第12回 『プロローグ』from 『レ・ミゼラブル』

わたし薛 珠麗(せつ しゅれい)、本業は翻訳家/演出家ですが、2012年から【英語で読むミュージカル】と題した講演活動を行っています。
ストレートプレイもミュージカルも手掛けてきた経験から、海外ミュージカルの英語歌詞を【英語戯曲】として読み解く__といった内容です。

それというのも、実は日本語の歌詞というのは、同じメロディに載せた時、英語歌詞の3分の1か4分の1の情報量しか入らないのです。

ミュージカルの英語歌詞を読み解けば、大好きなミュージカル作品との更に深く豊かな出逢いが、待っている‥‥!

こちらでは【英語で読むミュージカル】Webコラム版として、ミュージカルの名曲を【ほんの数行、時には1行】だけピックアップし、じっくり読み解いてきました。約3か月間で、計12本のコラムをお送りしてまいりました。今回が最終回になります。

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最終回は、第1回にも取り上げた『レ・ミゼラブル』に再度、光を当てます。今回は『プロローグ』から、主人公ジャン・バルジャンの司教との出会いの場面を中心に、物語を読み取るポイントとなる台詞を幾つかピックアップし、この壮大な愛の物語が如何に起動するかを読み取ろうと思います。

1985年にロンドンで初演し、今年30周年を迎える『レ・ミゼラブル』は、世界各地で上演されている他2012年には映画化もされた、世界で最も愛されるミュージカルの一つです。日本でも初演から28年になる今年、2年ぶりの上演が決まっていますね。

『プロローグ』で、主人公ジャン・バルジャンは19年にわたる懲役を経て【仮釈放】の処分が決まり、牢獄を後にするも、世間の冷たい風にさらされます。そして怒り傷ついた末に、ある教会の司教に食事と一夜の宿を提供されます。しかしバルジャンは、その恩を仇で返します。教会の宝である銀器を、彼は盗み出すのです。すぐに警察に捕らえられて司教の前に突き出されたバルジャンはしかし、思いがけない言葉を司教にかけられます。赦され、未来を与えられたバルジャンはそこからの人生を、その赦し、救いに報いるために生きるのです。『レ・ミゼラブル』は、一人の男の生涯をかけた贖罪を描いているのです。

さぁ、お持ちの方はCDやDVDを流しながら‥‥
お持ちでない方は、YouTubeでみつけて‥‥
(本文の文末では「あまり詳しくないから、どれを聴いたらいいかわからない」という方のために、個人的オススメのご案内もしています!)

それでは、どうぞ!

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