羽子板の魂・下

足皮すすむ

※今作は下巻です。上巻をまだお読みになっていない愚者は先に読んでからこちらをお読みになってくださいまし。
この下巻を先に読んでも話がわかるような文体で書き上げた私もさすがではありますが、やはり上巻のエモさったらないので上巻を読む事をとても推奨しております。



『羽子板の魂・下』

ズニョズニョなんとか地区大会を優勝したチー油学園高等学校・通称チー高の羽子板部は、突如として校舎上空に飛来した伝書鳩さんが、そのかわいいクチバシにちょこんと咥えてたおてがみをよみました。
その内容は無礼にも、ぜひ全国大会に出てくださいというありがたい御招待の内容であった。
そしてその招待状に招かれるがまま、無様な6人のレギュラー陣と顧問の生先生生(ナマサキイクオ)先生、そして大学に居場所がないせいでいまだに出身高校のOBつら下げて来校するじゃかましき先輩の皆で頭狂都にある国立〆〆(シメシメ)競技場にやってきた。
〆〆競技場の中に入ると、すでに多くの観客と出場校の面々がいた。
チー高生の皆も指定された席に座って、大会主催の挨拶を待ったーーー。
「これより第数回全国羽子板部大会を開催します!大会主催のこの老人からお話がありますのでご清聴ください。イヤホンも外してね。」
「…敗北すら思い出…。…土は持ち帰るな…。…以上…。」
「ありがたいお言葉でしたね。では第一試合が始まるまでしばらくお待ちくださいまし。」
顧問の生先生生先生が部員の皆を激励する。
‎「ستكون بطولة ممتعة للغاية. دعونا جميعا نبذل قصارى جهدنا ونفوز. موت.」
「「「はいわかりました!!!」」」
やがてトーナメント表が発表され、各校の第一試合がはじまる。

ここでチー高羽子板部員の紹介だ。筆者もアドリブで書き綴ってるだけだから、この度上巻を見直しながらまとめたぞ!
部長の石黒もむ男。最強の羽子板スキルを手に入れた代償として、年中唇が極度に乾燥する呪いにかかっている。
副部長の今シワ男。入部からこんにちまで、ただの一度も羽子板に羽を当てた事がないへたっぴ。試合に出た時点で負け確。
モウプツ臭男。不快なシャウトを使いこなして戦うアホ。
五味苦味。ゴミグミと読む。名前以外割とまとも。
ムチムチしげみち。お色直しをする事で失点を誤魔化す卑怯者。こんな育ち方してはだめだ。
ポッサムコッツ。トーク術に長けており、相手を涙ぐませる事で視界を奪う。
スッペエちから。初代部長であり卒業生。大学ではいじめられているらしい。知らんがな。
そして期待の新人足皮すすむ。何も語ることはないご存知オレっち。

『これよりCブロック第一試合、チー油学園高等学校 対 ケツメド学院大学附属高校の試合を開始します。』
\ケーツーメド!!ケーツーメド!!ケーツーメド!!/
ケツ学大は応援部もかけつけており、もうヤバい色々アレだった。

第一試合。
チー高・ポッサムコッツ vs ケツ学大・ゴムニョムいさお。
『ハッケヨーイドン!!』
ポッサムコッツは早速、得意技の話術を披露した。
「ド先週まで残っていたリボ残高を先ほどようやく返済し切りましてね、これで祖母にうどんを作ってあげられます。」
しかし相手のゴムニョムは表情ひとつ変えない。
ポッサムコッツはさらに泣ける話をぶちかました。
「ドさっき道端にいた虫を撫でてあげたら喜んでましたよ。人の温もりは久しぶりだってね。」
しかしこれもまたダメだった。ゴムニョムは無表情のまま羽を打ち返してくる。
「ドいったいなぜ…」
「オデに感動話は効かねえぜ…なぜならオデはとにかく冷徹だからな。」
「ドな…なんだと……。…それならとっておきを…!」
「なんだって話してみやがれ。」
「ド新しい土地の路線が理解不能な若者に、切符の買い方を教えてあげました!」
「だからなんだってんだ。」
「ド友情を優先して、片思いを諦めました!」
「ケッくだらねえ。」
「ド横断し損ねた老婆を担ぎました!」
「そうかい。」
「ド落ちていたアレをなんとかしました!」
「あっそ。」
こうしてポッサムコッツの涙を誘う戦法はいっさい効かず、ついにあと1点で負ける所まできてしまった…。
「どうしたポッさんよ。オデはまだ泣いちゃいねえぜ?なんならこの秋のカラっとした気候のせいでドライアイにすらなりそうだ。早く泣かせてほしいもんだねえ。」
「ドくっ…どうしたらいい…もう話しの種は尽きた…おしまいか?終わっちまうのかよ…終わっちまったら第二試合に託すしかなくなっちまう…それでもまあいいけど…下巻の初っ端から負けちゃなんかメンツが立たねえ…ちくしょうめ…。」
その瞬間だった。ゴムニョムの目から純水のような清らかなしかし清らかな液体が飛び出た。
「お前さん、なんて読者想いなんだ…お前さん…。」
このゴムニョム選手はトコトン現実主義だったのだ。人から聞いた話では全く感動しないが、自分が実際に目にし経験した事柄にはめっぽう弱く、すぐ泣く。
しかもヒトとは思えないくらいの勢いで涙を放出し陽射しを浴びて虹を形成しており、その美しさにも心奪われさらに泣いていた。
「オデ、もうこれじゃあ試合続行できねえ…審判、棄権します。」
『かくかくしかじかポッさんの勝ちー!』
\ナーーーーーーーーーー!!!/
なんとか下巻の初っ端試合に勝利したポッさんは、勝利の喜びと安堵から、彼もまた涙ぐんでいた。
〆〆競技場の清掃員は水浸しとなったコートを清掃し、いざ第二試合へ。

第二試合。
チー高・ムチムチしげみち vs ケツ学大・ズゥブブみきひさよしみち
『ハッケヨーイドン!』
ズゥブブはびっくりするくらい美肌だ。それに白すぎる。ぽっちゃり不細工なのでモデルではないが、肌質だけで言えばまさにそれだ。そんなズゥブブの強みは、なんと墨汁を塗ってもそのあまりに白すぎる肌のせいで塗られているのか分かりにくい、いやむしろわからないという点だ。
しげみちが点を獲得してズゥブブの顔に墨汁を塗っても、ズゥブブの顔はまだ真っ白だと言えるくらい白く、いくら塗り重ねてもその顔面は純白そのものだった。
いっぽうムチムチは失点が重なるとトイレに行くと言い上手いことお色直しをして戻ってくる。
つまりこの試合、先にメンタルがやられちまった方が負けるのだ。
しかしいくら経っても全く試合が終わる気配はない。
パチン…パチン…パチン…パチン…パチン…そんな音が鳴っては止み鳴っては止み、40時間が経過した頃。
「か、かゆい…」
なんとズゥブブの皮膚が墨汁によって荒れ始め、痒みを帯び始めたのだ。
いくら純白の肌とはいえそれを叶えているのは繊細できめ細かい細胞。つまり墨汁のような不純物が付着するとそれはやがて荒れてしまうのだ。
いっぽうムチムチが肌に重ねているのはファンデーション。仮にも肌に乗せるために開発された物品だ。これを肌に重ねて痒くなるかといえば、墨汁ほどではない。
…しかしさすがは全国大会だ。ズゥブブも諦めが悪かった。
「ムヒ…ムヒ!そうムヒだ!ムヒを塗れば痒みは抑えられる!監督、ムヒを!ムヒをオレにください!」
ケツ学大羽子板部顧問が手渡したムヒを塗り込むズゥブブ。そのクリーム状の薬品の白さがさらにズゥブブにホワイトニングを施した。
「なんて卑怯な…」
ムチムチの顔面ももう墨汁とファンデーションの層で厚みを増しており、それは上瞼から視界に入り込み試合に悪影響を及ぼし始めるほどであった。
「へへへっムチムチさんよ、この試合どっちが勝つかなあ?」
「言うまでもないオレさ。早く諦めな。結果は変わらねえぜ。」
「言ってやがれお化粧野郎。」
「くたばれ色味のねぇつまらん野郎が。」
「紅白の白ですぅー。」
「口じゃなく羽子板を動かせよ縁起よしお君。」
長引く試合のストレスから口論も過激化しており、また目の下のクマがつま先まで到達した観客もみなイライラし始めていた。
ある者は貧乏ゆすりをし、ある者は舌打ちをし、ある者は隣の人の膝が当たると因縁をつけ、ある者は…
とにかく観客は皆、ストレスが吹っ飛ぶ爽快な何かを求めていた。なので筆者である私がもうムチムチを白黒はっきりくっきりスパッと勝たせて観客達のご機嫌を取ろうと思う。
『かくかくしかじかチー高ムチムチの勝ちー!』
\ナーーーーーーーーーーーース/
「この人でなしーーー!!」
ズゥブブが何か言ってるけどみんなで無視しよう!
3試合予定だったが先に2勝したので、vsケツ学大戦はチー高の勝利で閉幕した。
そんなこんなでだいぶ割愛するが、かくかくしかじかついに決勝戦だ。相当割愛したが、足皮のやる気を鑑みれば、まあそんなもんだ。

決勝戦はチー油学園高等学校 vs 握屁高等学園。全国大会決勝戦の相手握屁高等学園は数多のプロ選手を輩出してきた超強豪校である。
顧問の生先生生先生も緊張のあまり少し震えた声でこうおっしゃった。
‎「الآن حان النهائيات. إذا فزنا، سنصبح أفضل نادي هاغويتا في اليابان. هيا نفعل ما بوسعنا」
「「「わかりました先生!」」」

第一試合。
チー高・五味苦味 vs 握高・小野寺ヂョー
第一試合はゴミ野郎と、握高はオノヂョーの登場だ。オノヂョーは卒業後にプロ入りが確定している実力者だ。そのうえエリート。DQNの血筋を受け継ぎし男五味苦味とは正反対だ。果たしてこの試合どうなるか…
「ゴミっちよぉ、久しぶりだな」
「へへっ…ヂの字じゃねえか。まさかこんな所で再開するたぁな。」
なんとこの2人は中学時代(私立胸肉パサパサ中学校)の同級生でもあった。
「中学時代に確立したこの必殺技をくらえ!メチルアルコールスープ!!」
ヂの字は持っている必殺技の数が尋常でなく、その数は1000を超えるとまで言われている。
「出やがったな、サウザンド・サタニック・オーバーキルつまりTSOと書いて読み方が"ツォ"!!」
「そうさ、オレのツォはその名の通り1000を超える技がある。だがな…」
「ん?」
「だがそのどれを使うべきか吟味しているうちに羽がフォリーンダウンしてしまって失点してしまうんだ。…何はともあれサーブだ。サーブは…そうだなうーんと、あれがいいか?いや…」
そんな調子で一発目を打つのに3時間45分かかり、グミが打ち返した羽をも打ち返す前に、ツォの中からどの技を繰り出そうか悩んでしまい、悩んでいる間に失点してしまうのだ。
チー高のシワ男くらい無能なオノヂョーは当然のように負けました。
「トホホ」

第二試合。
チー校・今シワ男vs 握高・プロティンごむお
『ハッケヨーイドン!』
試合開始と共にチー高羽子板部員たちがざわつく。
(お、おい…今先輩じゃあ勝てないぜ…)
(ああ、あの先輩じゃ無理だ。なんせ羽子板に羽を当てた事がただの一度もないからな。)
(そんなクソを大事な全国大会決勝戦に出すなんて、何を考えているんだ石黒部長は…)
(何も考えてなかったプミヂョチ。満遍なくみんなが出られるようにしか考えてなかったゾギォーモマ"ム)
(あんたバカだろ)
(ギッツェイピ)
皆の予想通り、そして上巻での試合と全く同じ流れ。今シワ男が羽を羽子板に当てられないという失点理由のみで第二試合は負けてしまった。
『そんなわけでプロティンごむおの勝ちー!』
\ナーーーーーーーーーーーーーーース!!!/
「試合の描写くらいしてくれよ!今年はオレにとって最後の全国大会だったんだぞ!」
なんか喚いているが、毎回負けるヤツに発言権はない。控え席に戻って皆からの冷たい視線に耐えててくれ。

最終試合。
チー高・足皮すすむ vs 握高・石黒もむ男
「「「?!?!?!」」」
なんと最後の試合は我が校の部長・石黒だ。いったいどういう事だろうか。
「い、石黒部長…?」
「フハハハヅヅォィヂ!!オレはなあ…チー高生でありながら握高生でもあるのさギンリャリ。そしてその羽子板部どちらとも部長を務めているホーヂァヂィ。どっちの学校が優勝しても、全国大会優勝校の部長という肩書が手に入るヲ"ンモォ。だからこそオレは日本全国の羽子板部強豪校を全てリサーチし、全国大会に出そうな学校全てに転校しておいたのさゾボォゾボォゾボォ。まずそもそも1年の足皮なんかに負けるわけねえだろゼンゴボミャィイィイイ?とはいえお前が勝ってもオレの所属校が優勝するんだがなズゲェアヲッョロョ!!!」
これにはチー高いちの卑怯者ムチムチしげみち君もドン引きである。
「"自分が部長を務める部活が全国大会を優勝"という肩書きのためにあそこまで醜くなれるとは…卑怯だ…卑怯者!見損なったぞ石黒!!」
生先生生先生も悲しそうな顔をしながらポツリと呟く。
‎「لقد تعرضت للخيانة. حزين.」
「「「ほんとそうですよね先生!!!」」」
OBのスッペエも拳を固く握り怒りを露わにしている。
「クソぉ石黒お前…その手があったか…」
絶望の中決勝戦最終試合が始まる。
『ハッケヨーイドン!』
皆の怒りを感じとった足皮少年は、渾身のぜいにくを放つ。
々々々々々々々チ々々々!!!
その羽は炎を、雷を、豪風をまとったフェニックスのようになり、石黒の右膝に直撃する。
「ブヂョーーーーーーーー!!!!!!」
石黒の右膝関節を貫通しぽっかりと空いた穴からは骨の断面と違和感を感じるほど桃色をした肉がのぞいていた。
やがてじんわりと血が滲んだかと思うと、それはとめどなくコートの床に流れ出る。
「い、いでぇぇぇェェゴギィツンッマォモァ」
々々〒〒〒〒〒〒々々々!!
次に放たれた羽は、あまりの速さに空中で分解し細かい粒となり、それらは速度を保ったまま石黒の全身に突き刺さった。まるでショットガンの弾のように。
「ぐっあああレヲ°チーャッャ!!!」
石黒の白いTシャツには所々穴があき、そこから鮮血が滴る。
「い、痛ぇ…足皮お前、オレが教えたぜいにくを悪用しやがってボーヴォー」
審判が言う。
『キミ、今は試合中ですよ。血が出たくらいでなんですか。骨が砕けたくらいなんですか。肉を食べなさい肉を。肉の栄養は血や骨を作りますから、あなたが試合中に負った傷や穴もやがて修復されます。』
「だとよ石黒部長。ほら早く立ってくれよ。次の羽がまだ残ってるぜ。」
足皮少年は万能感を得、とにかく死に至らないくらいの激痛を与える羽を次々と放った。
〒々〒々!!
「ぐわぁぁぁィョンボマム!!!」
々ッ々°!!
「うわーゼゲチホョンホョン!!!」
々〜々wwwww
「かゆ〜いヲェヲェヲェヲェ!!!」
『9vs0!チー高足皮君マッチポイント!』
こうして石黒は両手足、両耳の聴力、下顎、肝臓一つ、片眼球を失い、血液や肉片が散らばったコートの真ん中で身動き取れずにただ最後の一発を待つだけとなってしまった。
下顎を失った石黒はもはや乾燥する唇も半分なく、また潤すための舌もない(ネットの近くまで飛んでっちゃった)。石黒の上唇はどんどんと乾燥していき、薄皮が剥がれては落ち剥がれては落ちを繰り返すだけの生物となってしまった。
「無様だなガラクタ野郎。」
足皮少年は中指を立てながら石黒の左胸に狙いを定めると最後の羽を放った。
々〜w
そしてそれは石黒の左胸を貫き、1500億デシリットルもの鮮血を撒き散らしながら倒れ込んだーーー。

ーーー

「プヴチョツォ………」
彼が目を覚ますと辺りは白い羽が舞い踊っていた。しかしここは天国ではない。無論地獄でもない。
少しずつ耳が聞こえてききて、それは歓声喝采を捉えた。
ハッと体を起こすと目の前には足皮少年の姿が。
「石黒部長。もうこんな事やめてください。」
「足皮プチョ…」
「あなたが教えてくれたぜいにくには、死者を生き返らせる力もありますよね。試合は僕の勝ちです。でも石黒部長、あなたがいなければ僕は勝てなかった。」
「足皮プチョ…」
「優勝はチー油学園高等学校です。あなたの悪どい転校作戦のせいで、あなたの所属する学校の優勝でもある…。けどあなたは間違いなく負けたんです。」
「足皮プチョ…」
そこにOBのスッペエも駆け寄ってくる。
「石黒、見損なったぜ。けど見てみろこの大歓声。今までこんなに優勝を讃えられた事あったか?この歓声はな、優勝したチー高に贈られているんだぜ。つまりお前の所属校の優勝を皆が祝ってくれているんだ。」
「スッペエ先輩プチョ…」
「それにしてもすごい血じゃねえか、ひとまず控え室に行くぞ。」
スッペエは石黒の耳たぶをつまむと、そのまま引っ張って控え室へと消えていった。

『優勝は、チー油学園高等学校!!!』

表彰台の頂上に立つ足皮少年。
観客も他校生もそいつらの保護者も、羽子板連盟会長も〆〆競技場の管理をしている職員たちも、今大会の為に弁当(バランだけが入ったヘルシーベジタブル弁当)を作ってくれた弁当屋のおばちゃんも、皆が拍手大喝采だ。
そして舞い踊る羽根かと思ったそれはさっきの試合で石黒の唇から鬼のように剥がれ落ちた唇の薄皮であり、石黒の鮮血が付着し見事な紅白を作り出していた。そしてそれらは秋の切ない風に吹かれ延々と舞っていたーーー。


ここは控え室。
「石黒、よくやった。シナリオ通りチー高を優勝に導いてくれたな。」
「かなり手間がかかりましたけどねェンメヅォ」
「足皮のぜいにくは痛かっただろう。」
「ええ、相当痛みましたよスッペエさんィチョ。」
「約束通りお前にかけられた呪いを取り除いてやる。」
「それにしてもスッペエさんも人が悪いやボビョーン」
「なぜ?」
「チー高を優勝させるためにオレに120校もの高校に転校させ、挙句の果てに足皮のぜいにく拷問を受けさせるだなんてボミョゲッツィイゲッツィイホズェャヲーンマリョ。」
「…さ、もうすぐ呪いを空気中に逃すぞ。」
「そうはさせるかよブゾェ!!!」
「なにっ!」
石黒は自分の口から出る黒い煙を、激しいキスをする形でスッペエに吸い込ませた。
「!?!?」
「スッペエさんよ、悪いがこの恨みは返させてもらうぜ。一生唇の乾燥に苦しみやがれ。じゃオレは打ち上げがあるから行くぜ。あばよ。」
「石黒お前ブヂィ…呪い移しだとビッヒョロン…唇を潤しながら喋るもんだから語尾がこんなふうになっちまうじゃねえかッヲョィーゲヅォ」
こうしてスッペエちからは極呪・唇乾にかかってしまったが、ここで諦めるスッペエではない。
彼は彼のやり方で復讐を果たすべく、第二の人生を歩む事になるのだ。だがしかしそれはまた別のお話ーーー。

優勝したチー油学園高等学校は羽子板雑誌「ポイズンめしべ」に掲載され、学校もテレビやラジオで特集を組まれるほどだ。
そしてその中心にいるのはやはり足皮少年。「チー高を優勝に導いた新入生」の肩書きで一躍有名になった。
しかしその裏で察しのいい連中は違和感を感じていた。
何かおかしい。何かが変だ。その違和感というのは、スッペエの陰謀ではなくもっと根本的な、本質的な部分の違和感だ。
読者の皆様は気付いただろうか。もう一度、いや二度三度この物語を読み返して、私が伝えたかった本当の事を見つけて欲しい。
それを見つけた時、この物語の意図が丸ごと変化するだろう。検討を祈っちゃう。



足皮すすむ・2024年

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