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入国して10分でぼったくられた話

海外に行くと現地語を解さない観光客相手に悪質なぼったくりを繰り返すタクシー業者はどこにでもいるが、コイツらにまんまと引っかかってしまったので自戒としてこの時の話を書こうと思う。

事の発端


2024年3月20日。中央アジアのカザフスタン・アルマトイ国際空港の到着ロビーに出た途端、明らかな観光客の風貌をしていた為だろうか、TAXI! TAXI!と、明かりに群がる虫の如く客引き達が周りに集まってきた。鬱陶しいなと思いつつもここまでは想定内で、奴らは相場よりだいぶ高い言い値で様子を伺ってくる。こういった客引きは無視するのが当然正解である。そもそも自分はカザフスタンに去年も一回入国していて、カザフでのしつこい客引きも初めてではないのだから引っかかる訳がない(と思い込んでいた)。

旧ソ連諸国の大都市ではYandex Goという配車アプリが普及しており、そこに出発地と目的地を打ち込めば適正価格がわかる。Yandexで配車されたタクシーに乗れれば、ApplePayで前払いして現金や会話のやり取りなしに目的地へ行くことができるし、たとえ現金払いの際に到着地で法外な金額を請求されても、アプリ内に表示された金額を水戸黄門の印籠ばりに提示してやれば運転手も引き下がってくれるのだから、基本はこれを使ったほうがいい。

Yandex Go
金額、所要時間、配車にかかる時間などが明示される(日本語非対応)


この日も当然Yandexに配車して貰うつもりだったが、ここである1人のおっさんに話しかけられた。

「兄ちゃん!タクシー探してる?」

「どうせ高いだろうからやめとくよ」

「何処まで?そこのホテル(ドミトリー)だったら他の客も近くまで乗せて行くし900テンゲ(₸)で乗せてやるよ!」

これは相場よりかなり安い上に、他の客もいるとなるとマルシュルートカ(маршрутка;乗合バス)みたいなやつかなとまず考えた。Yandexの値段を見てみると1780₸。本当にこれの半額くらいで行けるなら魅力的だし、ぼったくられても10000₸くらいには収まるだろうからその時は勉強代として払ってやろうと思った。

(とは言えこれがマルシュとは確定していないし、1780₸≒600円、900₸≒300円なのでケチるところではない。)

この判断が仇となるのはこの時知る由もなく(アホ)、この誘いに乗ってしまったのであった。

乗車

案内された車は普通のセダンでマルシュっぽくはない。おっさんが言っていた通り客らしい若い男も先に乗っていたが他に客はいなさそうだ。その若い男は何故か助手席に乗っていた。この時点でだいぶ怪しい。こいつらグルだ。Twitterか何かで、とある途上国で2人の乗務員が乗るタクシーに乗車した際に脅され金品を盗られた、と言った投稿を見たこともあったので、この時点で警戒はMAX、いざとなればパスポートとクレジットカードだけ持って逃げられるように準備していた。

助手席の若い男はずっと黙っていたが、おっさんの方は話好きで、英語やロシア語を介して運転しながら俺にたくさん話しかけてきた。カザフスタンの経済はドル高の影響を受けて衰退している、とか、自分のは他と違って明瞭会計だ!とか(実際は全くそんなことはない)、そういう話をしていた。

自分の拙いロシア語も頑張って理解しようとしてくれたし飯が美味い店も教えてくれたから、この時まではなんだ、割といい人じゃね?と呑気に構えていた。

↑運転は荒いし前向かないから怖いけどそこそこ楽しい

値下げ交渉

25分程でホテルの前に着いた。言い値通りならば900₸なので、ここで1000₸札を出してお釣りはいらないぜ!じゃあな!と颯爽と降りようとした。が、おっさんは32000₸だけど少し値引いて30000₸でいいよ!などと訳のわからない事を言い始めた。おめーそれ言い値の何倍だよ..この国のぼったくりは加減を知らないのか?

自分はおかしいだろ!お前は空港で
「900₸で安い(よく考えたら怪しすぎる)ぜ!」
と言っていたじゃないか!と当然猛反発。おっさんも負けじとそんなことは言っていない!最初からこの金額を提示していた筈だ!と反論してくる。助手席の若い男も、お前さっさと払えよ、俺が困ってんだろみたいな事を言ってくるし。本当に客なら俺の味方しろよ。やっぱりこいつはグルだ。

お前が900₸だと言ったからそんなに金は持っていない!2000₸くらいならくれてやるからさっさと車から降ろせ!と言っても、若い方の男が
「兄ちゃん、さっきATMで金下ろしてただろ?金ないならATMまで連れて行ってやってもいいぜ」
と脅してくる。お前そこから俺に目付けていたのか。もう若い男の方も仲間だという事を隠そうともしない。

完全にやられた。国外で馴れ馴れしく話しかけてくる奴は全員詐欺師だと今まで散々学習してきた筈なのに。やっぱり日本人以外信用できねえよと後悔しながら、最後の砦であるYandexを開く。これで適正価格を提示して値下げ交渉するつもりだった。が、それも虚しく空振りに終わる。コイツらの言い分としては、それは他社の価格設定で俺たちには関係がないと。だとしても他社と15倍以上の価格差が生まれる訳ねえだろと思いながら、でもコイツらが常識とか倫理観持ってたらこんな事しねえよな、と妙に納得してしまった。

こうなったら1₸でも値下げさせるしかない。25分くらいしか乗ってないのに30000₸≒10084円は到底納得できる金額ではないからだ。東京でタクシーに乗っている訳じゃない。先進国と比較してタクシー代が激安なのだからバスに乗らずにタクシーを拾ったのであって、こんな法外な金額を黙って払う訳にはいかないのだ。

30分程粘ってようやく15000₸≒5042円に値下げさせた。でもこれ以上は絶対に値下げはしないと言ってくる。自分ももう疲れきっていて、30分もコイツらの時間を奪えたし、自分からしたら30分で5000円以上回収したとも言える。もうギブアップだ、と大人しく15000₸を差し出した。結局Yandexの10倍弱も搾り取られ本当に萎えた。コイツらからしたら良いカモである。

途端にコイツらの表情は明るくなり、兄弟ありがとよ!いつ帰国するんだ?空港まで行く時は俺たちに電話してくれ!と番号が書かれた付箋↓を渡された。現金な奴らである。二度と乗る訳ねぇだろタコ。

お前いつ帰国するんだとうるさいので、1週間後の午後4時にまた空港に戻るからここで待っててくれと伝えた。本当は5日後にはアルマトイを発つ予定だったが、少しでもコイツらの営業妨害をしたかった。

ホテルでチェックインしている際に、レセプションのおばちゃんに「空港からタクシーに乗って15000₸払ったんだけど、ぶっちゃけ法外な金額だよね?」と聞いたら、「相場は2300₸くらいよ。可哀想に。彼らは”bad driver”ね。」と慰めてくれた。ありがとう。

結論





初めからYandexでタクシー呼べ。


終わり

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