一次の共通テストでボーダー得点だった受験生が60%の得点をしたとします。これは400点満点中の240点に相当しますよね。二次なら6割取れれば、まずまず安全圏と言えるでしょう。

 ここまででライバルの一次+二次の総得点は一次584+二次240=824点です。これを1点でも抜かないと、あなたの合格は怪しくなります。

 824点-(受験生の共通テストの得点)560点=264点ですから、アナタは66%以上の得点をする必要があります。

 お気付きですよね。共通テストの3ポイントの差が、二次試験では6ポイントの差になったことを。同じ学部学科を選んだのですから、ライバルだって二次試験は得意科目である可能性が高いのです。そういう中でライバルに対して100点あたり6点以上の差を付けてリードすることがどれだけ難しいことであるか。

 6点と言えば100点について小問2~3個以上はライバルよりも余計に余計に正解を出す必要がある、ということなんです。そんなことが意識してできるくらいなら、共通テストでボーダーを下回るようなみじめな思いはしなかったハズでしょう?

 だから書きました。この3ポイントが致命傷になりうる、と。無論、配点比によって状況は少しずつ変わりますが、二次試験比が高い難関校はともかく、普通の国公立大学ではそう簡単に逆転はできません。

 ただし運によっては出題が「当たり」、つまり得意分野が出た、直前に勉強してたところが出たなど二次試験、または私立大学の一発入試ならではの幸運が期待できるかもしれませんが、そこは神のみぞ知るところ…ですよね。これを計算に入れちゃいけないと、私は思います。

 C判定に近いD判定でもこの状況です。ならE判定なら無理じゃね?
そのとおりです、ただし学科試験なら。


3,実技試験

  でも科目と配点によっては、実技等が大金星に繋がったケースは幾度もありました。具体的にはスポーツ系、デザイン系、芸術(美術、音楽)系あたりです。

 「あの大学の、あの学科にウケるデッサンは…」
 「この大学の、○○教授にはこういう弾きかたが…」

 そういう声を何度も何度も聞きました。正統的勝負なのか、容姿や好みが入るのか、何らかの口利き(賄賂的裏口的枕的?)が介在するのかは知りませんが、通常では有り得ない合格を果たすヒトもいました。

 某県立大学○際○係学部の二次試験には「面接」が含まれていましたが、高校教員の間では、『どうも可愛い娘だと受かる傾向が…』とささやかれていたほどでしたからね。

 おっと。実技の話しでした。
正直実技はわかりません。

 ですから… これから述べるのは、配点の大きな「小論文や面接による二次試験」のケースです。どちらもテストでは測れない、そして客観的な評価が難しいという共通点があります。

 敢えていうなら…採点者の「好み」で、得点がどんぶり勘定的に決まる教科なんですね。

 

4,挽回の条件


 共通テストが終わると、進路担当からそれぞれの専門分野の教員に押し付けられます。もちろん予定通りに、予定以上に得点できた生徒さんもいますが、中には「失意の迷い人」も居るワケでして…

 これから紹介する手段は、誰にでも適用できるものではありません。切羽詰まったどうにもならない状況だけど、ホントのホントのラストワンチャンに賭ける勇者… というか、ほぼ敗者であることを覚悟した受験生に施す術です。正統的な小論文や面接では合格は掴めない、言い換えると良いように目立つ存在でなければ合格できないことをわかってもらえないと、この策を実行することは困難ですし、あとあと互いの信頼関係に亀裂が生じてしまうでしょう。

 また受験生の側にも必要な資質があります。

小論文の場合には
 ①ほどほど判別できる文字が書けること(綺麗ならベター)
 ②ほどほど専門用語と漢字が使えること
 ③ほどほど表やグラフが読めること
 ④ほどほど首尾一貫した、理屈の通った文章が書けること。
 ⑤何らかの実績や研究、スクラップや収集等ヲタク的な経験があること 

面接の場合には
 ①ほどほど明るく楽しそうに相手の方を向いて話せること
 ②ほどほど専門用語と漢字が使えること
 ③ほどほど表やグラフが読めること
 ④ほどほど短い話を、順を追って語れること
 ⑤何らかの実績や研究、スクラップや収集等ヲタク的な経験があること

  もう、勘の良い方なら狙いが分かったかと思います。


 相手(大学)は
『小論文や面接で志願者の資質を見抜いてやるぜ』
と豪語しているも同然ですから、こちらだって
「見抜けるものなら見抜いてみやがれ!」
とあらん限りの手段と謀略を巡らすワケなんです。

 その謀略とは… ありていに言えば一点突破(山をかける)です。

 もう今更はじめから勉強だの復習だの… という時間はない。だったら、論旨を強引にこちら側に引き寄せて、ヲタク的に知識やら見解やら、研究というものに必要な「熱心」という資質を見せつけようという作戦なのです。

 あとは… それをいかに「自然にできるか」という演出演技を、練習を通じて訓練するのです。

 これはある意味「戦争」なので、とにかく勝たなきゃ意味がないのです。1点差だろうがビリだろうが勝ちは価値で、健闘も善戦も負けは無価値という世界ですから。

 
 ノルかソルかの闘いゆえに、最初の面談では気を入れて受験生を観察(大規模校では同じ学年でも知らない生徒はザラ)し、どの手段で行くかを見極めていきます。

  そのうえで
 ⑥落ちる可能性が圧倒的に高いこと
 ⑦滑り止め、または浪人の覚悟の有無を確認すること
 ⑧勝機を見出すには、やや詭道(きどう)を用いる必要があること
 ⑨受験生が面接官を「自分が語れる話題に誘導する」必要があること

 などをよく話しあい、互いに確認しておきます。同意が得られなければ、即時この案は捨てましょう。
 特に⑨についてはどんなものに興味を持ち、どの程度まで熱心だったのかなどの情報を充分に集めておきます。

 くだらんお辞儀の練習で、やれ姿勢がどうの角度が浅いだの無駄な時間をかけるより、話す中身を充実させる方がよほど大事でしょ?
 考えてみてください。無礼なものは別として、そんなことでいったいどれだけ減点すると言うのですか?

 逆に
『今の生徒はお辞儀の角度が良かったから合格させましょう』
なんてことがあると思いますか。普通であればなんの問題もありません。

 各論は後回しにして、今回はここまでとします。いずれ発表する対策例(化学、生物)は受益者負担の有料にしようかな、なんて考えてます。もし広がってしまったら、せっかくの「ニッチの隙間を衝く」意味が減じてしまいますからね。

 受験生の皆さんはブクマしておいていただきたいですが、今はとにかく正統的に得点を重ね、余裕で合格することを考えていきましょう。

 ここで述べていくことは最後の最後の、「蜘蛛の糸」の御話なのです。


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