ゆり

いったん最近の感情を記録しておくわ。まぁ明日死んだらこれが遺書ってことか(嫌)。遺書は一年に一回くらい書き直してるからいつ死んでも大丈夫ではある。毎年違うこと思ってる。けどこの時期は絶対同じ感情になる。この時期になると、私の家から一番近い踏切に、花束が置かれている。毎年。もう四年目になる。それはいつも、白い百合がメインの花束で、私はその花束の受け取り主を、勝手にユリと呼んでいる。
ユリはロングヘアの18歳で、好きな色は白と黒。他にははっきりした色が好き。好きな食べ物、さつまいも。スターバックスのマンゴーパッションティーフラペチーノ。今日コンビニで買ったハオウーロンというマンゴー味の飲み物は、その味と近かったから、教えた。ユリは中高は吹奏楽部でクラリネットを弾いていた。私は他の部活に所属していたが、ほぼほぼ帰宅部みたいなものだったので、部活の時間はクラの練習室に割り当てられた第二音楽室を覗き、まだ帰れないユリをよく茶化した。ユリは声は出さずに、手でしっしっという動作をする。私は駅前の寂れたショッピングセンターのフードコートでポテトを食べた。制服姿のカップルが、向かい合う形ではなく、横並びに座っている。人目も憚らず寄り添い合う。部活を終えたユリが私の正面に座る。

「またポテトかよ」
「このしなしな具合がまた良いの」

六個入りを買うとなぜか八個入れてくれる、粒の小さなたこ焼きを食べるユリ。

「そういや別れた」

だからいつものしっし、にキレがなかったんだね、ユリ。
ユリは恋人なんていなくてもユリだし、ユリのアイデンティティはそんな恋人じゃないし、別れて正解じゃない?ユリが持っている小さいお弁当にいつも入っている卵焼き、前日にユリが巻いてる。家庭科の調理実習でゆで卵作った時、私が卵落としてやばいって顔してたら、
「卵焼きにすれば良いじゃん」
って言った。もう床に落ちてるから、卵焼きにすらできないよ。今は卵高いしさぁ、もうこんな勿体無いことできないね。落ちても卵焼きに復活させるくらいしないとだよね。ゆで卵、ほんとは半熟が好きなのに、授業だから、茹で時間先生に決められてだるかった。

私は爪を噛む悪癖があって、直したいんだよねって言ったら指にマニキュア塗ってくれた。そのおかげで一日噛まないでいられたけど、次の日噛んじゃった。ごめんユリ。ユリは自分のメンテナンスを怠らないし、いつ見てもかわいい。歯並びもいいし、直毛だし、生まれつきどっちも二重だよね。私は歯がガタガタだし、癖毛だし、目が二重なのは左だけだよ。ユリは神様が特別に手をかけて作ったみたいな子なのに、どうしていつも悲しい顔するの。恋人に依存しないでほしい。ユリはユリの足で地球を歩いてほしい。恋人に寄りかかるくせに、私に向ける瞳はどうしてか、諦めたような色なのなぁぜなぁぜ?またあおーよ。帰り道の公園行こうぜ。電気の壊れたチャリで走ろ、雨の中全力でチャリ漕ごうよ。プリクラ撮ろ。ユリなぜか落書きうまいし。気合い入れすぎ。私が盛れてないやつインスタに載せるのやめて。あと携帯に送る二枚、勝手に決めるのもやめて。ハンター文字で手紙書いてきて、即興で解読させるのやめて。大学でもクラ続けたらよかったじゃん。てか、今お芋シーズンだよ。コンビニで全部買ってきて食べ比べしようよ。どうでもいい映画見よう。カラオケで歌う曲無くなってきたら急にボカロ縛り始まるやつもまたやりたい。そーいや駅前にタリーズできるんだって。聞いてる?花火、結局できなかったね。私がユリの最後の希望でありたかったな





ユリは私のイマジナリーフレンドです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?