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アメリカ ルート66を巡る旅 16 アリゾナ州 西部

今回は、アリゾナ州の西部を紹介します。この地域はルート66のイメージが最も色濃く残る場所、そして観光地としても充実している場所です。ロサンゼルスやラスベガスからもレンタカーで気軽にアクセスできることもあり、いつも賑わっています。そして映画「カーズ」の舞台にもなっているので子供たちにも人気のスポットです。

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ウィリアムズのダウンタウン

<Williams >
ウィリアムズは、また古き良きアメリカが残る街です。ただし、この街はグランドキャニオンへのゲートウェイとなるので、今まで見てきたルート66の街のように寂れていません。街の両端にはいくつも近代的なモーテルが並んでいます。グランドキャニオンが混んでいるときはこの町で宿泊する人がかなりいるのです。でもメインストリートは懐かしい雰囲気が漂っています。おそらく街が開発を拒んでいるのでしょう。古いアメリカが残るウィリアムズは、観光客にとって観光しやすい環境になっています。
ウィリアムズのメインストリートはそれほど大きくありません。駐車場に車を止めたら、あとは歩いて街を観光できます。ルート66が華やかだった頃の面影を残しつつ、現在の観光客相手に商店はアップデートされています。古い外観のピザさやんでは美味しいピザを提供。懐かしい感じのカフェでは、美味しいコーヒーやケーキを提供しています。この町ではちょっと時間を取ってのんびりとメインストリートを歩くのがお勧めです。
街の中心にある鉄道駅はグランドキャニオンに向かう観光鉄道です。今でも蒸気機関車が動いていて、まるで西部開拓時代に迷い込んだような雰囲気です。
ウィリアムズは、グランドキャニオンへの観光客、そしてルート66を旅する観光客の2つの集団によって成り立っている街です。この珍しい活気ある古いアメリカの街は、ルート66を全線走破できなくても、是非寄ってほしい場所です。この街だけでルート66の全盛期を思い描くことができます。

セリグマンの土産物店

<Seligman>
忘れ去られていたルート66を復興しようと頑張って再興した方がいます。ここセリグマンの床屋さんです。彼は既に他界されていますが、今でも彼の店がお土産物屋さんとして残っています。そこには映画「カーズ」に登場した車のレプリカが展示されています。ジョン・ラセターはじめスタッフたちは映画を作る前にルート66とこの街や住人を取材しています。そこから映画にストーリーを展開していきました。なので、この町を歩くと至る所に「カーズ」の面影を感じることができるのです。店舗が数点しかない小さな小さな町ですが、ゆっくりと歩いてみるとさまざまな発見がある不思議なスポットです。

映画「カーズ」のふるさと

<Peach Springs>
セリグマンから次の街・キングマンまでの旧ルート66は、大きく北に迂回します。かつては、セリグマンの西に山がありまっすぐ道路を通すことが不可能だったからです。現在は州間高速道路40号線が山を貫き走っているので、この2つの街は簡単に行き来できますが、昔は2時間近く迂回していたのです。アリゾナの旧道ルート66は、州間高速道路40号線になり、かつての面影は多くの部分で失われたのですが、この迂回ルートは、かつての道がそのまま残っている貴重な場所でもあります。
セリグマンからキングマンまでは、40号を使わずにのんびり北に迂回した旧道を走ることをお勧めします。ここには、よく写真で見かけるルート66の面影が集中して残っています。そして忘れ去られた街がポツンと残っています。それがピーチ・スプリングスです。この辺りはインディアン自治区です。アメリカであってアメリカではない町。あまりに小さく、うっかり通り過ぎてしまいそうな町ですが、人が住んでいます。かつて旧ルート66沿いの街はこんな感じだったんだろうなあと思える寂しい場所です。

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ルート66を転がるタンブル・ウィード

* コラム*
この辺りを夏の終わり頃走っていると、タンブル・ウィードに出逢います。西部劇に出てくるコロコロと転がる草です。時にはかなりの数になり道を塞ぎます。この草は乾燥して丸くなっている訳ではなく「タンブル・ウィード」という種類の草なのです。夏の終わりになると、根を切り離し転がることで種を広げているそうです。まるで西部劇の世界のようなタンブル・ウィードに出会うのもルート66を旅する楽しみのひとつです。

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ハックベリー・ジェネラル・ストア

<Hackberry>
ピーチ・スプリングスから10分程走るとルート66にあるハックベリーという町。町といってもポツンと建物があるだけです。この建物がルート66で有名なHackberry General Storeです。元はガソリンスタンドとカフェだったと思いますが、今は土産物店。そしてルート66らしい古き良きアメリカの車や小物を展示しています。撮影ポイントとしては素晴らしいのですが、店内をよくみると、ちょっと薄気味悪い感じもあり、楽しめます。
この先にはRoute 66 Visiter centerやレストランがポツポツとありますが、かなり寂しいところなので昼間に行くことをお勧めします。夜は真っ暗です。この辺りは旧ルート66の脇に鉄道が走っています。アメリカの大きく長い貨物列車が通るのも絵になります。

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懐かしいサインは失われつつあります。

<Kingman >
キングマンは、かつてはルート66の宿場町として栄え、現在はアメリカを東西に走る高速道路93号線とラスベガスを結ぶ要として栄えています。この街にはほとんどのモーテルチェーンとレストラン・チェーンが道路の両側にびっしりと並んでいます。沢山のガソリンスタンドもあります。ルート66を旅するならこの街に一泊するのもいいでしょう。ロサンゼルスからラスベガスへレンタカーで向かう人は、バーストーからラスベガスに直行せずに、この街経由で旅するとアメリカドライブが楽しめます。
キングマンには、当然ルート66ミュージアムがあります。ここには、かつてルート66が栄えていた頃の写真などが展示されています。しかし、街は結構開発が進んでいて、写真のような古き良きルート66の面影はあまり残っていません。マクドナルドや、ホリデイ・インなどの看板が目立ち、よくある現代のアメリカの郊外の街といった感じです。

キングマンを出ると、40号線は旧ルート66を離れ一気にニードルズに向かいます。旧ルート66はOatman Rd(10号線)となります。道は山道を登り峠を越える険しいルートとなります。

まるで西部開拓時代に迷い込んだような町

<Oatman >
オートマンへの道は寂しく険しいです。夜は走行を避けるべきです。でもこの町に行く価値はあります。旧道を走っていくと、かつてゴールドラッシュの頃掘られた金を探すための無数の穴が崖に開いているのです。今でもボロボロのリーバイスのジーンズを履いて髭を生やしたアメリカ人が穴から出てきそうです。なんだか西部劇の時代に迷い込んだような錯覚になりました。
しばらく峠道を進むと、ポツンとオートマンという街が存在します。この街、これまた時代に取り残されたような西部劇風の街なのです。数百メートルのメインストリートには、西部劇で見たことのあるSALOONやホテルが建っています。観光客向けなのか絞首刑台もあります。まるでよそ者の私が、西部開拓時代の町に足を踏み入れる感じです。
驚いたのは、こんな古い町に人が住んでいることです。私は車を止め、クラーク・ゲーブルが新婚旅行の時に泊まったホテルを見学しました。そして近くのSALOONへ。そこにはテンガロン・ハットを被った地元の老人が長いカウンターで酒を飲んでいました。もはや西部劇のようです。あるいはドラマ「ウエストワールド」の世界。私は、ちょっと緊張しながら飲みものをオーダーしました。すると、カウンターの上をショットグラスが自分めがけてやってきました。ひとりの老人が、ごちそうすると言い出したのです。「Welcome to Oatman !」と店の人が乾杯します。緊張が解けたというか、映画の1シーンのようで驚きました。その後は、1時間以上彼ら地元の人々と談笑して分かれました。

オートマンは、時間の流れから取り残された街。そこには、まるで亡霊のような住人が暮らしていて、来る人を歓迎してくれました。

オートマンを出ると、見たことのないような形の山が見えてきます。その山を目指して走ると、尖った鉛筆のような山の裾野を迂回します。この辺りからは絶景ポイントの連続です。峠道を走っていくと、驚くような光景が続きます。

コロラド川を渡る旧ルート66の橋。今は通れません。

<Needles>
旧ルート66は、アリゾナ州とカリフォルニア州の州境を流れるコロラド川を渡ります。しかし川の手前で行き止まりとなります。旧ルート66は、かつてはコロラド川に橋が架かっていましたが、今はその橋は工場のパイプラインになっています。我々一般車は、州間高速40号線に乗り川を越えることになります。川を渡るとニードルズという街が見えてきます。ここはアリゾナとカリフォルニアにまたがる街です。
ニードルズは、グランドキャニオンやフーバーダムを通ったコロラド川の下流に開けた街です。水の力は強くこの街の周り一帯は砂漠なのに、川沿いにだけ木々が沢山茂っています。街自体はこの近辺では結構大きいですが、なんだか寂しいところでした。街の産業は、おそらくケミカル工場があったので、工場で成り立っていると思いますが、他にはなにもなくちょっと立ち寄りにくい感じでした。

ニードルズを過ぎると、ここから先は広大なMojave砂漠です。延々と砂漠を走るので、ニードルズで給油や水を買うなど準備をしてください。私はMojave砂漠を何度も通過していますが、途中のガソリンスタンドが閉まっていたり、開いていてもガソリンが売り切れていてヒヤヒヤしたことがあります。ルート66全体を通してガソリンはガスタンクが半分になったら給油するようにと言われますが、ニードルズでは、必ず満タン、そして水を多めに購入しておきましょう。

次回は、いよいよルート66最後の州、カリフォルニアです。ただ、ここから終着地のサンタモニカまでは遥かな道のりとなります。

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