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【ロック名盤100】#11 Abbey Road - The Beatles

 今回紹介するのは、ビートルズが1969年9月にリリースした「Abbey Road」だ。誰もが一度は見たことがあるのではないか、このジャケット。なんなら、音楽アルバムで最も有名なジャケットかもしれない。今でも、この横断歩道を渡るためだけにアビイ・ロードに向かう人は数え知れない。
 ビートルズの事実上のラストアルバムだ(正確には違うのだが、その話についてはややこしいので割愛)。69年1月にビートルズが着手した有名なプロジェクト「ゲット・バック・セッション」は頓挫し、再び集まった4人は口では言わずとも「これが最後のアルバムになる」と悟りながらの制作になった。詰まるところ、本作がビートルズの集大成である。
 本作は「このアルバムは完成度はすごいけど、他に比べると革新性においては欠ける」と評されがちな印象があるが、モーグ・シンセサイザーの導入など見逃せないポイントもある。序盤から中盤にかけて名曲が並び、終盤からは小品を組み合わせたメドレーで畳み掛けるという構成だ。

1 Come Together
2 Something
3 Maxwell’s Silver Hammer
4 Oh! Darling
5 Octopus’s Garden
6 I Want You (She’s So Heavy)
7 Here Comes The Sun
8 Because
9 You Never Give Me Your Money
10 Sun King
11 Mean Mr. Mustard
12 Polythene Pam
13 She Came In Through The Bathroom
    Window
14 Golden Slumbers
15 Carry That Weight
16 The End
17 Her Majesty

 出だしのジョン・レノンの「カム・トゥゲザー」のカッコよさに痺れる。ジョージ・ハリスンの最高傑作「サムシング」と「ヒア・カムズ・ザ・サン」では彼のレノン=マッカートニーに引けを取らないソングライティングの才能を堪能できる。ポールの真っ直ぐな恋の叫び「オー・ダーリン」とジョンの歪んだ愛情の叫び「アイ・ウォント・ユー」もすごい。リンゴ・スターも「オクトパス・ガーデン」を提供している。「ビコーズ」の三声のハーモニーは息を呑むほど美しい。
 そして、ここから圧巻のメドレーが始まる。壮大なる「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」が終わり、「サン・キング」から「ミーン・ミスター・マスタード」、「ポリシーン・パン」から「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウインドウ」まであっという間。そして、アルバムのみならずビートルズのキャリアの終わりに差し掛かる。ポールの感動的な「ゴールデン・スランバーズ」さらには「キャリー・ザット・ウェイト」。そしてリンゴが最後の力を振り絞る———ビートルズ・キャリアでの彼の唯一のドラムソロ———「ジ・エンド」だ。そこからバトンを受け取ったかのように3人の最高のギターソロが猛烈なバトルを繰り広げる。最後にはポール・マッカートニーの哲学的な詞「愛は与えるだけ返ってくる」という一節でメドレーは幕を閉じる。
 いやー、すごいアルバムだったなぁと余韻に浸っているリスナー。そこに突然「ジャーン!」。やられた。ポールが小品「ハー・マジェスティ」をアコギで爪弾く場面が本当の最後だったとは、我々リスナーは最後まであのイタズラ好きの4人に一杯食わされたというわけだ。
 このシリーズでは6回もビートルズの作品を取り上げたけど、最後までビートルズ節は満載だったようだ。本作は4人揃ったビートルズの最後の輝きをパッケージしたといっていい。何年先までも残るアルバムだと思う。

↓「サムシング」

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