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昔の遊び相手と再会した話

「あれ、もしかして〇〇さん…?」

アルコールに浮かされた身体が、人熱れと喧騒に包まれる中で、私の名前だけがハッキリと聞き取れた。

男性にしては少し高めで、聞き覚えのある優しい声色。
私は、声のした方を振り向いた。

まず目に入ったのは綺麗な銀髪。
そして、パッチリとした目に、透き通った鼻筋。

 

----間違いない、あの子だ。


私が彼の連絡先を消す3年前までは、大人の関係として、互いを良いように利用していた。
私に彼氏が出来たことにより、一方的に連絡先を消したため、まさかこうして再会するとは、思ってもみなかった。

突然の情報量にグルグルと脳が掻き回されるこの感覚は、酔いなのか、はたまた混乱によるものなのか
この時の私には、それを思考する余裕は無かった

久々に会った彼は、あの頃の可愛らしさをそのままに、少しだけ"大人の男性"らしい魅力があった
彼の隣に目をやると、いかにも東京らしさを身にまとった女性が2人
どうやら向こうは3人で飲みに来ていたらしい


「また会えて嬉しいです。突然連絡が取れなくなって、もう会えなくなるのかと思いました。結構落ち込んだんですよ……?」

寂しそうな声色を乗せた彼は、私よりも15cm以上高いはずなのに、一回り小さく見えた

「ごめんね。私、彼氏が出来たから連絡先全部消したんだ。」

更に小さくなる彼。

「分かりました。幸せになってくださいね?」

その時の彼の顔は、全部の絵の具をぶちまけたような、様々な感情が垣間見えた。



-----これで良かったんだよね?



そう、自分に言い聞かせながら口に流したビールは、いつもより苦く感じた










2023年5月11日



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